2話 ハロウィンの力
創作意欲がなくなりません。
格好つけないで言うと勉強がしたくありません。
またプロットすっとばして書きました。
まだ続くかもしれませんので、
あたたかい目でどうぞよしなに。
海からの潮風にあたる瀬海高校の校舎はやや錆び付いている。
そんな校舎の3階中央にある2年1組の教室は昼休みになり、なにやら賑やかな様子。
「はぁ……私はあなたが羨ましいわ……。」
皿籠の青い瞳が嫉妬の視線を向けたのは、前の席でコウモリのような眼鏡をかけたクラスメートからお菓子を貰う桜色のポニーテールの上に猫耳を着けた愛道だった。
「……え?私にもくれるの?あ、ありがとう。私からはこのチョコでいいかしら?」
コウモリの眼鏡をかけたクラスメートはもちろんよ、と皿籠からチョコを受け取りまた別の席の子へお菓子を渡しにいった。
「悠深子ちゃんも楽しめそうで何よりです。」
「あれは気を遣ってくれただけよ。あなたのついでに過ぎないわ。真一花ちゃん。」
「た、確かに……悠深子ちゃんの私を見る目には、いささか殺気じみたものがありましたので……。でも、お菓子を渡してくれたのは決してついでなんかじゃないと思いますよ。」
「そう……かしら?それなら、よかったわ。この“プチハロウィンパーティー”も案外捨てたものじゃないわね。」
「それは良かったです。では、仮装、しましょうよ!どれがいいですか?」
「!?……それは一体、何の仮装衣装かしら?」
「これは小悪魔風のペンギンをイメージして自作してみました!力作です!他にも、黄金の剣を携えたカグヤ姫に、バニーガールチックな東京タワーに、ケーキづくりのブラックホール……。」
「あの、全くもってさっぱり何を言っているのか分からないわ。」
「ごめんなさい!早口で紹介してしまいました。まず、この衣装はですね……。」
「そうじゃないわ、あのね……いえ、話を遮ってしまったわね。続けて。」
「?……そうですか、では、改めて!この衣装は袖の部分がですね──。やはり、ここの縫い目は緊張しました──。ちなみに、このデザインはですね──。──という仕上がりになったわけです!」
「そう、とても頑張ったのね。どれも素晴らしい出来上がりだと思うわ。」
「着てくれますか?」
「……。か、考えておくわね。」
「そうですか、わかりました!いつでも用意しておきますからね!」
「ありがとう。私に衣装をつくってくれて感謝するわ。」
「着ている所を思い浮かべたらつくってただけで楽しかったのです。ですが、そう言っていただけると頑張った甲斐があります。」
「そうね。いつか必ず着るわ。……ところで、私たちの横でさっきから盗撮をしているこの方は?」
皿籠の隣の席に座り、スマホでパシャパシャと写真を撮っている生徒がいた。
「あなたの席はここじゃないわよね。それと、スマホで写真を撮っているのになぜ首からデジカメを提げているの?」
「勝手に人物を撮影するのは、撮られている側としては気分の良いことではありませんよ。銀鏡さん。」
二人から至極真っ当な指摘を受けた女子生徒は、二人の方向にしっかり向き直りスマホを制服の胸ポケットにしまった。
そして、まずこう言った。
「ごめんなさいっす!!!!二人が会話してる画がとっても美しかったんっす!思わず写真を撮ってしまうほどにぃ!あとこの席は視力の関係で交換してほしいと言われたからでぇ!ちゃんと私の席っすよ!」
灰色、というより銀に近い色の髪を小さめのおさげにしていて、それをブンブンと縦に振るカメラの少女。
前髪を編み込み小さな銀色のキューブのヘアピンで留めていて、大きく透き通る黒の瞳も相まってまるでそのヘアピンはカメラのシャッターボタンのようにも見える。
「もし、気を悪くなされたのならぁ!消しますっす!写真!全部ぅ!だから殺さないでぇ!」
