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自分の正体3

 鏡をみていると、お父さんがまたどこかへと飛んだ

 今度は私が買われ、いいように使われ、さらに虐待されて手足を切り落とされた貴族の家

 お父さんはその家に突然乗り込むと、護衛をすべて動けないよう魔法で抑え込んで、貴族の親子を目の前に無理やり膝ま付かせた

「な、何をするこの無礼者! わしはザンド伯爵家当主だぞ!」

「父様、早くこの男を殺して下さい! 苦しいです!」

 貴族の親子にお父さんは静かに怒っていた

「お前たちは私の大切な娘を傷つけた。お前たちには二つの選択肢を与えよう。今ここで死ぬか、改心して民を思う貴族になるかだ」

「はっ! 何を馬鹿なことを。民など貴族を豊かにする道具でしかない!」

「ふむ、では死んでもらおう。お前たち人間が誰を怒らせたのか、その身に刻んで恐怖と共に死ぬがいい」

「なっ!」

 お父さんは私のために怒っていた

 貴族の親子に手を翳すと、二人はコテンとその場に倒れた

 死んではいないみたい。でも魂を抜かれた様に目が虚ろで涎を垂らしてる

 それが終わってからお父さんは鏡の映像から忽然と姿を消した

「待たせたね愛しい子」

「おとう、さん?」

 お父さんは突然目の前に現れた

「これは転移という魔法だ。愛しい子、君も使えるようになるよ」

 お父さんは私の頭を撫でてそういった

 まだこの二人に対してどんな顔をしていいのか分からない

 それに私の体は自分でも驚くほど美しくなっていて、以前の短い手足じゃなくなったためか、動かしにくかった

「ゆっくりでいい。君には寿命がない。私達とゆっくり色々覚えて行けばいいんだ」

「ええ、まずはそうね、あなたの名前を。あなたの言っていた優しい人間の夫婦はあなたをどう呼んでいたのですか?」

「私、は・・・。セラって、呼ばれてました」

「セラ、いい名前じゃないか。では愛しい子、君は今日からセラだ」

「ええ、セラ、さあこちらにおいでなさい」

 お母さんとお父さんが私に向けて手を広げてくれる

 私を拾ってくれた人間の夫婦と同じような温かい感じ

 私はゆっくりと近づいて、その腕の中に納まった

「ああ、ようやくこの手に娘を抱けた。この十年、長かった」

 お母さんは涙をポロポロと流して私を強く抱きしめた

「さぁではこの国を案内しよう。エスカ」

「はいここに!」

 エスカと呼ばれた突然現れた妖精のお姉さん。彼女が私を案内してくれるらしい

「王女様、こちらへ」

 エスカはメイド服を着ている綺麗な妖精で、切れ長の目にブルーホワイトの瞳と髪の色。髪型は肩までのショートカットで、眼鏡をかけてる

 羽はトンボのような羽で、背の高さは私よりも高い。とは言っても私は小さいから、ピクシーやドクシーといった妖精以外はみんな私より大きいのだけれど

 城を出ると(私のいた場所は精霊と妖精が一緒に住むための城だった)最初に案内されたのは妖精たちが飛ぶ花畑だった

「ここはテュルリスの花畑。遥かな昔花の妖精にして最高位の冒険者でもあったテュルリスが作り上げた花の楽園です」

 目を奪われるような美しい光景で、私はそれをじっくりと目に焼き付けた

「ご満足いただけましたか?」

「は、はい、すごく」

 私は今までこんなにきれいな景色を見たことがない

 五歳までは育ての両親に愛されていたものの村から出たことはなかったし、その後の五年間は奴隷として酷い生活を送っていた

 自然と涙がぼれる

「あ、あれ?」

「大丈夫セラ!?」

 お母さんが心配そうに私を抱え上げてくれた

「だ、大丈夫ですお母さん。これは、なんだか、幸せすぎて」

「いいの、いいのよ。こんな幸せならこの先いくらでも味合わせてあげるわ」

「王女様、これを」

 エスカが私の頭に花の冠を乗せてくれた

「綺麗・・・。それにいい匂い」

 今までこんな女の子らしいことはしてこなかった

 それに嬉しくなった私は、花畑にいる妖精たちに花冠の作り方を教わって作ってみる

 以前の短い手足のせいで不器用化と思ってたけど、一度教わったことはスラスラできた

 これって私が羽化したことと関係あるのかな?

「さすがです王女様、では次はこちらを」

 妖精たちが私の周りに集まってきて、花を使った細工を色々教えてくれた

 こんな小さなことがすごく幸せに感じる

 妖精も精霊もみんなが私を祝福してくれてる

 幸せだなぁ・・・

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