3 転生と種族
「童貞に優しい神様っているんですね……オタクに優しいギャルなんていないってことに絶望せずに生きてきてよかった……もう死んでるけど」
「ええ、どういうわけかうちの上司はそういう所に寛大というか甘いというか……それでどうしますか?権利を与えるという事にはなりましたが、選ぶのはあなた自身です。第二の人生を始めるもよし、このまま潔く童貞のまま消えるもよし、です」
「ちなみに第二の人生ってどうなるんですか?おれの人生をもう一度やり直すってことですか?」
童貞を捨てるために延々と同じ時間をループするとかないよね?何それこわい。
「いいえ、記憶を持った状態で今の世界に戻ることは出来ません。それは世界に無用な混乱を招きますから」
確かにそれもそうだ。死ぬまでの記憶をある程度持っていれば色々出来るだろう。具体的には……まあ色々と。
「なので、道は二つです。記憶をなくして今の世界に新しい命として誕生するか、異世界に転生するかです」
異 世 界 転 生。
夢にまで見たその五文字をまさか自分が体験する機会が得られるとは。
一応二択にはなっているが、迷う余地はない。記憶を持っていないのであれば、それはもうおれの人生とは言えないだろう。元の世界からはすっぱり退場して、人生そのものをステップアップと行こう。
「では、新しい命として別の世界に転生する、でよろしいですね?」
「はい、ちなみに異世界転生につきまして、何か特典みたいなものはありますか?元の世界の物を一つ持って行けるとか、何かすごい能力とか武器を持って行けるとか」
「いえ、上司の方から、『テンプレ過ぎて飽きた』『はいはいよく見るやつ』、と言われていますので、今回はそういったオプションは付けません」
「なんですかそのオタクのレビューみたいのは……」
あとオプションとかいうと急に現実的になるというかファンタジー感が薄れる。目の前にいるのが女神的な存在だという事を忘れそうだ。
「まあしいて特典と言えば、転生する姿を選べるということですかね」
「姿を?」
「分かりやすく言うと、キャラクターメイクですかね。転生する種族から見た目まで、細かく決められます」
マジか。昨今では自分の意思とは関係なく転生先が妙な種族であることも多い中、自分で決められるなんて自分は相当幸運なのでは?
「それでは、さっそく決めていきましょう」
カミ子さんがそう言うと、自分の周りにいくつかの光るパネルのようなものが浮かび上がった。
「そのパネルを操作して、種族、性別、年齢、身長、体重、筋肉量などを決めてください」
それを聞いて、浮かぶパネルの一枚に指を伸ばす。触れると確かに感触があり、タッチパネルの要領で操作できるようだ。ありがたいことに全て日本語で書かれてあり、今カミ子さんが言った以上の項目が事細かく設定できるようになっている。
試しに種族の欄を見ていると、人間、亜人(人狼や竜人、アンデッドなど)、人外(ドラゴンやスライム、機械生命体など)など、ここだけでも多種多様すぎて目が回りそうだ。
「これ……選択肢多すぎないですか?」
「昔、勝手に転生先を決めてクレームが来たことが多数あったらしくて。じゃあ本人に決めてもらおうとしたらあの種族はないのか、このモンスターに転生したい、という希望を叶えていたらすごい種類になったらしいです」
「うわあー……神様達も大変なんですね」
これが本当のモンスタークレーマー、なんちゃって。
「あと、ここで選択出来る種族は全て転生先の世界に存在する種族になっています。自分の種族で迷った時の救済措置のようなものですね。自分が選ばなかった種族と転生先で出会えるかもしれない、と」
「ドラゴンとかもいるってことですか?」
「はい、世界の環境や状況などは詳しく分かりませんが、存在することは確かです」
まだ見たこともないような種族がたくさんいる世界、か……
少し考えてから
「じゃあ、種族は人間でいいかな」
「人間ですか?どうして?」
少し驚いたようにカミ子さんが聞いてくる。意外だったのだろうか。
「んー、まあ何だかんだで生まれ変わっても人間として生きていきたいというか……例えば、ドラゴンになった自分とスライムの関係性って全く想像がつかないんですよ。見たこともないような生き物がたくさんいる世界なら、人間の自分として出会って行きたいと思うんです。長くはない人生でしたけど、人間として生きてきたことを無駄にはしたくないんです」
「なるほど……いいと思いますよ、その考え」
ということで、転生先の種族は人間に決定した。