「いえ、殺さないわよ。でも、ごめんなさいね。席替えをしたばかりだったから。隣がどんな生徒だったのか把握できていなかったのよ。」
「優しい顔で言わないでぇ!昨日、自己紹介したっすよぉ!」
「そ、そういえば。そんな会話してたような……気がするわ。実は、しっかり聞いていなかったわね。」
「悠深子ちゃんはたまに適当ですよね。」
「というか同じクラスっす!愛道さん!愛道さんはさすがにぃ!覚えてるっすよね?私のことぉ!」
「はい、もちろんです。銀鏡 透さん。写真部に所属されていて、賞をとった経歴もあるとお聞きしました。……あれ?そういえば銀鏡さんは、仮装なさらないのですか?」
「良かった……覚えてくれてたっすねぇ。仮装はしてるっす。ほら。」
銀鏡はそう言いながら制服の袖をまくって腕を見せた。
白く細い腕には、とげとげした装飾のついたリストバンドが通されていた。
「これっすよぉ。自分が怪人になれることを周りには秘密にしている主人公の怪人になりかけている腕っす。」
「なるほど。それは素晴らしいアイデアです!」
「少し地味じゃないかしら?カメラの着ぐるみとかの方がインパクトがあるわね。」
「喜びと絶望を同時に与えないでほしいっす!二人とも正直者っすねぇ。……もう一度聞くっすけどぉ。写真はどうするっすかね?」
「そうね。写真見せてくれないかしら?」
「私も銀鏡さんの撮った写真が見てみたいです!」
「もちろんっすよぉ!……反省はしてるっすよ……。ただ自分の撮った写真を見てくれるのは嬉しいっすぅ!」
銀鏡はスマホを胸ポケットから出し、写真を見せた。
そこには、窓の外の青空をバックに、七色に表情を変えながら身振り手振りをする愛道とそれをうんうんっと相槌を打ちながら愛道の話を聞く皿籠が写っていた。
「皿籠さんは愛道さんの話はしっかり聞くっすねぇ。」
「覚えていなかったのは悪かったわ。……ん?10枚くらいだと思っていたけどもっと多いわね。銀鏡、さん、何枚くらい撮ったのかしら?」
「そうっすねぇ。ざっと40枚ほど撮らせてもらったっす!」
「そんなに撮っていたんですか!?失礼ながらほぼ同じ写真なのでもう少し減らしてはいかがですか?……どうも恥ずかしいので……。」
「同じに見えるっすかぁ!違うじゃないすか!消しませんっす……と言いたい所っすけど。実は、残すべき1枚が決まっているっす。……これっすぅ!」
「やっぱり他と同じに見えるわね。どうして、これなのかしら?」
「窓の外の雲っすぅ!二人の間の雲がハートになってるっす!そして何より二人の表情が一番輝いて見える写真っすぅ!」
「あっ!本当です!私たちの間の雲がハートの形になっていますよ、悠深子ちゃん!こんな写真が撮れるなんてすごいですよ、銀鏡さん!」
「そうね。トランプのマークで見るような綺麗なハートの形だわ。専門家じゃないからそれらしい感想が出ないけれど、つい見入ってしまうような魅力があると思うわ。」
「二人ともありがとうございますっすぅ!撮影者冥利に尽きるっすねぇ。褒められるとうれしいっすぅ!」
「あ!勝手に見つけてしまってすみません。こっちは今日の他の皆さんの写真ですか?」
愛道が指さした写真は、クラスの男女数人が集まってカメラ目線に笑顔を見せている写真だった。
各々の仮装をして、様々なポーズをしている。
「やっぱりプロみたいです。……え?この右奥の方……透けてるように見えませんか?……仮装ですよね?」
「どれどれ……わっ!ホントにぃ!後ろの人達が透けて見えちゃってるっす!」
「これはそもそも生身の人なのかしら?半透明のパネルという可能性は。」
「皿籠さん、それっすよぉ!きっとぉ!」
「あっでも、左にいる女の子の腕が貫通してます。あらかじめパネルに穴を開けていたのでしょうか?この方たちの写真は他にありますか?」
