第11話【声のない繋がり】
朝のニュース番組。
「昨今、10代から20代の若年層において“機能性失語症”と診断されるケースが急増しています」
「言語能力に異常がないにもかかわらず、発語が困難になる現象で、専門家の間では“集団的な心理的要因”が指摘されています」
つむぎは制服のまま、朝食の手を止めてテレビに見入っていた。
画面には、街頭インタビューに応じる若者が無言で首を振る映像。
その背後で、スマホを手にした若者たちが身振りだけで会話を交わしていた。
(でも、みんな困ってなさそう……)
学校。
心哉は教室の空気に異変を感じていた。
誰もがスマホを見て、目が合えば踊りだす。
けれど、言葉を交わす者がほとんどいない。
「なあ、お前ら……なんでしゃべんねぇの?」
声をかけても、クラスメイトは微笑んで肩をすくめるだけ。
一人、また一人、誰かが静かに踊るだけで、まるで言葉が不要になったような光景。
「なにこれ……変だろ……」
そんな中、つむぎが教室に入ってくる。
「おはよう、心哉くん」
その声だけが、教室に響いた。
「お前……しゃべれるんだな」
つむぎは笑う。
「私はね。でも、私たち、もう言葉はいらないんだよ。気持ちはちゃんと伝わるんだから」
「“私たち”って?」
「……ふふ」
放課後。
心哉は駅前のスクリーンで流れる緊急報道を目にする。
『SNSで流行中の“ダンス”が、脳波に特異な影響を与える可能性──学会で研究報告』
その下には、“集団催眠”という言葉が、静かに浮かび上がっていた。




