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13 呪いと健康

<それにしても意外ですね。あなたはもっと事なかれ主義というか、こういう事にはあまり関わらないと思っていました>

「だってしょうがないじゃないですか、せっかく女の子と仲良くなるために異世界転生したのに、その女の子が連れ去られてるんですよ?それは何とかしなくちゃいけないでしょう」

<それは正義のために、ですか?>

「うーん、そもそもこの世界で何が正義かなんて分からないですしね。とりあえずさっきのおばあちゃんやこの町の人は悲しそうだったし、私は女の子と仲良くしたい、何ならイチャイチャしたい。まずはそっちをなんとかする方向で行きます」

<あなたの欲望は自分の内で処理してくださいよ。それより、何とかすると言いましたが、方法はあるんですか?相手は武装した男が多数ですよ?>

 それに関しては考えがある。今までの経験などを踏まえると、成功の公算は高いはずだ。

 そうしている内に、村の中心らしい広場に出る。さっきの聞こえてきた悲鳴と騒ぎの中心はここからのようだ。

 そこには、例の武装した集団と、それに詰め寄られている老人の姿があった。

「だから、何度も言っておるだろう……!もうこの村には若い娘はおらんと!全員お主らが連れて行ったのだからな!」

「そんなこと言って、どこかに隠してるんじゃねえのか?地下とか屋根裏部屋とかもあるんだろ?。俺達のお頭はもっと連れてこいと言っていてなあ……お頭が本気で怒る前に差し出した方が身のためだぜ、村長さん?」 

 怯えながらも毅然と言い返す村長と、下卑た笑みを浮かべながら詰め寄る男。疑うべくもなく、これは止めなければいけない事態だ。

「それに、お前たち全員に着けられた呪いの首輪の事を忘れたのか?おれがその気になれば、お前ら全員……どうなるか分かるよなあ?まずは、あんたの家族からやってもいいんだぜ?」

「くっ……本当に、もう誰もいないんだ。頼む、信じてくれ……」

「やれやれ、しょうがねえ。おいお前ら、周りをくまなく探せ!どこかに隠れてるかもしれないからな!」

「「了解だぜ、兄貴!」」

 兄貴とやらの命令で、散っていこうとする手下達。

 そこに―

「待っっっっったぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

 広場中に、いや、おそらく村中に響いた大音声。こんなに大きな声を出したのは久しぶりだ。その声の元、つまり自分に広場の全員の視線が集まる。おそらく、転生以前の自分ならここで逃げ出していただろう。というか、そもそもこんな行動に出てはいない。

「おお、いるじゃねえか。しかも飛び切りの上玉だ。こりゃあお頭も喜ぶぜ」

男の注意が町長から自分に移る。

「私は通りすがりの旅の魔法使い!どんな事情があるかは知らないけど、女の子を誘拐なんて、天が許しても私が許さない!とっととこの村から出ていきなさい!」

<いつから魔法使いになったんですか、あなたは>

「約30年童貞だったんだから、魔法使い名乗ってもいいでしょ。前世ではたまに賢者になっていた時間もありましたし」

<それはただの都市伝説というかオタクの妄想ですよね!?で、どうすんですか?男が近付いて来てますよ>

「出ていけだぁ?まあいいだろう。出て行ってもいいぜ。ただし、お前も一緒にな。お頭の所に来てもらおうか。大人しくしていたら、痛い目には合わせないからな」

 絵に描いたような悪党のセリフを吐く兄貴。まさかこの世界でのデートの誘い文句というわけでもないだろう。

「大人しくするのは……そっちの方だよ!」

 そう言って、勢いよく右手を突きだし、左手で手首を掴む。全身に流れる力を感じ取り、手のひらに集めるように意識を集中する。

 あとは、決めの一声!

「くらえ……アクアティックウォーター!!」

 うぉーたー!……うぉーたー……たー……

 広場にエコーを伴って響き渡る声。一瞬、時が止まったかの様に、誰も動かない、喋らない。

<……………………何をやってるんですかあなたは>

 沈黙を破ったのはカミ子さんだった。周りの人には聞こえてないんだけど。

「いや、異世界に来た段階では何の力にも目覚めなかったので、私はピンチになったら覚醒するタイプだったのかなーと思ったんですけど、違ったみたいですね」

<しかも何ですかアクアティックウォーターって。水の水じゃないですか。語彙力貧弱すぎるでしょう>

「……あの、もういいのか?」

 気を使われたのか、兄貴が聞いていた。

「あ、はい大丈夫です」

「と、とにかく余計な真似をされたら面倒だ。お前にもこの呪いの首輪を着けさせてもらうぜ!」

 言うが早いか、兄貴は腰に下げた袋から首輪を取り出してこっちに駈け出してきた。

 呪いの首輪……どんなものかは分からないが、さっき村長さんが脅されていたことからも良くないものであることは間違いないだろう。魔法が使えない以上、相手の動きをよく見て―

「よし、これでこいつも完了だ」

 秒で捕まって。首輪を着けられていた。

<魔法も使えない、身体能力も普通かそれ以下。あなた何をしに異世界に来たんですか。何のためにこの村に来たんですか。何がしたくて首を突っ込んできたんですか>

「全否定やめてくれません!?だってしょうがないじゃないですか!相手けっこう速かったし、あの首輪、近付けられただけで勝手に首に巻きついて来たんですけど!」

「へっへっへ。これでお前は俺達の言うとおりにするしかねえぜ。その首輪にはお頭の呪いの力が籠められているからな。俺達の命令に逆らえば、体に激痛が走るって寸法よ」

 それはまずい、とにかく、この首輪を外さないと―

「無駄だ無駄だ!お頭は毒と呪いを司る存在だぞ、そんなに簡単に外れるわけが―」

「外れたよ?」

「ええええええ!!!???いったいどうやって!?」

「いや、何というか、普通に外れたというか……」

 首輪は細い植物の蔓を編んだようなものだったが、指をかけて引っ張ったら急に枯れて千切れ、外れてしまった。

「ば、馬鹿な……今までこんなことは一度も……」

 そこで、ふと昨日のカミ子さんとの会話を思い出す。

 自分に与えられた天給。それは【健康】。どんな時でも健康でいられるものだと。

そして、この首輪は毒とか呪いの力で作られたと言っていた。つまり、その力に自分の【健康】が打ち勝ったという事だろうか。

 まだ自分の力がどんなものかは分からない。でも、


「なんか……いけそうな気がしてきた!!」



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