「あ、あるっす……。見たくないっすぅ!でも気になるぅ!……えいっ!」
銀鏡は、怖いもの見たさの思いで次の写真に移動させた。
「うぎゃぁあ!居ないぃ!さっきの人居ないっすぅ!」
「うわぁ!居ません!居ませんよ!」
「……さっきの写真を見せてもらえるかしら?銀鏡、さん。」
「は、はいっす。……どうぞっす。」
「何か分かったのですか?悠深子ちゃん?」
「銀鏡、さん。あなたは写真のスペシャリストよね?少なくとも私達より詳しいはずよ。……こんなことを。ここを見なさい。」
「さっきの半透明の人ですよね?」
「その服、Go Say Deth、と書いてあるわ。」
「行きなさい、言いなさい、死になさい……私、勉強は得意なつもりでしたが……どういう意味でしょう?」
「何言ってるのよ、あなた英語は赤点ギリギリだったでしょう?」
「と、とにかく!これは、重大なメッセージなはずです……よね?」
「そのまま読んで見ましょうか。ゴー、セイ、デス。ごう、せい、です。合成です。つまり、この写真は合成によってつくられた偽物だと最初から教えてくれてたのよ。」
「合成……まさか、さっきの英文字は合成だと最初から示していたのではないですか?」
「今、私がそう言ったわ。それで。これはどういう意図があったのかしら?銀鏡、さん?」
「白状するっす……実は、さっき暇だったので写真を何枚か加工して遊んでいたっす。もちろん、本人たちの許可は得てるっす!……そのあと、二人の写真を撮るのに夢中になって忘れてたっすぅ。……透自身が思い出したのも皿籠さんの推理を聞いていてついさっき、だったす。それでその……ト、トリックオアトリート……お菓子をくれなきゃイタズラしちゃうっすぅ……。ダメっすよねぇ……。」
「なるほど……。このチョコでいいかしら?」
「私は、クッキーをあげます!」
「い、いいんすか?勝手に騙してしまったのにぃ……申し訳ないっす……。」
「本人が忘れていたのなら、仕方ないわね。悪気もないのでしょう。トリックオアトリート、お菓子とイタズラ、どっちが欲しいかしら?」
「う、嬉しいっすぅぅうー!!!起こられるかと思ったっすぅ!死ぬかと思ったすぅ!お化けより怖かったっすぅ!」
「悠深子ちゃんは意外と優しいんですよ。」
「意外とは心外ね。……それに、私もこれであなたのことをド忘れしてしまったことへの償いは出来たわ。これでお相子よ。」
「そうだ!私、良いこと思い付きました!悠深子ちゃんはこれを!銀鏡さんは特別にこっち!」
─────「じゃあ撮るっすよ!みんなポーズとるっすぅー!」
「銀鏡さんも、はやくはやくっ!」「私メイク崩れてないよね?」「変顔しようぜぇ!」「ちょ、僕、写ってる?」「せーのでジャンプしよっか。」「お揃いの衣装でよかったわね!」「俺は、端で。」
「ささ、こっちですよ。銀鏡さん。」
「まさか今日この衣装着るとは思わなかったわよ……。」
「よかった、間に合ったっす。二人とも今日はホントにありがとうっす──────。」
「「ハッピーハロウィーーーーーン!!!」」
猫耳を付けた愛道、小悪魔風のペンギンの衣装の皿籠、愛道が偶然つくっていたカメラの帽子を被った銀鏡。三人。
そして、他のクラスメートがぎゅっと集まり、思い出にクラスの集合写真を撮ることとなった。
風船やらテープやらで飾り付けられた2年1組の教室。
“happy halloween”とチョークで書かれた黒板をバックに十人十色なポーズ、仮装の生徒たちが写っていた。
こういう会話パートがうまく書けるようになりたいです。
最新作が発表されたファイアボールシリーズのようなキャラ同士の会話が目標です。
皿籠の口調はもろに影響を受けています。
読んでいただいたことに感謝を。
ありがとうございます。