11 追跡と闇落
「う~~~~~~~~~~ん」
〈どうしました、そんなに唸って。トイレにでも行きたいんですか?それなら奥の茂みの方でするといいですよ〉
「違いますよ。あの集団について考えてるんです。それに知らないんですか?美少女はうんこなんてしません。まして茂みでなんて」
〈別にう……大きい方なんて言ってませんよ!それで、あの集団について何かわかったんですか?〉
あの連中を尾行し始めて早1時間程は経っただろうか。今自分達がいるのは、さっきまでいた丘の間の道を進んだ先の森の中だ。樹が生い茂ってはいるが、あちこちに人間の手が入った痕跡があり、前を進む男達の足取りも怯えている様子はない。人里も近く、恐らく危険はないと思われる。
ちなみに、時々男達の会話が聞こえてくるのだが、幸いなことに理解が出来た。日本語を話しているのか、それとも異世界語だが何らかの不思議パワーで自分が理解出来るようになっているのかは不明だが、異世界において会話でコミュニケーションを取れると分かったのは大きな進歩だ。
ま、言語が理解出来るからといって、会話が出来るとは限らないんですけどねー。前世での陰キャコミュ障っぷりがいい例だ。
「いやー、どう考えても悪い人たちにしか思えないんですよね。『お頭の命令が~」とか、『今度の標的は~』とか言ってるんですよ?これはどう考えてもクロ確定でしょ』
まあもともと半信半疑どころか二信八疑……いや一信九疑ぐらいだったが。
<それじゃあどうするんですか?かっこよくあの集団の前に飛び出して問いただし、場合によっては成敗ですか?>
いや、それはどう考えても無理だ。相手は武装した集団。こっちは魔法も使えないただの非力美少女だ(道すがら腕力の方も試してみたが見た目相応といった感じだった)。
となると、残された道は一つしかない。
「あの連中より先に村に着いて、そこの人に危険を知らせるっていうのが一番現実的ですね」
〈ずいぶん消極的ですね。せっかく異世界に来たんですから、少しくらい無茶でもしてみたらどうですか?〉
「一回緊張で死んだ自分ですよ?無理してまた死んじゃったらどうするんですか。とにかく、どこかであの連中を追い抜かして……」
などと話していると、連中の足が止まった。尾行しているのがバレたのかと一瞬ヒヤリとしたが、どうやらそうではないらしい。
連中は荷物や武器を下ろし、起こした火を囲んで車座になってそれぞれ食事や酒のようなものを楽しみ始めた。
どうやら、今日の進行はここまでらしい。時計がないので正確な時間は分からないが、確かにもう大分夜も更けているはずだ。明日の為に、今日はここで休息をとるということだろう。
ということは、これはチャンスなのでは?この森は人が出入りしている形跡があり、人が通れる道もはっきり分かる。なんとなくの方角もわかるし、男達に着いていかなくてもこの先にある町には辿り着けるはずだ。
そうと決まれば話は早い。道から離れ、男達を迂回して森を突っ切って先を目指す。しばらくしてから元の道に戻れば男達に気付かれることもないだろう。
「どうですか、この頭脳プレイは?町を救った勇者と呼ばれてもいいんじゃないですか?」
〈やってることは尾行、盗み聞き、覗き見……ただのコソ泥みたいですけどね〉
「ひっろい言い様ですね。こういう地道なこてょが、後々に意味をなしゅて……あれぇ?」
なんだろう、突然上手く喋れなく……と思ったら、視界がぼやけ始めた。……世界が回る……いや、自分がふらついているだけか。
……何だこれは、と思っている内に立っていられなくなる。膝をつき、地面に倒れ込む。目蓋が重い。必死に開けようとするが、自分の物ではない様に閉じようとし、抗えない。
「だめ……こんな、ところで。先に……行か、なきゃ」
そう言葉を発したのを最後に、意識は闇の中へと落ちて行った。




