表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR

乙女ゲームのチュートリアルキャラに転生。俺、男なんですが!?

乙女ゲーの攻略キャラの弟に転生したけど、平和を満喫中

作者: 松平 ちこ
掲載日:2026/07/07

「七夕イベントとか、あったのかな?」


「あーちゃん、なに言ってるの?」


 ジリジリと暑さが増してきた初夏。流れる川を見ながら、あーちゃんことアディはふと思った。


 ――川で離ればなれになる純愛の話、いや? 無しか?


 水の中を泳ぐ魚の鱗が、キラキラと日の光を反射している。連想したのは、前世定番の天の川だ。


「いや、マーレ。俺さ、来年から学園だろ? 行事とか何があるんだろうって……」


「夏休みに帰郷するセレーヌス様に、聞いてみたら良いんじゃないの?」


「そう言えば、セレ兄さんの浮わついた話も聞いたこと無いな……」


 七夕と言えば、織姫と彦星の話が甦り――ポロリと、口から出た前世を誤魔化して、アディは話をすり替えた。

 セレーヌスはアディの二番目の兄だ。現在学園に通う後期二年生、Sクラスで成績優秀な自慢の兄である。


 ――いや、セレ兄さんは乙女ゲーの攻略キャラだし、コイバナが無くて正解か?


 長期休みの度に帰ってくるセレーヌスは、頼めば土産話をしてくれた。そこにはあまり、セレーヌス本人の話がないなとアディは気づく。


「――てい!」


「なぁ!?」


 マーレに後ろから押され、どぼんと音を立ててアディは盛大にダイブし、全身水浸しになる。


「溺れたらとか、風邪引いたらとか、どうしようとか、そういうのないの、ねぇ!?」


「その浅さで溺れても私でも助けられるし、そうでなくとも、護衛騎士さん飛んでくるし、風邪引いたら回復魔法掛けてあげるし?」


「いろいろと酷い!!」


 膝まである水深は、深くはないが浅くもない。けろりとして言わないでほしい。

 面白くないと、アディは右手を構え、くいっと指を動かした。


「《エア》」


「ひゃあ!?」


 マーレの後ろに風を吹かせ、アディは突き落とし、川に飛び込んできた彼女を、アディは軽々と受け止めた。


「あいこ~~」


「あーちゃん、女の子にヒドイ!」


「えぇ、全身ずぶ濡れの俺の立場……。マーレは足先がちょっと濡れただけだろ? 受け止めたじゃんかぁ」


 川辺にマーレを運んで立たせ、アディは我が身を振り返る。顔からダイブしたので、髪の毛までずぶ濡れである。


「レディへの扱いがなってません。こんなのじゃ、学園で苦労するよ? あーちゃんの友だちは、私しかいないのに」


「じゃあマーレも、あーちゃん、なんて呼ぶなよ。俺、十三歳。――というか、家の周辺から出してもらえないのに、友だち作れたら奇跡じゃね?」


「無事に入学したら、ちゃんとアディ君って呼んであげるよ。あーちゃん、調子に乗るとすぐ熱出すからねぇ。身体が丈夫にならないとそりゃあ、旦那様も奥様も心配するって。あ、いっそ願い事に書いたら良いんじゃないの? お祭りのやつ!」


「人にイタイボッチ宣言の願い事書かせようとして、貧弱って遠回しに言いながら、川に突き落とす所業……可愛げないの、どっちだよ」


 アディは言葉を選んで、ボソリと呟いた。鬼だ悪魔だと言えば、前世あるあるで通じず、ツッコまれるオチが見える。


「聞こえてるよぉ?」


「なんでもない――《エア》」


 にこりと微笑まれ、ほら角が生えそう、尻尾も生えそうとアディは内心で思った。逃げるように川の中央へ進み、そこへ風魔法を放った。


「ちょ――、あーちゃん!?」


 ザバッと水飛沫をあげ、魚が宙を舞う。どうせ全身濡れているのだ――なら、もういくら濡れてもいいだろう。


「昼飯ゲット――!! マーレ、皆で焼いて食べようぜ!」


「あぁ、相変わらずの才の無駄使い。見事なほど魚が無傷だぁ……」


 川の中ではしゃぐアディに、マーレが遠い目をして見ている。近くにいるだろう護衛たちも呆れていることはずだ。


「マーレ! 見てないで捕まえてよ。跳ねて川に戻るじゃんか!」


「いや!? ただ打ち上げるなら、いっそもうちょっと考えてしない!?」




 ◇◆◇◆◇◆◇




「――って、ことがありましてね?」


「それで昼過ぎまで、アディは川遊びして風邪を引いた、と」


「すみません。また何か遠い目をしてたので、気持ちを引き戻そうと思って、つい……」


 夜の執務室を訪れて、マーレはしょぼんと肩を落としながら、旦那様――アディの父に報告をする。

 夕食後から顔が赤くなり、案の定というかアディが熱を出したのだ。


「君なりの気遣いだ、いいよ。アディの世話は一任しているからね。その代わり、容態が酷くなるようなら回復魔法を掛けてやって、軽い風邪なら、アディの反省を促す意味でも様子見でいいよ」


「はい。治るまでは責任をもって傍についています。ご安心ください」


 一礼して、マーレは退室する。その背を見送りながら、アディの父は窓の外を見上げた。夜空には月と星がキラキラと瞬いている。


「ぼうっとしていた、そうか……。そろそろ星祭の季節か。星に願いを――アディの発案だったな。すっかり領地で定番になったが」

☆本編はこちら

ncode.syosetu.com/n1895lr/


もし、この作品を少しでも楽しんでいただけたなら、 ぽちっと応援していただけると、今後の活力になります!

読んでくださり、ありがとうございました!(*^^*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