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Guild   作者: 真津 忠村
後継者
4/5

第3話 「後継者」Ⅱ

今俺のいる部屋には食い物の匂いが充満している

しかもそれはヒラメとポワロネギのソテーときたものだ

知ってるか?ヒラメとカレイの見分け方は左のほうに目があるのがヒラメで右の方に目があるのがカレイだそうだ

見分ける機会は多分こないからどうでもいいけどな

さあ、どうして俺は現実逃避しているかというと

「・・・・・・・・・・」

ほら見たまえ。あの警戒度100%のあの目を

完全にファーストコンタクトに失敗してしまったのだよ

「だれだ・・・・・」

さてどうしよう




第3話 「後継者」Ⅱ




おかしいな

『食べ物は人間関係の潤滑油』ってどっかの誰かが言ってたのに

だから食べ物の話で親密度深めようと思ったのに

潤滑油どころかどちらかと言えば鉄に塩水だよ

「・・・・・・・・・」

とりあえず自己紹介からだな

「ギルドのものです」

俺はコートの裏に縫い付けてあるギルドのシンボルマークを彼に見せながら言った

ギルドの掟では依頼人と依頼実行人とのファーストコンタクトは実際に会わなければならないということになっている

そして必ずギルドのシンボルマークを見せ、本名を名乗らなければならない

面倒臭いが面倒ごとをさせるのが大好きなうちの師匠兼総隊長が決めたことだから仕方がない

「!!!!」

お!目の色が変わった気がする

真田はマーグリスの警戒度を10%下げる事に成功した!!

パッパララ~

・・・・・なんかゲームみたいにして見たが虚しいな

テレビゲームは苦手だからな・・・仕方が無い

pcゲームならどうにかなるんだが

でも師匠はテレビゲーム派だからな

そのせいであの人にゲームで一回も勝った事がない

まったく・・・・・おっと!また悪い癖が出た

「ギルドAー5ランクの真田シンといいます」

とりあえず仕事の話をしなければ

ここにはあまり長居できない

正面から入らせてくれるわけないからセキュリティシステムいじくってきたからな

長居してたらバレるのも時間の問題だ

「ギルドですか?」

彼は少しずつ口を開いた

「はい、あなたの依頼で来ました」

「本当ですか?証拠を・・・・」

俺は彼の話を止めるように口を塞いだ

これ以上話していたら水掛け論になって無駄だ

「時間がありません。今日は簡単に顔合わせと依頼内容の確認だけです」

「ふぇふぉ~」

何言っているかわからん。当たり前だけど

「今回の依頼は『王座の奪還』よろしいですね?」

マーグリスは2回頷く

「報酬は依頼達成時のあなたの全財産の3分の2・・・・・・と言いたいところですが初回なので3分の1にまけときます」

「ふぉ・・・ふぉうふぉ」

だから何言ってるかわからんって

そろそろ手を離すか

俺はマーグリスの口を解放した

「ぷはっ!何するんですか!」

「しょうがないじゃん。あまり時間はかけられないし」

ちなみになぜ俺の口調が敬語だったりそう出なかったりするかというと、俺は仕事の時だけは必ず敬語を使うようにしているからだ、でも今日はマーグリスに依頼内容の確認をするためだけに来たので敬語は終わり、これからは雑談タイム

「はあ~、でも来てくれてよかったです。でもどうやって?」

「なにが?」

「どうやってホイタッカーから王座を奪い返すんです?」

そう、問題はそこだ

「まだ思案中」

「ええ!あと一ヶ月ですよ!どうするんですか?」

「大丈夫だ。最初にすべきことはわかっている」

「なんですか?」

「まあ明日になったらわかる」

そういって俺はポケットからある機器を取り出した

「とりあえずこれを受け取ってくれ」

それは古いタイプの携帯電話のようなものだった

「なんですか?これ」

マーグリスは半信半疑の顔で受け取る

そりゃこんな怪しいものの代名詞みたいなもの受け取ったらそうなるわな

「ここにくるまでにちょこっとここのセキュリティシステムに細工してな、今ここのセキュリティはいかれてるから、それを元に戻す装置だ」

「ええ!なんてことしてくれてんですか!」

「まあそこらへんの詳しい説明は省くとして、俺はとりあえずばれないうちにここを出るから10分後ぐらいにこの赤いボタンを押してくれ」

「は・・・・・はあ」

「じゃ、よろしく」

俺は窓から壁をつたって出て行った

行きもこうして来たのだが、これが案外見つからないものなのだ

この部屋は6階にあるし、上層を監視する者は防犯カメラしかない

そしてその防犯カメラは先ほども言ったように俺が細工してひたすら正常時の映像を流している

もっと効率のいい侵入方法もあったかもしれないがどちらかと言えば考えるより行動するほうが向いているんでな

まあどうでもいいけど







「え?ちょっと?」

急に現れた謎の夕食批評家こと真田さんはなんと窓から出て行った

こんな光景が見れるのは映画の中だけだと思っていた

「・・・・・・・・・・」

しかし窓のお外を見た時にはもう影すら見えなくなっていた

すると急に外気の冷たさを感じる

真田さんが来てからずっと開けっ放しだったらしく部屋の中も外気の冷たさで満ちている

「ここから入って来たのか・・・・・」

窓には鍵をかけていたつもりだったのだが

でも簡単にセキュリティーを突破する人だ

窓の鍵を開けるのも赤子の腕を捻るよりも簡単だろう

あれ?なんかことわざの使い方間違ってる?

