第7話【拡がる舞】
週明けの朝。
つむぎは教室に入るなり、妙に視線を集めているのを感じた。
「……あれ? 私、なんかやらかした?」
心哉がこっそり耳打ちしてくる。
「つむぎの投稿、めっちゃバズってる」
「うん。知ってる。」
#結び目の記憶 というタグでアップした写真が3万いいねを超えていた。
「何これ……模様が脈打ってるように見えるってコメントばっかり」
「変な夢見たって人も多いな」
教室のあちこちで、縄文風の模様を模した髪飾りやアクセを身に着けている子まで現れ始めている。
「なんか、拡がってる……」
昼休み。
「ねえねえ、つむぎ! 次なに投稿するの?」
ユーリが無邪気に聞いてきた。
「え……そんな、次って……」
そのとき、ふと思い浮かぶ。土偶の手足の形。リズムに合わせて動いたときのイメージ。
「“土偶ダンス”……とか、どうかな」
心哉がむせた。「ど、土偶ダンス?」
「うん、なんか、手とか足の角度が独特で……音楽に合わせたら面白くなりそうじゃない?」
「つむぎ……ノリすぎだろ……」
つむぎは、スマホのカメラでこっそり練習動画を撮りはじめていた。
その夜、
#土偶ダンス の投稿がSNS上に現れる。
「中毒性ある」「妙に落ち着く」「無意識にマネしてた」
再生数は伸び続け、コピーダンス動画も続出していた。
つむぎは、ベッドの中で画面を見つめながら、ふと思った。
(これは……私が考えたんだよね?
でも、どうしてこんなに自然に踊れたんだろう)
何かが、自分の奥底から湧き上がってくる。
(もっと……もっと広げなきゃ)
そのとき、画面が一瞬だけ暗転し、また例の通知が現れた。
『拡ガリ繋ガッテイク』
そして、ほんの一瞬。
土で覆われた巨大な土偶が、瞳をこちらに向けている映像がフラッシュのように走った。
つむぎは、ぞくりと背中を震わせた。
でも、なぜか嫌な気持ちではなかった。
その夜、つむぎの動画は都市伝説スレに転載され、
「見た者に変化をもたらす動画」として拡散されていく――。