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Guild   作者: 真津 忠村
後継者
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第4話 「後継者」Ⅲ

さてさて、とりあえず色々やってみたが

「くかー」

マーグリスは全くに起きない

水かけてもつねっても殴っても全く起きない

これほど死んだように寝ている人を見るのも久しぶりだ

いきなり飢えた狼の群れに放り込んだのがいけなかったかな?

俺はこんな感じで育てられたのだが、どこかの悪魔に

4匹倒せただけでもいいとするか、素手だもんな

このままほったらかしでいいかな

こちらもやらなきゃいけないことがいっぱいで

まあ、ゆっくり寝なさい。起きたら即はじめるけど

今度は熊あたりトライして見るか

俺は身支度をして小屋を出た




第4話 「後継者」Ⅲ





「うう・・・・やめろ・・・もう・・動けな・・・・ッハ!」

僕は飛び起きた

寝汗でびっしょりだ

「くそ・・・夢でも襲われた・・」

昨日真田が捕まえたらしい30頭ぐらいの狼(昨日から水しか飲んでいない)の群れの中に僕を放り投げて、一言

『生き残ってください』

そう親指立てながら言い放った

あれはマジ死ぬと思った。お花畑の向こうに死んだ母の姿が見えた

本当にこういうの見えるもんなんだね。

必死に抵抗したおかげで3時間ぐらい死闘を繰り広げてやっと狼の群れが諦めてくれた

あの狼の目はマジやばかった。だけどその様子をみている真田さんの目も違う意味でやばいぐらいムカついた

「そう言えば真田さんはどこへ行ったんだろ?」

周りを見渡すと真田さんの姿がなく、一枚メモのようなものがあった

どうやら真田さんが書いたもののようだ


, 拝啓マーグリス様


, お体の調子はいかがでしょうか


「あんたのせいでボロボロですよ」

身体には包帯や絆創膏がいくつもあった


, どうせあなたのことだから私が変なことを申し上げると


, 『 ソンナンジャネーヨ!コノロリコン!」


, とか汚い言葉で罵倒をするかと思います



「それこそ、そんなんじゃねーよ」



, 一つ言わせて、いや書かせてください


, 俺は断じてロリコンじゃない


, ただの年下好きだ



「びっくりするぐらいどうでもいいよ」

しかもあながち間違っていないじゃないか



, それはさておき、そんなあなただから余計なことは書かないで本題に入りましょう



「もう、このくだりが余計だよ」


, 私真田はこれからの準備のために少し小屋を空けます


, マーグリス様はひどくお疲れのご様子なので、夕方までお休みください


, 一応夕方位に帰れると思いますし、修行は私が帰り次第再開します


, 念のため城には戻らないで下さい


、 それではしばらくおやすみなさい


, 真田 シンより


, PS 今夜のご飯は熊の手の煮付けの予定です。楽しみにしてます。






「・・・・・・・・・・・」

何これ?

手紙形式にする必要あった?

最初拝啓って書いてあるのに、追記じゃなくてPSかよ。ごちゃ混ぜじゃないか

しかも熊の手?え?そんな料理あるの?怖っ!

それに「楽しみにしています」って?僕が作るの?普通に無理だよ

まあ昨日の狼料理(殺した狼を焼いただけ)よりはマシな気がする

あれは何か超えてはならない一線を越えてしまった気がする

真田曰く「東国には犬鍋というものがあって、美味しいそうだ。俺は絶対に食わないけど。だから狼でも食えるだろ」

どうやら真田は犬は好きだが狼はそうでもないみたいだ

だって犬鍋のくだりで少し涙目になってたから

でもとりあえず休憩か。

・・・・・・・・・・・暇だな

いつもなら本見るなり勉強するなりして時間をつぶしているが、ここには何にも無いからな

そんな感じでぼうっとしていると、カーテンが閉めてある窓の方から窓を叩く音が聞こえた

「なんだろ?」

疑問に思いながらカーテンを開けると

「マーグリス様!やっぱりここでしたか!」

山の中なのに砂埃一つつけていないスーツ姿のセーガンがいた

「セーガンさん!なんでここに?」

「パウロ殿にはああ言われましたが、やはり心配だったもので来てしまいました。誠に申し訳ありません。」

「別に大丈夫ですけど・・・・・よくここがわかりましたね」

「この山で泊まれる場所はここしかないと記憶していましたから・・・・・・って大丈夫でございますか?!その傷!」

セーガンさんは包帯や絆創膏をいくつもつけている僕を見て、彼にしては珍しくうろたえた

「大丈夫・・・・だと思う」

これは僕も少し言葉を濁した

走って転んだくらいなら大丈夫だが、真剣に肉食われそうになったからなあ

もうあと10年くらいは狼に会いたくない

「大丈夫・・・ですか・・・・・」

セーガンさんも釈然としない顔で傷を見ている

しょうがない、いくらなんでも体育の授業と称して戦いの訓練をしているなんて考えもしないだろう

「マーグリス様がそういうなら・・きっとそうなんでしょう。だけど無理しているならいつでも私にお伝えください」

「わかりました。ありがとうございます」

昨日みたいな事を今日もやるならすぐにセーガンさんの助けが必要になるかもしれないと思ったが、よく考えて見るとセーガンさんを読んでも解決しそうもないし真田さんの計画が台無しになる可能性があるのでの考えはすぐに撤回した