「さむっ」

ぼくは窓をゆっくり閉じた

そう言えばこんな普通にセーガンさん以外の人と話ができたのも久しぶりだな

まさか本当に来てくれるとは思わなかった

藁にも縋る思いで電話したからかな

「もうそろそろかな」

爆破例の怪しい機器を取り出した

「爆発とかしないならいいんだけど」

正直これは危ない気がする、使い道は教えてもらったが、

最近はこのような感が冴え渡っている気もする

ぼくは恐る恐るボタンを押した

ビービー

「うわ!」

突然小さな警告音のような音が鳴り響き、ぼくは驚き機器を落とした

アトジュウビョウデコノソウチハムオンバクハツヲシマス。クリカエシマス・・・・・

ちくしょー!ある意味期待どうりだよ!

僕はどうするかあれこれ考えた結果、タイミングを合わせて窓の外へ投げた

くそ、窓空けとけばよかった

ポスンッ

思った以上に小さい音を出して機器は空中で爆発した

そのあと残骸は砂状になり風に飛ばされた

「なんてものを・・・・・」

僕はベッドに座り込んだ

なんか疲れた、あの人が現れてからまだ30分しか経っていないのがしんじられない

突然眠くなってきたな、こんなに眠いのも久しぶりだ

そんなことを思いながらぼくはベッドの上に倒れこんで

数ヶ月ぶりの深い眠りについた








次の日

ぼくは先生の授業を受けていた

一応ぼくには専門の先生がついていて、経済学、教養学や外国の学校で受けるような教科の授業をうける

ちなみに今は僕の最も忌み嫌う物理の時間だ

先生の言葉が催眠術かなんかに聞こえる

この国にも学校はあるがあまり進歩していない

だから先生は外国からきてもらった先生だ

ただ難点はこの先生は今年75歳で体育のほうは全然できないことだ

だから体育は自分で筋トレや外国からの通信教材で簡単な護身術を学ぶ程度

正直これでいいのかわからない

「マーグリス様?聞いていらしゃいますか?」

おっと、まだ授業中だった

「すいません、先生」

「いえ、もう一回言いますが、今日から新しい体育の先生がつきますのでよろしくおねがいします」

なんだと。体育の先生?何で今更?

「急な話ですね。」

「ええ。私も今さっき聞きましたからね」

そうして授業は終わり、始めての体育の時間となった

「やあやあ!こんにちは!マーグリス君!私はパウロだ」

目の前に現れたのはTシャツにジーパンそして服の上からでもわかる筋肉、角切りの髪型、みるからに熱血系な顔立ち

「いきなりだが、今日から親睦を深めるために外で合宿をするぞ!」

本当に最近は突然なことばかりだ

「荷造りとかは・・・・」

「大丈夫だ!ここのセーガンさんが準備をしてくれた!」

後ろをみるとキャリーバックを持ったセーガンが立っていた

その顔は幾分か不安そうだ

「パウロ殿、本当に私もついていては・・・」

「だめです!王たるものこれぐらいの修行は耐えられなければ!」

「はあ・・・・・」

セーガンはちらちらと僕のほうを不安げに見る

そんな目で見ないでくれ、ぼくだって不安だよ

「大丈夫です!合宿と言っても裏山に籠って運動するだけですから」

体育の先生は自信満々でしゃべっている

僕の住んでいる白の裏には椎の木や松の木が生い茂る山があり、よく警備隊の兵士が銃を錆びさせないために定期的に猟行に行っている

「というわけでさっそく出発だ!」

体育の先生はそう言い、セーガンさんから荷物を強引にもらうと、僕のお手を引き、裏山に向かって行った

おかしいな、どことなく既視感があるのは気のせいかな?





僕たちはこの山唯一の道を歩いている

同行人である謎のマッチョマンもといパウロはさっきから全くしゃべらずに黙々と舗装されていない道を歩いている

さっきまで効率のいい筋トレの仕方とか炭水化物と脂肪の代謝のちがいとかどうでもいいことばかり一方的に話してきていたのに

何か気味が悪くなってきた

するとやっと猟師小屋が見えてきた

ちなみに今は猟のシーズンではないのでこの小屋どころかこの山全体でも人は一人もいないだろう

前のほうを歩いていたパウロはいきなり立ち止まった

「もうそろそろいいかな」

パウロはそう呟いた

心なしかさっきと声が違うような気がする

「マーグリス君!ここまできたらもう後戻りできない!いいかね?」

あ、戻った。というより変わったと思ったのが勘違いだったのかな

「え・・・まあ・・・大丈夫ですけど」

無難な返事をしておく

体育の授業は生まれて初めてなので正直楽しみだったりする

「フフフ・・・・そうか・・・」

なんか含みなある笑い方をする先生

え?もしかするとアッチの人?

