やりたいこと2
旅開始初日
まずは近くにあるエルフの里に行ってみることにした
精霊や妖精と仲のいい、むしろ妖精に近しい種族のエルフなら、私をすんなり受け入れてくれると思う
今まで精霊と妖精のハーフは生まれたことがなかった
人間とのハーフやエルフとのハーフなんて言う人はいたらしいけど、私は世界でもかなり珍しいみたい
お父さんとお母さんは愛し合ってるし、妖精も精霊も私のことを祝福してくれて愛してくれてるのは分かってる
でも世界で異質な私は、家族以外に受け入れられるのかしら?
奴隷だったころを思い出してまた体が震える
体の傷は綺麗に治っても、心の傷はまったくほとんど癒えていなかった
そんな状態の私を送り出すことにお父さんもお母さんも最初は渋ってたけど、この旅は私がどうしてもやりたい事だった
そういえば奴隷時代にエルフの女の子が別の貴族に買われていったのを見た。あの子も震えていたけど、大丈夫なのかな?
買っていった貴族はかなり高齢のおじいさんだった
それ以上私に分かるはずもない。でも助けられるなら助けてあげたい
とりあえずエルフに攫われた人がいないか聞き込みから開始しよう
でも私、人と話せるのかな?
正直に言うと言葉を出すのは苦手で、人と話すのは怖い
「大丈夫ですよセラ様。情報集めや交渉は私達が行います。お任せください」
「そ、そうです。セラ様は私達が守りますから」
「ありがとうエリアさん、シャルさん」
「ああ、どうぞセラ様、私達にさん付けはおやめください。私達はあなたの付き人です」
「で、でも。お二人は、その、年上ですし・・・。それに、私、子供です、から」
「・・・。分かりました。さん付けで大丈夫です」
「え、でもエリア。私達はセラ様の」
「シャル、セラ様はまだ心が回復していません。無理強いしては駄目です」
私に配慮してそれ以上は何も言わないエリアさん。少し安心した
この二人は本当に私を大切に、第一に思ってくれてる
だからこそこの人たちに報いたい
「じょ、情報を聞くの、任せてください。私も、このままじゃ、だめ、です」
「承知いたしました」
エリアさんは優しく微笑んだ
「ですが、無理だと判断した場合私にお任せいただけますか?」
「は、はい!」
エルフのいる里は精霊や妖精が住む森の中にあって、森の出口に近い所らしい
他の人族との交流もあるみたいで、一応エルフと人間は同盟を結んでいて、エルフは奴隷にしないという協定が結ばれている
それにもかかわらず私が売られたあの奴隷商のような裏での売買はされているみたい
それと一応犯罪奴隷なんていうのもあるらしいから、そう言う悪い人たちを解放する気はない
「セラ様、ここからがエルフの領域です。私達精霊や妖精は出入りが自由ですが、人間などの人族は結界で弾かれるようになっています」
その領域の境界あたりに確かに薄い膜のようなものが見えた
魔法でこの結界を張っているみたい
私は恐る恐るその膜に手を入れてみた
すんなり入れる。ちょっとホッとした
二人について私はその結界をくぐった
「もう来たようですね」
エリアさんが木の上の方を見ていると、私達の前に軽装の人達が着地してきた
ものすごくきれいな人たち。これが、エルフ・・・
「精霊様、妖精の方、ようこそお越しくださいました」
真ん中にいた綺麗なお兄さんが歓迎の意を表してくれる
「お久しぶりですマール。本日は話が合って伺いました」
「エリア様、お久しぶりです。王はお元気でしょうか?」
「ええ、元気すぎるほどに」
「それはよかった。してそちらのお嬢様は・・・。もしや!」
「はい、この方こそ、我々の宝珠、世界の宝であらせられるセラ様、精霊王と妖精女王のお子様です」
「「おおお!!」」
エルフたちから歓声が上がった
「良かった。こんなに元気になって!」
エルフたちをかき分けて女性のエルフが私をギュッと抱きしめた
「え、えっと」
「あら覚えていないの? 私があなたを見つけたのよ」
その人の装飾品を見るに、エルフでも位が高い人?
「私はエルフの女王リエンナ。妖精女王とは親友なの」
リエンナさんは、私の命の恩人だった