「そう言えば城のほうはいつも道理ですか?」

いつも道理ホイタッカーが威張っていますか?とも聞きたかった

「それは・・・・・・」

セーガンさんが少しためらいながらも言った言葉は僕を額然とさせた




エベレン国には大臣連合と審議委員会という機関がある

大臣連合はこの国の大臣12名からなり、緊急集会などで集まり審議する機関である

一方審議委員会は前国王が半民主化の第一歩として設立した機関で各大臣はそこに議案を提出し、その議案が憲法に反していなければ、大臣と国王の会議となり、そこを通ればその法案は可決される

そして審議委員会にある議案が提出された

【エベレン国軍発足及び警備隊の解体案】

警備隊は国王直属の機関で主に城の警備、犯罪の摘発、他国に対する防衛を業務にしている(最後のものに関しては建国以来、一度も実施された事はないのだが)

ある日、民主化をするのに武力をもつ集団が国王単独の直属部隊なのはおかしいという話が浮上した

そこで新た国内防衛のための、あくまで国王ではなく国直属軍隊を発足し、警備隊は解体させるという案だった

そして問題は、その指揮権は誰が持つかだ

その議案では国内の犯罪発生及び他国からの侵略時に機能する機関なので、緊急事態時の審議権をもつ大臣連合がもつという事だった



「くそ・・・・」

今回の黒幕は言わずとしれたホイタッカーだ

仮に僕が国王になれる年齢に達したとしてもやつは僕を国王にするつもりなんかないだろう

でもいくら自分の国王の任期を延ばしてもいつかは王座を譲らねばならない

奴は無理やりにでも自分の王座を守ろうとするだろう

その手段が自分の軍事力をもつことだ

こういうことは昔から様々な国で起きているということは歴史の授業でも先生に教えられた

「私も審議委員会に所属している知り合いから聞いたのですが、まさかマーグリス様がいないうちに議案を通そうとするなんて思ってもいませんでした」

「それで・・・・大臣連合の緊急集会はいつ行われるんですか?」

今回の場合だと通常は時期国王を含めた大臣連合による緊急集会により議決を取る

立場上はまだ僕が時期国王だ

「8日後でございます」

「!!なんだって!あまりに急すぎるじゃないか!」

僕が城に帰る頃にはもう終わっている

「おそらくマーグリス様のいない間に決着をつけてしまおうという魂胆でしょう」

時期国王欠席の場合も緊急集会は決議を認められるのだ

「くそ!・・・・・・」

僕は立ち上がり身支度を始めた

「な・・何をしていらっしゃるのですか?」

「決まってるだろ!は置いタッカーに直談判しに行くんだ。」

僕はドアから出ようとする。焦って口調もおかしくなっている気がするがそれどころではない

「落ち着いて下さい!マーグリス様」

セーガンは必死でそれを阻む

「どけ!これを認めたら抵抗することができなくなる!」

僕はセーガンをどけようとしたが、セーガンはテコでも動かない

するとセーガンはカッと目を開き

「今のあなたが行ってどうなさいます!何もできますまい!せいぜい「ああ、そうですか」といわれて追い返されるのが関の山でございます!」

僕はの気持ちはセーガンの一喝によ一気に冷やされた

それからセーガンの方も我に返り、土下座しながら謝った

「申し訳ございませんでした。 私の方が熱くなってしまいまいした。」

セーガンさんも熱くなることがあるんだな

僕の方は一気に頭を冷やされたのでそんなことしか頭に浮かばなかった

セーガンはしばらくその姿勢を続けたあと、静かに立ち上がり

「とりあえず今日のところはゆっくり休んで、明日当たりに考えてみて下さい」

「・・・・・・・・・・なにを」

セーガンは少しため息を吐き、立ち去り際にこう言った

「自分が・・・・何をどうしたいか、で御座います」

そうしてセーガンを外へ出てからいつもどうりゆっくりとした動作でドアを閉めた







よしよし、武器庫の場所も確認したしセキュリティの妨害の準備もできた

問題は『あいつら』だな

なんでこんな国に・・・・・・ん?

