第22話 作戦会議
俺が尋ねると、リーナは一瞬だけ言葉に詰まった。
「……実は、父が大きな怪我をしまして」
「お父さんが……」
「はい。昨日、作業中に落下事故で……命に別状はないんですが、傷が深くて……」
声が震える。指先が、領収札をぎゅっと握りしめていた。
「ポーションは?」
「市販のEランクを使いました。でも……出血は止まっても、肉が塞がらなくて」
少しだけ黙ってから、俺はうなずく。
「明日、もしよかったら、俺の“試作E”を試してみませんか。効き目は少し強いかもしれません」
「え……でも、それは高いのでは」
「お代はいつも通りで大丈夫。とにかく回復を前に進めたいんです」
リーナは潤んだ目で、強く頷いた。
「……ありがとうございます。明日、父の部屋に来ていただけますか」
「はい。時間は合わせます」
ギルドを出る。人混みのざわめきが遠のく。
「リーナさん、大丈夫かな……」
「お前が支えてやればいい」
「ヒナト様なら、きっと助けられます」
「――だれか、みてる〜ぷるぷる〜」
俺は周囲を見回す。気配は拾えない。だが刺さるような違和感だけが残る。
「注意しながら一旦戻ろう。夜のうちに段取りを固めよう」
宿の部屋。扉と窓をクロエが確認し、ハクが【防音膜】を張る。耳がふっと詰まった。
「方針はバレずに完治を目指そう。本命はA級をE級試作品として投与する。どうやって誤魔化そうかな。」
「では、私が【光浄】でA級の見た目を少し誤魔化しましょう、【微治癒】を重ねて魔法とEランクポーションで治った痕跡に見せます」
「段取りを刻もう」
ヒナトが指を折る。
「1 まずはE級ポーションを提示」
「2 リーナさんには『温かい蜂蜜水と清潔な布を二枚お願い』で一時退室してもらう」
「3 退室の瞬間に、A級をE瓶へ差し替える。」
「4 投与直後、リーシャが【光浄】→【微治癒】を連続詠唱。魔力感知されても術者はリーシャに見える」
「最後にリーナの足音が戻ったらクロエが合図三回、治癒の残光は体で遮る。もし、侵入者が来たら・・・」
「あぁ〜。その時は、私が叩き潰す!!」
クロエのあの強さなら納得だな。さて、ハクはどうしようか?
「ハクは気配察知を最大限によろしくな」
「わかった〜。ぷるぷる」
「目的はただ一つ。彼女の父を救い、余計な噂を立てないこと」
「任せろ」
「任せてください」
「ぷるぷる〜」
俺は胸に手を当てた。三人と一匹が、同じ合図で応える。
「明日、やるべきことを正確にやる。それだけだ」