なんて思っていたりすると先生は何時の間にか近くにいて

耳元で囁いた

「昨日みたいな小綺麗な食い物は食えないがいいか?」

え?

まさか?

「さ・・・真田さん?」

「ご名答」

真田さんの声だ

だけど姿が全然違う

こんな明らかマッチョじゃなかったし、髪型だって角切りでもなかったし・・・

「もう変装しなくてもいいか」

すると彼はいきなり顔の皮膚を掴むとベリベリとは剥がし始めた

「うわ!」

僕は本当に皮膚が剥がれたんじゃないのかと思ったが、それはシリコンのようなものでできたマスクだった

剥がしたあとのそれはとても気持ち悪い

そしてその下の顔は紛れもなく昨日あった真田さんだった

「な・・・どうやって・・・・」

「まあ顔は変装マスクで、身体は色々着こんだりして筋肉っぽくして、声は・・・・」

真田さんは咳払いをして

「こんな、風に、声色を、カエテ、いたん、だよ~」

老若男女様々な声に変えながら喋った

「ほ・・・本当にできるものなんですね」

「やればできる!」

どこからそんな自信がくるんだろう

「とりあえず小屋に入ろうじゃないか、この身体結構暑いんだ」

「は・・はい」

そうして僕らは小屋の中に入って行った





俺はギルド製骨格矯正ラバーを外した

これは仮に裸になったとしても一般人相手なら絶対にばれないぐらいの精度を持つものだが

いかんせん暑い、とにかく暑い

余分な隙間を徹底的に排除し、通気性を求めると肌の精度が落ちるからと皮膚の素材は通気性をほぼ無視した造りになっている

まだ今回のケースだと実際の身体と素材の間には隙間ができるからそこに超小型クーラーを入れればどうにかなるが

(それでもラバー内の気温は34度以上になるが)

逆のケース、つまり身体を小さく見せないといけないときは悲惨だ

まず身体をこれでもかというぐらい締めつけて、人に見られているときは常時かがまなくてはならなくて、しかもクーラーを入れる隙間がないから身体を大きく見せるときより暑い

始めてやったときはラバーを外した途端に倒れた覚えがある

あれは地獄だ。一生やりたくない

「あっつ・・・・・・・」

持ってきておいた小型扇風機とボディ用冷却スプレーで身体を冷やし、いつもの格好に着替えるとマーグリスの待つ外に出た

外ではマーグリスが準備体操みたいなことをしていた

すまん。その準備体操は見たことない

かなり変わった準備体操だが・・・

まあ、一度も体育の授業を受けたことがないらしいから仕方あるまい

準備体操するだけ偉いじゃないか

「真田さん。一体ここでなにやるんですか?」

マーグリスは準備体操をやめると色々疑問のありそうな顔ををしながら俺に疑問をぶつけた

そりゃ、昨日あったばかりの怪しい人が次の日に体育の先生になって現れたら疑問の1つや2つぶつけたくなるわな

「だから体育の時間だよっと」

俺はしゃべりながらまーグリスの身体を拳でぐっと押した

「わっ!」

マーグリスはいきなりされたので驚きながらも倒れかけた身体をすぐに立て直す

「何するんですか!」

「ふむ、思ったより筋力はある。立ち筋もまずまず」

俺のような仕事をしていると相手の力量を戦っているときに測るんじゃ遅いから、歩き方やちょっとした仕草だけである程度見極めなければならない

俺の場合はこう測るが方法は人によりまちまちだ

ちなみに師匠は見ただけでわかるらしい

あー忌々しい

どうせあの人に敵うヤツなんて地球どころか宇宙ひっくるめても探せそうにないんだからそんな才能なくてもいいじゃないか

「は・・はあ・・・・・・」

「でもそのままじゃもしもの時が大変だから・・・・」

そうだ。今回のケースは依頼者に危険がおよびやすいケースだ

普通なら依頼実行人とは別に護衛をつけるが、どこかのケチもせいで人員はいないし資金も支給されていない

こんな不遇な扱いされているのは絶対俺だけだ

「だからあと10日間ずっと君には修行をしてもらいます」

「修行・・・・ですか」

マーグリスの顔が不安で曇る

「そう、自分の身は自分で守れなきゃいけませんからね」

「は・・・・はい!」

お!気合が入ったな

結構骨のあるヤツかもしれないな

「でも覚悟してくださいね・・・・フフフ」

「え・・・・・・」

せっかく気合の入ったマーグリスの顔が再び不安に染まる

「10日間しかありません。並大抵のことではどんな武術も役には立ちません」

でも断じて違う

「それこそ死に物狂いで修行しなくてはいけませんね」

いつもの不条理な師匠の仕打ちのうさ晴らしを兼ねようなんて

これっぽっちも、例えるなら水素の原子量ほども考えていない

本当だぜ










僕は一生忘れないだろう

あの真田さんの虚ろな目と笑いを






to be continued…………
























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