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星に願いを:長門甲斐編  作者: 七星瓢虫
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上総

「上総」


名前を呼ばれて改めて眼の前の「悪魔」と向き合う


緩やかに打つ藤黄色の髪

(やや)、黒目勝ちの赤味掛かる金茶色の眼が黒衣の外套に映える


「少年」という、形容が見事に当て嵌まる

見た目は幼いが豊前程、悪魔らしい悪魔はいない


「狡猾」で「無慈悲」

勿論、此れは「褒め言葉」だ


此の悪魔に()れ程の人間が「願い」をしたのだろうか


其れこそ夢現で

其れこそ夢心地で


此の悪魔は()のような「願い」でも聞いてくれるのだろうか


相手が「人間」だろうと

相手が「人間」以外だろうと


「上総」


再度、声を掛ける

其の顔は如何にも上の空だ


「ああ」


何とも気の抜けた返事をする上総に金茶色の眼(目)を(そそ)

豊前が御構い無しに話し出す


「如何、言い訳するの?」


「言い訳?」


「道」に対してか?

「契約」に対してか?


御前等、余所の「悪魔」に対してか?


()れでもない

豊前の「言い訳」とは多分、()れでもない


一歩、二歩と歩み寄る

()うしてもう縮める距離はない所で上総が私語(ささや)


「「言い訳」は要らない」


濡羽色の前髪の隙間から覗く

底の見えない、底なし沼のような青鈍色の眼が自分を見下ろす


其れでも退かずに耐える豊前が口を開く


「知られたら、」


一瞬、鉄仮面然の上総の唇から笑いが漏れる


「俺は言わない」

「豊前、御前も言わない」


「誰も言わない事は誰にも知られる事はない」


()う言い切る上総に豊前は面白くない

面白くないが其の通りだ


何が何でも自分は言うつもりはないが矢張り、面白くない


兎にも角にも「暗黙の了解」である間合いを無視した

上総を思い切り押し遣り、すり抜ける


彼奴(あいつ)がした事の「言い訳」は如何するの?」


傍目(はため)にも暢気に「弟」と雑談を交わしている

「曰く付きの悪魔」を顎で指す、豊前に促がされ上総は和泉を手招く


「詫びとして、私の「道」を受け取ってくれ」


豊前、備前の前で低頭平身した(のち)

一丁前にも提案する和泉に


御前の「道」は

俺の「道」でもあるのだが、と思うも上総は何も言わない


「身勝手」には慣れている

抑、()の取引も悪魔相手には(まか)り通らない



「借り」も作らない

「貸し」も作らないにも関わらず二人の悪魔は承諾した


果たして


和泉を選んだのか

備前を選んだのか、何れにせよ厄介事だ


分かっていた

分かっていたが()えて和泉を止めなかった


分かっていたが


尻目に掛ける

此方を(うかが)う金茶色の眼と合った瞬間、豊前が吐き捨てた


「残念、頭を下げた「意味」がなかったね」


全く以て、豊前らしくない悪巫山戯(わるふざけ)だが

自分が考える以上に和泉の存在が(うと)ましいらしい


当たり前だが豊前は微笑んではいなかった

だが上総には其れは其れは微笑んでいるように見えた


ならば此方も満面の笑みで応えてやろうか

雁首揃える悪魔に向かい、唇の両端を吊り上げる


豊前、備前は勿論の事

流石(?)の和泉でさえ「遣り過ぎ遣り過ぎ」と、引く中

笑顔を貼り付けたまま、言う


一一(いちいち)、気に障る「兄弟」だ」

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