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胸糞バッドエンド集   作者: BAD ENDLESS
3/6

ある自己犠牲女


さあ、どんな展開になるでしょーか!



 「貴方だけでも、生きて…………」



 私には大切な幼馴染みがいた。


 物心ついた時には共に過ごす仲だった。


 何処にでも居そうな男の子。


 特に目立った特徴も、力もない。


 けれども、私は彼が好きだった。


 彼は何時も私を守ってくれた。


 喧嘩する事もあった、仲違いしたこともあった。けれども、結局自然と仲直りになったのは不思議だ。



 「私の……分まで…………生きて………」



 私はもうすぐ死ぬ。


 【聖女】として選ばれた村娘の私だが、父は心配して彼を護衛の騎士として守られることとなった。


 何時も何時も私は彼に守られていた。


 【聖女】の私は、人を治癒するだけではなく聖なる力で一般兵よりも戦えた筈だ。けれども、彼は私よりも弱いのにも関わらず身を挺して守り続けてくれた。


 何度も危ない目にあった。


 何度も彼が死にかけたこともあった。


 だからこそ、見ていられなかった。


 守られ続けるのは嫌だ。


 彼が傷付くのは嫌だ。


 だから、今度こそ私が――――――――。



 けれども、私は【聖女】の力を持ってしても弱かった。戦うという経験が浅かった。浅過ぎた。


 そのせいで、私はお腹に穴を空けて血に伏していた。


 曇天に染まる上から雨が降り注ぐ。


 徐々に体温が失われる感覚は、己の命の灯が消え去る感覚だと自然と理解した。



 「あ……し…………る…………」



 彼が好きだった。


 ずっと一緒にいることが当たり前で、この想いに気付かなかった。ううん、彼と共に居れると甘んじていた結果。もっと早くに伝えれば良かったのに、と後悔してももう、遅い。



 「――――――ぁ、―――――――」

   


 せめて、せめて私の愛した人だけでも幸せになって。私よりも長生きして、幸せになって。


 これが、私の、最期の願い。


 教会のシスターからある話を聞いたことがあった。


 【聖女】の強い願いは、実現する力がある―――――と。


 ならば。


 それが本当ならば、私は願う。


 ――――――生きて。


 ――――――私の分まで。


 

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