第3話 初ポーション、そして牙 その1
異世界に降り立った俺は、まず深呼吸をした。
「すげえ……空気が、違う」
なんというか、澄んでいるというか、濃いというか。地球とは明らかに違う感触だ。周囲を見渡せば、緑の草原が広がり、遠くには森が見える。空は青く、雲は白く、絵本の世界みたいだ。
「とりあえず、落ち着こう。俺には【ポーション生成】スキルがある」
神様から授かった力。まずはそれを確認しないと。
俺は目を閉じて、意識を集中させた。すると、頭の中に半透明のウィンドウが浮かび上がる。
【ポーション生成スキル】
現在MP:100/100
本日の生成可能数:10個
「よし……じゃあ、まずはEランクを1個作ってみるか」
試しに、心の中で『Eランクポーション生成』と唱えてみた。
次の瞬間——。
手のひらに、ふわりと重みが生まれた。
瓶はひんやりとしていて、液体は柔らかく光を放っている
「え?」
見ると、透明なガラス瓶が握られていて、中には淡い緑色の液体が入っている。瓶はひんやりとしていて、液体は柔らかく光を放っている。
「マジで……出た」
嘘だろ。本当に何もないところから、ポーションが出現した。しかも、ゲームみたいに綺麗な瓶入りで。
俺はMPを確認する。
現在MP:98/100
確かに2減っている。つまり、これは本物だ。
「すげえ……これがチートスキルってやつか」
興奮しながら、俺はポーションの瓶をじっと見つめた。軽く振ってみると、液体が瓶の中で揺れる。匂いを嗅いでみると、ほんのり甘い香りがした。
「これで傷が治るのか……本当に?」
試してみたい気持ちもあったが、さすがに自分を傷つける勇気はない。
「とりあえず、これは持っておこう」
俺はポーションをズボンのポケットに入れようとして、気づいた。
「……ポケット、ない」
そう、俺の服装は、いつの間にか変わっていた。白いシャツに茶色のズボン、黒いブーツ。まるでファンタジー世界の村人Aみたいな格好だ。
「神様、ちゃんと服も用意してくれてたのか……ありがたい」
とはいえ、ポケットがないのは困る。
仕方なく、ポーションを手に持ったまま歩き出すことにした。
「さて、とりあえず人がいる場所を探さないとな」
俺は草原を進み始めた。遠くに城壁が見えたから、あの方向に街があるはずだ。
歩きながら、俺は考える。
「戦闘能力ゼロか……モンスターに遭遇したら、逃げるしかないな」
不安だ。でも、ポーションがあれば何とかなるはず。
そう思った矢先だった。
「グルルルルル……」
「え?」
背後から、低い唸り声が聞こえた。




