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イクスチェンジ!

この間来た本屋さんの前に立つ。

なんでこんな裏路地みたいな所にあるんだろう?

何か秘密があるのか、秘密しか無いのか。

自分しか知らない秘密の鍵を手に入れた様な気がして両手で小さくガッツポーズをした。

はたからみたら変に見られたかもしれない。


相変わらず埃っぽい店内。

花粉症の人は入れないと思う。


本をまた眺めていくと奥から人が近付いてくる。

あの青年かと思っていたが30歳位にみえる男の人だった。

店長かと思ったがそのまま店から出ていってしまった。

あの青年は今日もいるのかな。


居た。

無駄だろうにはたきで本の手入れをしている。

(はた)いたそばからまた埃が積もっていた。


「いらっしゃいませ。」


にこりと笑ってからまた叩く作業に戻る青年。

…一生懸命だったので指摘しないで横を通り過ぎる。

すると青年に話しかけられた。


「あ、そういえばこの間ご購入された本どうでしたか? 僕、あの本の上巻特に好きなんですよ。」


まだ半分も読んでいないがかなり面白い。

普段本を読まない私が言うんだから面白い、と思う。


「全部はまだ読んで無いんですけど面白いです。次の展開が常に気になってわくわくします。」


青年はそれを聞くと気に入って戴けてよかったですと言って今度は通路に積まれている本を開いた本棚の隙間に入れはじめた。


「そういえばさっき人が居ましたけど店長とかですか?」


「いえ、その人はお客様です。店長は僕ですよ。」


自分と余り変わらない歳に見える青年が店長とは驚きだった。

「お客様とこんなに話したの初めてかも知れません。余りお客様は来られませんし。」


さっきの男の人がお客だと聞いてちょっとがっかりしたり。


「レジの所まで向かって右に折れて少し奥ばったの所に机と椅子がありますから立ち読みしづらかったらご利用ください。」


本屋だったり古本屋だったり図書館だったり忙しいお店だ。














本読まない私が唯一昔読んでいた本を見つけて懐かしく思えて読み返す。

内容は主人公が異世界に召喚されて…といったどっかでありそうな話。

気付くと対面の椅子に座って文庫本を読む青年がいた。

本の整理は終わったんだろうか。


「良いんですか? お客さんとか来たら…。」


「大丈夫ですよこの時間帯に人来ませんから。」


そういえばここ本しかない。

いや、本しか無いのは当たり前なんだけど。

じゃなくて漫画は無いんだろうか。

訊いてみた。


「あぁ、こんな所に漫画を売りにくる人居ませんし。 僕自身漫画読まないので新品の棚にもおいてないんです。」


これは驚きだ。

本を読まないならあるだろうけど漫画を読まないとは。

青年に漫画を読まない事が如何に人生において損失となり得るか説く。

すると青年に本を読まない事が如何に人生において損失となり得るか説かれた。

お互い様だった。


「じゃあ、私が面白いと思う漫画持って来ますから、えぇっと…名前なんですか?」


「白川です。」


「ありがとうございます。だから、白川さんも私にオススメの本を教えてくれませんか?」


そう提案した。

お互いに読まないのならお互い教え合えば良いんだ。

白川さんはこの提案に賛成してくれた。

文庫本などばかり読んでそれ以外絶対読まないとか頭かちかちの人とかじゃなくて安心良かったと思う。


今日の所は帰ることにして白川さんと別れた。

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