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4 作成と錯綜

「では、種族は人間でいいとして……見た目も今のままでいいですか?」

「いいわけないです」

 何を言ってるんだこの女神は。せっかく好きな姿になれるというのに、今のさえない姿のまま転生していいわけがない。そんなのは異世界に失礼というものだろう。

 「はあ……では好きなだけ考えてください。満足のいくように」

そう言ってカミ子さんは空間の隅の方に下がっていった。ではお言葉に甘えて、キャラクターメイクの時間と行こう。

 今おれの前には種族:人間としてのキャラクターが映し出されている。顔はおれ自身で、上半身が白のタンクトップに下が水色の短パン。何この初期アバタ―。

 試しにパネルをいじって、最初から登録されている容姿をいくつか見てみる。

 金髪で筋肉質の長身、精悍な顔立ちの青年。

 顔に傷があり鋭い目つきのいかにも歴戦の戦士といった外見の初老の男。

 ピンクの髪で顔つきは女性と見間違えるほどに整った少年。……ただしめちゃめちゃにマッチョ。

「うーん……どれもコレ!って感じにはならないな」

「そうですか?その金髪のアバタ―とか人気ですよ?✝煌・シュヴァルツ・闇斬✝って名前で過去に作られたものなんですけど」

「だっっっっっせえええ!!!!」

 なんだその中二感しかないキャラクター。ってか✝って自己紹介の時にどうするんだよ。しかもどうせあれだ、チートスキルとか装備とか持たせようとしたんだろうな。欲望丸出しもいいところだ。これだからオタクってやつは困る。

 とりあえず登録された姿は当てにしないことにする。

「ま、地道にやっていきますかね」

「楽しそうですね」

「そりゃあわくわくしますよ。自分の姿かたちを好きに決められる機会なんてそうそうあるもんじゃないですし。まあ見ててくださいよ。きっと満足いくものにしてみせますから」

「はいはい、楽しみにしてますね」



……そうして、時間が経った。

具体的には、1年くらい。


「いや、経ちすぎでしょう!どれだけ考えてるんですかあなたは!」

「いや、まだです……まだまだ満足出来るものじゃない」

 そう言って作りかけていたアバタ―を消去する。もうどれだけのアバタ―を作っては消し作っては消ししてきただろうか……100を超えた辺りから数えるのは辞めた。最初の内は完成する度に満足感や達成感を覚えていたが、今はもう何も感じない。ただ、「何か違う」「あれ、前に作ったやつの方がよかったんじゃね?」「なんか見たことある気がする……」といった感想しか出てこない。完全にどツボにはまっている気がする。 

「もうどーでもいいじゃないですか姿なんて。どーせ誰もあなたの容姿なんて気にしませんよ」

 もうカミ子さんの対応も適当になってきている。

「なんか昔に買ったゲームを思い出しました……」

「ゲーム?」

「ええ。友達と一緒に買ったんですけどね。最初に主人公の容姿を決めて狩りをして素材を集めて武器や防具を作るっていう」

「なるほど」

「で、買って一週間後に集まって皆でやろうぜってなったんですよ。友達が『おれ○○倒したぜー』とか『おれあの装備作ったぜー』とか言ってる中、おれ一人だけまだキャラメイクから進めてなくて、友達からめっちゃひかれるっていう」

「それは当然ですよ!一週間も何やってたんだって話ですよ」

 ちなみにその後クラスでオシャレマスター(笑)とか言われた。……なんかここに来てからトラウマを抉られること多くない?

「そんなことより今ですよ今!一年間も何やってたんですか!」

「一年間真面目に考え続けてきましたよ。それでも納得いかないんですからしょうがないじゃないですか!カミ子さんだって言いましたよね?好きなだけ、満足いくように考えてくださいって」

「あれは決まり文句みたいなものですよ。まさかこんなに長くなるなんて思いもしませんでしたよ!」

「いやー自分でもびっくりしています。おれ、このキャラメイクが終わったら『今回は難産でした』って言うんだ……」

「なにクリエイタ―気取りみたいなこと言ってるんですか!まだ何もしてないんですから今回はも何もないでしょ!そういうのはちゃんと作り終わった人が言える言葉です!真面目に考えないと女神権限でシュヴァルツに決定しますよ!」

 勝手に決められてはたまらないので、またキャラクターメイクに没頭する事にした。作り、修正し、消す。また作り、一晩寝かし、修正し、消す。


そしてまた、時間は過ぎていく。


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