俺は帰宅し、小屋に入ろうとしたがあるものが目に留まった

それはドアの地面すれすれに貼ってあったセロハンテープだった

セロハンテープは片方の端が剥がれていた

これは俺がいつもやる出入り確認装置のようなものだ

出かける時にドアに封をするように貼っておき、ドアの開閉つまりは人の出入りがあったかどうかを確かめるものだ

マーグリスは外に出る用事は全くない

よってこれが剥がれている時は侵入者若しくは来客があったということだ

別になくてもいいんんだけど、いざという時に役に立つ

・・・・・・・まあ、赤外線システムとかを支給してくれれば話は早いのだが。あのケチめ

そんなことを思いながらも小屋に入ると一番先に目に入るのは何かうなだれているマーグリスの姿だった

「どうした~?そんなこの世の終わりみたいな顔して」

するとマーグリスはこっちに覇気の無い目を向け

「まあ・・・そんなものですよ・・・」

そうしてマーグリスは淡々と話を始めた




「なるほどね。それで話が繋がった」

「え?」

マーグリスは不可解な顔になる

「実はさっきギルドの情報伝達部から連絡があったのですが、この国に『ラタトスク』という傭兵部隊がこの国に潜伏しているとの情報を得ました」

「らた・・とくす?」

「ラタトクスは世界中の戦争に参加している大きな傭兵部隊です。もちろんギルドも傭兵業務を行いますが、ギルドは『戦争を止める』役割なのに対し、ラタトクスは『戦争を促す』役割なのです。何せあいつらは戦争が無いと食っていけませんから」

「何でそんな奴らがここに?」

「さっきあなたがおっしゃった話によるとホイタッカーは自分の意のままに動かせる軍を作ろうとしているそうじゃないですか。多分その母体を彼らで作ろうとしているのではないでしょうか」

「そんな・・・・」

「そしてもしも仮に大臣の中に自分を裏切るようなものが現れた場合は彼らに処分してもらう、すでにホイタッカーは彼らを買収しいつでも動かせるようにしてあるはずです。現に城の中にラタトクスの一味であると思われるものが出入りしていました」

「どうすれば・・・どうすればとめられるんですか??」

マーグリスは必死な目で真田を見ながら言った

握り締められたズボンがしわくちゃになる

「ちょっと大変になりましたが・・・・大丈夫です。」

「ほ・・本当ですか?」

マーグリスの顔が少しほころぶ

「はい。あなた次第ですけど」

「え?」

「あなたはこの国を変えたいそうですが・・・どう変えたいか、考えてはいると思いますがはっきりしていないんじゃないですか?」

「それは・・・・・」

「だから整理してみてください。いつ聞かれてもいいように。そうじゃないと誰もついてきてくれませんよ」

「・・・・はい」

「それが宿題と・・・・」

「まだ何かあるんですか?」

「まだじゃないですよ。これが俺のたのし・・・・・じゃなくてこれも重要な部分なんですから」

ん?なんか真田さん楽しみって言わなかった?

「な・・・なんですか?」

嫌な予感がする

「いやですね。忘れたんですか?」

そういえば何かを楽しみにしていますって・・・・

「夕飯の調達に行きましょう!」











マーグリス修行日記


修行2日目


セーガンさんが来る。結構心配してくれた。夕飯の材料に熊の手を使うからと熊と戦わされる。爪がものすごく痛かった。結局熊は飽きて逃げるわ、真田さんには「どうしてくれるんだ!」と怒られるわ散々だった。こんなことしている場合じゃないのに


修行3日目


真田さんに拳法というものを教えてもらう。聞くところによると東国の武術らしい、やっと修行らしくなったと思ったら、水汲みに川に行ったら真田さんが「ワニのステーキ楽しみにしているぞ」といいながら僕を川へ突き落とした。そしてそこには何故かやたらとでかいワニがいた。この川にはワニはいないはず。どこから持ってきたんだろう?頭を噛まれそうになったときはとうとう死ぬかと思ったがさすがに真田さんが助けてくれた。


修行4日目


昨日と同じく拳法の授業の後、人体急所の説明を受けた。今日は普通だなと思いながら水汲みに言ったらら猪の群れに襲われた。何故僕はここまで動物に嫌われるのだろう?今回は一匹素手でしとめることに成功したので持ち帰った。熊よりは弱かった。だけどこの生活に慣れた自分が一番怖い。


修行5日目


銃弾をよける訓練だということで一日中エアガンで真田に狙われた。あれ予想以上に痛い。体中小さい痣だらけになった。こちらからも撃ったのだが全然当たらなかった。君には狙撃の素質が無いと言われた。無くても全然かまわないが。


修行6日目


銃弾をよける訓練今日は8割方避けられた。人の防衛反応はすごいと思う。さらに真田と組み手をやった。全然歯が立たなかった。訓練の意味あったのかなあ?







そして7日目・・・・・・・


僕らは乾した猪の肉を焼いたものを朝食にしていた

意外においしい。

「真田さん。このままで大丈夫なんでしょうか?」

修行によってかなり筋肉もついたし色々学べたが、やはり実践で役に立つかどうかはわからない

というより実戦があるのかどうかもわからない

「まあ・・・もしものときの準備だからな・・・」

すると真田は立ち上がり黒いコートを着た

「じゃあ実戦でもするとしますか」

「え?でも・・・」

正直不安だった。本当に僕は戦えるのだろうか

するとそんな僕を見かねて真田はこういった

「大丈夫。君は強いんだ」

ちょっと勇気づけられた気がする

「わかりました。でも誰と?」

こういう場合はやはり同程度の相手じゃないと

「ちょうどこの近くにきているようだから心配ない」

そうして真田はまたあの笑みを浮かべながら言った










「さあ、クソ栗鼠どもを蹴散らしに行きますか!」





to be continued.........


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