第4話【空白の歴史】
つむぎと心哉は、遥と一緒に机を囲んでいた。
「縄文のこと、いろいろ調べてるんだ」
遥は淡々と話し始める。
「縄文時代にはね、空白の歴史というものがあるの」
「空白の歴史?」
「そう。縄文時代は1万年も続いたのにその間ほとんど何があったかわかっていないの。」
「縄文時代って1万年も続いたの!?」
「そうなの。私はその1万年の間に何かとてつもない秘密が隠されてると思うの。」
「なるほど。教科書だとなんとなくしか触れないからあんまり意識してなかったな」
「でね。縄文時代はとても平和だったみたいなの。大体どの文明も骨を調べると争いの痕跡があるんだけど、
縄文時代の骨にはその痕跡が全然ないんだって。」
「だから、縄文時代の人々は平和に暮らしてたんじゃなかって思うの」
つむぎは驚いたように目を見開く。
「でも、それならなんで何も痕跡がないの?平和だったなら色々と残ってそうじゃない?」
「そう。そこに秘密があると思うの。縄文人は現代とは違う意思疎通の方法があったんじゃないかって言われてるの。」
「だから、ここまで長い歴史があるのに全然情報がないんだと思うの。」
「言われてるって誰に?」
「例の結び目教よ」
「そうなんだ……それで、最近の縄文ブームと何が関係あるの?」
遥は少し微笑んだ。
「そこがポイント。結び目教の人たちは縄文人の意思が現代に入り込んできたって騒いでるの」
「SNSを利用して縄文の意思が潜在的に広がってるみたい」
心哉が眉をひそめる。
「でもそれって都市伝説みたいなもんだろ?」
遥は首をかしげた。
「わからないけど、現実として起きていることは無視できないんじゃない?」
その日の帰り道。
つむぎは考え込んでいた。
「私たち、何かに巻き込まれているのかな……」
心哉は少し遠くを見つめて言った。
「信じられないな…」