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7 転生と喚声

 そして、約束の3年が経った。

「いや、誰とも約束してませんよね?っていうか以前に二年くらいって言ってたじゃないですか!何しれっと一年延ばしてるんですか!」

「いやあ、女の子を作る方が断然難しかったのでそこは多めに見てください。それより見てくださいよ、ついに完成したんですから」

 はいはい、と言ってカミ子さんがアバターを覗き込んでくる。

 そこには、理想の美少女が映し出されていた。これなら名だたる異世界転生の先輩達に引けを取らないだろうと思える会心の出来だ。

「髪の毛は金髪にしたんですね」

「最初に、黒髪東洋系か金髪西洋系かで悩んだんですけど、やっぱり女の子に転生するならとことんやってやろうと思って、元の姿からはかけ離れた姿にしました」

「確かに、青い瞳のぱっちりとした目、長いまつげ、小さくて可愛らしい鼻や口など、元のあなたとは似ても似つかない姿ですね。三十歳を過ぎた男性がハアハア言いながら作ったということを知らなければ素直にかわいいと思いますよ」

「ハアハアなんて言ってませーん!それに肉体が死んでるのでずっと29歳のままでーす!あとちなみに、拘ったポイントは後ろにもあるんですよ」

 そう言いながら、アバターを回転させる。

「どこですか?」

「ここですよ、ここ」

 おれはうなじのあたりをアップにする。

「…………?」

「分かりません?この子、パッと見はショートカットというかボブ?なんですが、実は後ろに一房束ねた長い髪が隠れてるんです!こういうの……好きなんですよ」

「…………………そうですか」

 どうやらカミ子さんにおれの好きポイントは伝わらなかったらしい。わっかんねえかあ、そうかあ。

「ちなみにこの服装は?」

「ああ、魔法使いをイメージしてます。ローブっていうんですかね」

 やっぱり異世界の女の子と言ったら魔法使いだろう。ちなみに男なら迷わず剣士。女の子の剣士も捨てがたかったのだが、『くっ、殺せ』的な展開が脳裏をよぎったので無しにした。

「え、やたら丈が長くて、袖がだるんだるんなパーカーじゃないんですかこれ」

「雰囲気ぶち壊しなんですけど!どう見ても立派なローブじゃないですか!ちなみに下はスカートにタイツ!ここは絶対譲れません!」

「そうですか、では姿も決まったことで、ちゃちゃっと転生しますよ」

 そう言うと、カミ子さんは自身の周りにパネルを展開して操作を始めた。もっと俺のココ好きポイントを聞いてほしかったのだが。

「外見を決めるのに時間をかけ過ぎなんですよ!私が上司に何度『まだ?』って言われたと思ってるんですか!」

  まったくもう、と言いながらも操作を続けるカミ子さん。それに伴って俺の足元には三角やら丸、見たことの無い文字を組み合わせた不思議な模様が浮かびあがってきた。いわゆる魔法陣のようなものだろうか。

「本当にこの姿でよろしいですね?よければ――」

  カミ子さんの言葉が終わるよりも早く、おれは最終決定の『はい』を押していた。

  大丈夫、もう迷いはない。

「では、間もなく転生となります。前も言ったようにどんな世界に転生するかは分かりませんが、これはあなたの第二の人生です。どう生きるも自由。後悔の無いように生きてください」

「ありがとうございます。長い間お世話になりました」

  これでこの場所とも、カミ子さんともお別れかと思うと少し寂しくなる。しかし、別れの花は人生という旅路を彩ってくれるはずだ。しんみりするのは無しにしよう。

「本当ですよ。次にここに誰かが来るまでには、制限時間を表す砂時計でも用意しておかないといけませんね」

  話しながら自分の足元を見ると、何やら光が舞っているのが見えた。最初は風に舞う花弁のようだったが、次第にその数を増し、光の渦となって自分の周りを囲い始める。

「さようなら、あなたの人生に幸多からんことを」

  やがてカミ子さんの姿が見えなくなるほどに光の渦が濃くなり、いよいよ転生の時間となったようだ。ここで起きたことが走馬灯のようによみがえってくる。寝て、起きて、転生後の姿を考えて、また寝る、の繰り返し。……大したことしてないな。などと思い出していたその時、

「あ゛!!!」

 突然、カミ子さんの叫び声が聞こえた。……どう考えても、まずいことが起きた時の声にしか聞こえなかったが。

 いや、よく聞くとまだ何か言っているようだ。

「やっばー……でも元はと言えば私のせいじゃないですし……まだ間に合いますかね……あ、大丈夫そう。じゃあえーと、どれにしようかな、女神様の言う通り、と。うん、これでいいでしょう」

「待ったぁぁ!何かを適当に決めてません!?中止!一旦これ中止で!今戻って自分で決めm」



 そこで、おれの意識は途絶えた。

  


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