第14話 【リーナ視点】嫉妬
朝のギルドは、いつもより少しだけ静かだった。
私——リーナ・フロストは、カウンターの前に立ち、書類を整理していた。
「今日も、普通の一日になるかしら……」
そう思った矢先だった。
ギルドの扉が開き——見覚えのある青年が入ってきた。
「ヒナト様……?」
私は思わず顔を上げた。
でも、その瞬間——。
彼の両脇には、二人の美しい少女が立っていた。
一人は銀髪のエルフ。もう一人は黒髪の、凛とした雰囲気の少女。
「……あ」
私の心臓が、嫌な音を立てた。
何、あれ。
昨日まで、そんな気配なかったのに。
「リーナさん?」
ヒナト様が声をかけてきた。
「……ヒナト様?」
私は努めて冷静に答えた。そして——その視線が、彼の後ろにいる二人に移る。
「今日は……どうされました?」
声が、いつもより少しだけ硬くなっていた気がする。
「あ、えっと……仲間の登録に来たんです」
「仲間……ですか」
私は二人の少女をじっと見つめた。どちらも、信じられないくらい美しい。
「こちらは、クロエとリーシャ。これから一緒に冒険者として活動します」
「……そうですか」
私は少しだけ表情を曇らせてしまった。でも、すぐに笑顔に戻す。
「では、登録手続きをさせていただきます。こちらへどうぞ」
受付嬢として、仕事をしなければ。
でも、胸の奥は——ざわついていた。
最初に仲良くなったのは、私だったのに。
手続きは滞りなく進んだ。
クロエとリーシャは、それぞれ冒険者カードを受け取った。
「これで、正式に冒険者です」
私は微笑む。でも、どこか拗ねているような雰囲気が出ていたかもしれない。
「ありがとうございます、リーナさん」
「……ヒナト様は、意外と女慣れしてるんですね」
思わず、そんな言葉が口から出てしまった。
「え?」
「いえ、なんでもありません」
私はそっぽを向いた。自分でもわかる。子供っぽい態度だって。
「あの……怒ってます?」
「怒ってませんよ」
明らかに怒っている。いや、怒っているというより——。
「リーナさん、ありがとうございました」
リーシャが丁寧に頭を下げた。
「……いえ、どういたしまして」
私は少し複雑そうな顔をしていた。
ヒナト様たちが掲示板の方へ向かっていくのを見て、私は小さくため息をついた。
「私、何やってるんだろう……」




