第17話 その名は『ハク』
「よし。じゃあ、名前をつけよう」
「名前?」
「ああ。お前は今日から、ハクだ」
俺がそう言った瞬間、スライムが――ハクが、ぴょこんと跳ねた。そして、俺の頬にぺたりとくっついてくる。
「わっ、冷たい!」
「ぷるぷる~」
何か鳴き声のようなものが聞こえた気がする。気のせいかもしれないけど。
「ハク、か。白いから?」
「それもあるけど、白って純粋とか神秘的って意味もあるだろ? だから、ぴったりかなって」
「……ふーん」
クロエが、少し照れたように視線を逸らす。
「素敵な名前ですね」
リーシャが微笑む。その笑顔に、俺も自然と頬が緩んだ。
「――それにしても、お前ら本当に強すぎだって」
ベッドに座りながら、俺はハクを撫でつつ呟いた。さっきの森での戦闘を思い出す。
「何言ってんだ?」
「いや、スライムもゴブリンも一撃じゃないか。クロエなんて、衝撃波一発で吹き飛ばしてたし」
「それが普通だろ?」
「普通じゃないから! あと、リーシャも」
「え……私、何か……?」
「スライム相手にあの氷魔法はやりすぎだよ。まさにメラゾーマをスライムに撃つみたいな」
「メ・メラ……?」
リーシャが首を傾げる。ああ、この世界にドラクエはないんだった。
「つまり、すごく強い魔法ってこと」
「あ……ごめんなさい。魔力の調節、まだ苦手で……」
リーシャが申し訳なさそうに俯く。
「いや、謝らなくていいって。強いのは良いことだし。ただ、もうちょっと手加減してくれないと、不測の事態に体力なくて対応できないってなることが心配だよ。」
「手加減ねえ……できるかっての」
クロエが不敵に笑う。でも、その顔は少し照れているように見えた。
「陽斗様に褒めていただけて……嬉しいです」
リーシャも、頬を赤らめながら微笑む。
「褒めてるよ。本当に頼りになるから」
「……陽斗のポーションがあれば、私たちは安心して戦えます」
リーシャが、静かに言った。
「そうだな。お前がいれば、多少無茶もできる」
クロエも、珍しく素直に認める。
「……そっか」
俺は、ハクを撫でながら笑った。二人がそう言ってくれるなら、俺ももっと頑張らないとな。
「……子供みたい」
「え?」
「いや、なんでもない」
クロエが、そっぽを向く。その耳が、ほんのり赤くなっていた気がする。
「陽斗様、ハクを撫でているとき、とても優しい顔をなさいますね」
「そう?」
「はい。まるで、大切な家族を見るような……」
リーシャの声が、少し掠れる。
「家族か。そうだな、ハクも、お前たちも、俺にとっては大切な仲間だから」
「……仲間」
リーシャが、その言葉を繰り返す。その瞳に、何か複雑な感情が浮かんでいた気がした。




