白川さんはS川さん
勢いだけの投稿です。
店に入るとカーテンを引く音がしたので音源に近付いてみる。
やっぱり白川さんがいた。
「こんにちは。今日も織田さんが持ってきた漫画楽しみです。」
にこりと笑い、ではこちらにと奥に消えた。
私も後に続く。
さっきのカーテンの奥、確か新品の本を置いてるとか言っていたような。
何故カーテンを引いたのか気になった。
「…気になりますか?」
微妙に間が有ったので何か禁忌に触れかけたと思い手を引っ込める事にした。
だが白川さんは言った。
「そうですね…。ちょっと織田さんには刺激が強いかも知れませんよ?」
白川さんが屈んで耳に口を近付けてきた。
「えっちな本、ですよ。」
「なっ!」
くすくすと笑う白川さん。
「冗談、です。」
悪戯が成功して楽しそうにしていた。
と言うか冗談言うんだ…。
そりゃ僕も冗談の1つ位言いますよ、と白川さん。
心読まれた。
2人でのんびり本を…。
読めなかった。
白川さんは興奮した面持ちでバトル物の漫画を読み進める。
私はと言うと訳の分からない、言葉の羅列を眺めているのみ。
ごめんなさい、見栄張りました。物凄く文学だという事しかわかりません。
泣く泣くこの高尚な文章を眺めた。
間。
目でヘルプ要請を送り続けていたら白川さんが途中で堪えながら笑い始めた。
「ふふっ、ごめんなさい。わざと僕も良く分からない文学の本をチョイスしました。」
白川さん…。
「酷いですよ!」
白川さんは隠れSかもしれない。
あんなにヘルプしたのに。
ともあれちゃんと私向けの本も選んでくれていたようで直ぐに取り替えてくれた。
手渡された本のタイトルは「見栄張り少女と天才少年」と言うタイトルだった。
いじめいくない。
いじめかっこ悪い。
白川さんはと言うとニコニコしながら私を見ていた。
帰り際、久しぶりのお客さんの来店があった。
何か話している様なので離れた位置の棚の本を眺めることに。
「……。…。はい分かりました。」
お客さんとの話しは終わったらしい。
白川さんの所に戻ると同時に出入り口が閉まる音がした。
白川さんは綺麗な1冊の綺麗な本を両手でしっかり握っている。
新品の本なのかビニールの包装もされている。
「ちょっと待ってて貰えますか? この本しまって来ます。」
そう言ってカーテンの向こう側に行った白川さん。
暫くして帰ってきて早速私のお見送り。
それにしてもさっきの本がとても気になる。
タイトルは見たはずなのに分からなかった。
家に帰るとお義母さんが出迎えてくれた。
お母さんは私が11歳の時に病死。
その2年後お父さんは再婚。
その再婚相手が今のお義母さん。
実の娘じゃないのに良くしてくれてとても感謝している。
昔、実の娘じゃないのに優しくしてくれてありがとうございます。と言ったら大激怒され、貴女は血が繋がっていなくとも私の可愛い娘です。と言われた。
もう、うわんうわん泣いた。
お義母さんも泣いた。
後から帰ってきたお父さんはオロオロしてた。
「ちゃんと手洗いうがいしなさいね?」
「わかってるって。子供じゃないんだから。」
手洗いうがいをしっかりやって、あの本の続きを読もう。
あと5分の1も無い。
2日位で読み終わるかな?
数ページ読んだところでご飯に呼ばれたので栞を挟んで本を置いた。




