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戦わずに世界を変えた男――教育と物流で“循環国家”を作ったら、宗教国家まで改革された  作者: 慈架太子


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308話:冬を越える国

北方。


白銀世界。


吹雪。


凍土。


極寒。


昔。


北方の人間にとって、

冬とは災害だった。


毎年。


誰かが死ぬ。


飢える。


凍える。


病に倒れる。


春を迎えられない。


それが当たり前。


だから北方の民は、

冬を恐れていた。


冬が来る前に祈る。


冬が終わるまで耐える。


それしか出来なかった。


今。


その常識が崩れ始めていた。


北方中央同盟都市フィリア。


巨大備蓄区。


雪の中。


無数の倉庫が並ぶ。


魔導暖房。


断熱壁。


循環式保存庫。


共和国技術。


北方建築。


全部融合していた。


巨大倉庫内部。


大量の保存食。


干し肉。


燻製魚。


乾燥野菜。


根菜。


果実保存樽。


小麦。


豆類。


北方物流官が報告する。


「第三備蓄区、

保存率九十七%維持」


「冬季輸送線、

全域安定」


周囲の北方族長達が静かに息を飲む。


昔ならあり得ない。


冬の間。


食料は減るだけだった。


今。


管理されている。


循環している。


そこが大きい。


中央農業区。


巨大温室群。


雪の外とは別世界。


暖気。


湿度管理。


水路循環。


若い農業教師達が、

土を確認していた。


「温度維持良好」


「根菜成長安定」


「魔力循環炉、

出力正常」


共和国農業理論。


北方適応型へ完全改良済み。


若い少女農民が、

大根を抱えて笑う。


「見てください!」


「今年、

こんな大きい!」


周囲が笑う。


北方では昔。


冬野菜など夢だった。


今。


根菜栽培成功。


保存技術向上。


食料安定。


文明が変わり始めていた。


フィリアが温室を歩く。


静かに土へ触れる。


暖かい。


そこが大きい。


昔。


北方の土は、

冬になると死んだ。


今。


生きている。


共和国農業教師が説明する。


「魔力循環を土へ流しています」


「凍結を抑え、

地熱循環を維持」


「さらに保存水路で温度安定化」


フィリアが頷く。


理論。


教育。


技術。


全部繋がっている。


共和国は、

奇跡を使っていない。


積み上げている。


だから強い。


果樹実験区。


そこにも雪は無い。


巨大硝子温室。


果樹列。


柑橘。


林檎。


梨。


北方老人達が呆然と見上げる。


「北で……

果樹だと……」


若い研究員が笑う。


「寒冷適応種です」


「北方魔力循環に合わせて改良しました」


共和国大学研究区。


農業研究棟。


北方同盟農業局。


共同開発。


全部繋がっていた。


そこへ。


共和国農業教師団が到着する。


中央にいたのは、

ピーターの弟子の一人。


若い農業教導師。


「今年の収穫予測です」


巨大資料が広げられる。


根菜収穫量。


保存食生産量。


果樹安定率。


全部上昇。


北方族長達が静かにざわめく。


「飢餓が……」


「本当に消えるのか……?」


誰も即答出来ない。


なぜなら。


北方人にとって、

飢餓は歴史そのものだった。


その時。


フィリアが静かに言った。


「消える」


全員が彼女を見る。


フィリアは、

遠くの温室を見る。


子供達。


農民。


教師。


笑っている。


「共和国が教えたのは、

魔法じゃない」


「循環よ」


静かな声。


でも。


重かった。


北方の問題は、

寒さだけじゃなかった。


孤立。


奪い合い。


知識不足。


全部重なっていた。


共和国は、

そこを変え始めた。


中央物流街道。


吹雪の中。


巨大輸送列が進む。


魔導暖房車。


保存荷車。


共和国式耐寒布。


北方式雪走行車輪。


全部融合。


昔。


冬季物流は止まった。


今。


止まらない。


若い北方商人が叫ぶ。


「第五都市向け保存食!」


「積載確認!」


「凍結防止結界確認!」


物流官達が高速で動く。


共和国式物流教育。


北方適応型へ進化済み。


若い北方少年が目を輝かせる。


「すげぇ……」


昔。


冬の商人は命懸けだった。


今。


職業になり始めている。


そこが文明。


北方中央治療院。


暖気。


光。


静かな音楽。


昔の北方には無かった場所。


病人達が治療を受けている。


共和国式衛生。


栄養管理。


温熱循環。


感染隔離。


全部理論化済み。


若い治癒師が説明する。


「冬季肺病、

大幅減少です」


「凍傷患者も激減」


北方老医師が震える声で呟く。


「……こんな時代が来るのか」


昔。


冬病は諦めだった。


今。


治療対象になっている。


そこが違う。


夜。


北方中央都市。


吹雪。


その中でも灯りが消えない。


学校。


治療院。


物流拠点。


温室。


全部稼働している。


共和国式魔力循環炉。


北方燃焼技術。


融合済み。


中央広場。


大量の子供達が走っている。


雪遊び。


笑い声。


昔。


北方の冬は、

子供を殺した。


今。


子供が笑っている。


そこが大きい。


フィリアが広場を見る。


静かに息を吐く。


白い息。


その横へ、

グロマールが来た。


フィリアが少し笑う。


「共和国は、

本当に世界を変えますね」


グロマールは広場を見る。


「変えてるのは、

北方自身だ」


フィリアが目を細める。


そこが共和国。


支配者の言葉じゃない。


環境を整える側。


だから人が育つ。


遠く。


子供達が雪玉を投げ合っている。


その笑い声を聞きながら。


フィリアが静かに呟いた。


「ようやく」


「冬が敵じゃなくなった」


誰も否定しなかった。


昔。


冬は死だった。


今。


冬は季節になり始めている。


共和国技術。


北方適応力。


教育。


物流。


保存。


農業。


全部繋がった。


だから北方は変わった。


支配されたわけじゃない。


救われただけでもない。


自分達で、

冬を越えられるようになった。


それが。


北方同盟最大の革命だった。


夜空。


白銀世界。


巨大温室群の灯りが、

雪へ反射している。


その光景を見ながら。


北方の民は、

ようやく理解し始めていた。


文明とは。


戦争で勝つことじゃない。


人が、

冬を越えられることなのだと。



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