第13話【綻びの兆し】
図書館の片隅。
心哉は、遥と向かい合っていた。
「……頼む。お前は、まだ“まとも”なんだろ?」
遥はしばらく何も言わず、心哉の顔をじっと見つめた。
「どうして、そう思うの?」
「お前は何かを知っているけどまともだと感じたんだ。仕方ないってどういうことだ?」
遥はゆっくりと頷いた。
「必要な工程なの。でも、大丈夫。まだ何とかできるから。」
「間に合うのか…遥…何が起きてるのか教えてくれ」
遥は小さく息をついた。
「土器や土偶、縄文の文様、舞……それはすべて“記憶の媒体”だった。
縄文人は言語を使わずに、意識のネットワークで繋がっていた。
でもその文明は、言葉を使う弥生系の人々、つまり渡来人に滅ぼされた……。
だけど、記憶だけは消えなかった。ずっと、眠っていた。」
「それが今、目を覚まそうとしてる?」
「SNSや動画の“拡散”は、かつての意識ネットワークに似てる。
自分の意思が弱まってる現代。そこに縄文の記憶が入り込んだの。……その軸が、つむぎ。」
心哉は黙って拳を握りしめた。
「でも、つむぎは自分がそうなってることに気づいてない。あいつ、あのままじゃ――」
「……止める方法あるのか?」
遥は、机の上に一冊の古い文献を置いた。
『記憶を繋ぐ土』
「縄文時代は土と共にあったの。ここに糸口があるのよ」
心哉はその表紙に手を置き、深く頷いた。
(絶対に、取り戻す。あいつの“声”を)」




