第12話【裂け目】
教室の空気は、さらに“静か”になっていた。
言葉は消え、ダンスの様なジェスチャーと表情だけが飛び交う中、
心哉は孤立していた。
「つむぎ、ちょっと……いいか?」
昼休み。
廊下に呼び出したつむぎは、にこやかに頷いた。
「うん、どうしたの?」
「お前……本当に、大丈夫か?」
つむぎは不思議そうに首をかしげた。
「私はすごく調子がいいよ?」
「そうじゃなくて……最近、変なんだよ。
お前も、周りも。なんでみんな、言葉を使わなくなってるんだ?」
つむぎはしばらく黙って、空を見上げた。
「言葉って、限界あるでしょ? 誤解もするし、傷つけるし。
それなら、思考を直接つなげた方が早いよ」
「……誰の考えだ、それは」
つむぎはふっと微笑んだ。
「わたしの…だよ」
その瞳の奥に、どこか“自分ではない何か”が宿っているように感じた。
「お前さ、本当に気づいてないのか?
何かに巻き込まれてるんだよ、みんな。
お前も……たぶん、知らずに」
「ねえ、心哉くん」
つむぎは少しだけ顔を近づけた。
「わたしね……世界が静かになっていくの、嬉しいの」
「でも、それはお前じゃない“誰か”が望んでる世界じゃないのか?」
つむぎは答えなかった。
放課後、心哉は図書館にこもった。
縄文、集団催眠、空白の歴史、共通意識。
つながらない断片を、無理やり紡ぎ合わせようとしていた。
(なんとかしないと……このままじゃ、みんな……)
ページの隙間から、誰かの視線を感じた。
振り返ると、図書館の奥に立つ人影。
それは、遥だった。
心哉は小さく呟いた。
「……まだ、間に合うよな……」
「仕方ないことなの…」
「どういうことだ…?」




