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14 勝利と名前

 自分の持っている天給に関して、一つの可能性を考えてみる。まず今までの事で分かるのは、自分は攻撃に特化した能力ではなく、防御型だったということだ。無効化、キャンセラー、絶対防御。言い方によってはすごくかっこいいじゃないか。

 そして、それらの防御の力はどうにかして攻撃に転化することが出来ることが多い。ということは、自分の天給もどうにかして攻撃に使えるかもしれない。

 試しに、呪いが破られたことが信じられない様子の兄貴に詰め寄り、右の拳を放ってみた。

 不意を突かれたのか、相手は避けることも出来ず拳は左ほほにクリーンヒット。さっき呪いを無効化した右手だ。自分の予想が正しければ、何かしらの反応が―

「………………………」

「………………………何だこのパンチは。ハエが止まったのかと思ったぜ。とでも言いたげな顔ですね?」

<自分で言っちゃうんですかそれ!?>

 だって本当に何ともなさそうだし。うーん、どうやら攻撃力は本当に皆無らしい。戦闘力たったの5、ただのゴミって感じだ。

 とはいえ、相手は動揺している。この機会を逃す手はないだろう。

「まあ、私の真価は腕力ではない。さっき呪いを無効化しただろう?私は、呪いを自分に溜め込み、それを自分の力に変えて触れた相手に移すことが出来るんだよ。つまり、呪いの力が今どこにあるか……分かるよね?」

 「……っ!」

 兄貴の顔色が変わったのを見逃さずに、さらに追い打ちをかける。

「さーて、この呪いは何だったかな?相手に命令して、それに背くようなら体に激痛が、だっけ?さっそく試してみようかねえ?」

「ま……待て!待ってくれ!俺達は命令されただけだ!許してくれ!」

「いかにも悪党らしい台詞だねえ。それじゃあ……あんたらに命令したやつはどこにいるか教えて、とっとと手下もまとめてこの町から出て行きな!」

「は、はい!俺達のお頭は、ガラマ山にある洞窟にいます!そこに連れ去った娘達も全員います!……おいお前ら!引き上げだ!お頭の所に戻るぞ!」

 兄貴はさすがの統率力で、手下達を引き連れてあっという間に町から出て行った。とりあえず、今回の危機は去ったと見ていいだろう。

 しばらくは連中が去った方向を見ていたが、

「あ……あの、あんた……」

 後ろから掛けられた村長さんの声で

「っっぶはあ!!」

 張りつめていた物が切れたかのように、大きく息を吐き出す。数回大きく息を吸って、吐く。額には汗が吹き出し、手はかすかに震えている。

 勢いとハッタリだけで何とかなったが、武装した男達の前に出て行って止めるなんて、自分ながらどうかしている。

だが、助けることが出来た。

漫画やアニメの主人公の様に、かっこよく剣や魔法で戦ったわけではない。ただ、前世で読んだマンガに出てきた台詞で脅して追い払っただけだ。


かっこいい主人公なら、ここでクールな笑みを浮かべて、その近くにはヒロインの美少女がいることだろう。

しかし、今の自分は緊張からか笑みもぎこちなく、せっかくの美少女が台無しになっている。

おまけに、傍らには安堵か喜びか、うっすらと涙を浮かべる老人(村長)。

 まったく、異世界転生の先輩方を見習いたい。少しでもそのかっこよさと強さを分けてほしいものだ。

<そうですか?結構かっこよかったですよ?前世でのあなたでは考えられないくらいに>

「いやまあ、それは転生してテンションあがっていたというかアドレナリンが全開だったというか……何とかしたいと思っただけですよ、自分なりに」

<それでいいと思いますよ、方法なんて関係ありません。誇っていい、あなたの勝利です。その証拠に、ほら>

カミ子さんの言葉を証明するかのように、

「ありがとう……本当に、ありがとう……」

 村長さんは泣きながら感謝の言葉を述べていた。

「あ、いえ、どういたして、あ、はい」

 冷静になったせいが、語彙力が死んでいた。陰キャは感謝されるとどう返していいか分からないのだ。

「とりあえず、どこか座って休ませてもらっていいですか。あと、水を一杯もらえると嬉しいです」

「おお、お安いご用です。さあさあこっちへ。これと言って何もない町ですが、どうぞゆっくりしていってください」

 村長さんの後についていく最中も、町の人から感謝の言葉を投げかけられた。どうやらさっきの出来事はもう町中に広まっているらしい。なんだかむず痒い。

「そういえば、まだ名前を聞いていませんでしたな。旅の魔法使いとおっしゃっていましたが」

 そうだった。この町に来てから色々あって、まだ誰にも名乗っていなかった。陰キャは自己紹介のタイミングを掴むのが苦手なのだ。

 自分の見た目と並行して考え、悩み、決めた名前を名乗る。



「私の名前はアイシャ。アイシャ・アインスです」


 



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