第1話 白い空間と神様の提案 その1
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気がついたとき、俺は白い空間に立っていた。
「……え?」
思わず声が出た。
足元も、頭上も、視界の端も、全てが真っ白だ。まるで霧の中にいるようでもあり、でも視界はやけにクリアで、なんとも形容しがたい場所だった。
「ここ、どこだ……?」
記憶を辿る。確か俺は、会社帰りに横断歩道を渡っていて——。
そこで途切れている。
「まさか……死んだのか?」
呟いた瞬間、空間がふわりと光った。
『その通りです』
「うわっ!?」
突然、声が響いた。
いや、"響いた"というより、頭の中に直接流れ込んできたような感覚だ。
俺が驚いて周囲を見回すと、白い空間の奥から、ゆっくりと"何か"が近づいてくる。
人の形をしているようで、でも輪郭が曖昧で、まるで光そのものが意思を持って動いているようだった。
『はじめまして、田中陽斗さん。私は——まあ、あなた方の世界では"神"と呼ばれる存在です』
「か、神様……?」
俺は思わず固まった。神様。マジか。本当にいるのか、こんな存在。
『驚かれるのも無理はありません。ですが、時間も限られていますので、単刀直入に申し上げます』
神様——らしき存在は、俺の目の前で静かに止まった。
『あなたには、別の世界へ行っていただきたいのです』
「別の……世界?」
『はい。あなた方の言葉で言えば、"異世界転生"というものですね』
なんてこった。まさか自分がそんなテンプレ展開に巻き込まれるなんて。
「あの、俺、別に勇者とか向いてないんですけど……」
『ご安心ください。戦っていただく必要はありません』
「え?」
神様の言葉に、俺は思わず聞き返した。
『実は、私が管理している世界のひとつに、深刻な問題が起きています。それは——"回復手段の不足"です』
「回復手段……ポーションとか、そういうこと?」
『その通り。その世界には冒険者やギルド、モンスターといった要素が存在しますが、ポーション職人の数が圧倒的に不足しており、需要に供給が追いついていません。結果、多くの人々が命を落としています』
神様の声には、どこか哀しみが滲んでいた。
『そこであなたに、特別なスキルを授けたいのです。【ポーション生成】——ランクS〜Eまでのポーションを、自在に生み出す力です』
「ポーション生成……」
確かにチートっぽい響きだ。でも、なんで俺なんだろう。
『あなたは生前、困っている人を放っておけない性格でしたね。会社の後輩の面倒を見たり、道端で倒れた人に声をかけたり』
「それは……普通のことじゃないですか」
『そう思える心こそが、今必要なのです。力ではなく、優しさで世界を救える人を、私は探していました』
神様の言葉に、俺の胸が熱くなる。
「……わかりました。やります」
『ありがとうございます。では、スキルの詳細をお伝えします』




