道
地震雷火事大山風
本当
台風嫌いだ
頭上を仰ぐ、満天の星空
「星に願った」
「次の瞬間、星が流れた」
「次の瞬間、貴方が目の前にいた」
星影から星影へ
得意満面、黒衣の外套を靡かす
急降下する和泉に追い付き襟首を掴む人影がある
当然、締まる首元に蛙の鳴き声のような声を上げるや
思い切り紫黒色の眼を吊り上げ背後を振り返る
「!!おい、上総!!」
如何にも咳き込み叫ぶも
其の襟首から手を放す上総が鉄仮面 然、往なす
「何度、言ったら分かる?」
「?!あん?!」
余所の者ならば黙らせるのに効果覿面
然し脊髄反射で噛み付く和泉には効果は今一のようだ
上総も上総で歯牙にも掛けないが容認出来ない事がある
「此の先は、「道」だ」
其れこそ耳に胼胝が出来る程、「道」「道」繰り返す
上総に和泉は引っ詰めた髪の間を掻き毟る
「?!「道」?!」
「?!「道」等、ないだろうが?!」
第一、海の「道」だ⤴、「空」の道だ⤴、「道」の「道」だ⤴
人間同士の約束事で
「悪魔」である自分達には関係ないだろうが?!
反論するのは容易い
容易いが説教が長引く事は歓迎しない
外方を向き崩れた襟を正しながら
渋渋、呑み込む言葉に口元を「へ」の字にする
和泉の態度に
自分が口を酸っぱくして忠告した、「道」を理解しようともしない餓鬼
と、降参するも精神年齢に見合った疑問を投げ掛ける
「餓鬼の頃、近所の空き地に「秘密基地」を作れば」
「其の空き地事、自分達の「物」だと宣う輩か?」
一瞬、眼ん玉を丸くする
「何だ其れ?」
到底、「悪魔」とは思えない
比喩表現だが和泉が首を傾げたのは其処ではない
「当たり前だろ?」
自信満満、言い切った
和泉が早速、我が物顔で「道」へと足を踏み入れる
刹那、上総は自身の眼の端に
不穏な「影」を捉えるも最早、他人事だ
心成しか
「痛い目に遭え」とでも語る、青鈍色の眼が無言で見送る
然うして後頭部に衝撃を受けた瞬間、和泉は真っ逆様に落下していく