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世界樹の魔女  作者: ぺぺん
1章 落とされた幼女
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幼女の日課


森に出来た川沿いに数匹の動物たちを従えて歩く。

自分の歩ける範囲ではあるが、毎日の森の見回りは日課となった。

この森を作り、生命を作り出した私にはこの森を守る義務があると思っているから。


(……うん…今日も変わり映えないね…)


森の風景は今日も変わりなく、穏やかなままである。

時折私が来た事を察した動物たちが茂みから顔を出し、ペコリとお辞儀をして去っていく。

動物たちは私に会ったらお辞儀をするのが決まりとなっているようだ。

どんな動物たちも同じように挨拶をしてくる。

食事をしてようが、喧嘩をしてようが、一旦それまでしていた事を中止してお辞儀してくるからなんとも律儀だ。

そんな行動をする彼らは、私が生み出した動物たちから生まれた所謂二世や三世、早い子たちだともっと世代は新しくなっている。


そんな事を思いながらブラブラと散歩を続けていると、近くの茂みがガサガサと揺れる。

そこからゆっくりと現れたのは、銀に輝く毛皮を纏った4m程の大きな狼だった。

狼は迷わず私の隣に付き従うように寄ってくる。


「ポチは今日も元気そうね…」


「ワフッ!」


この狼は私が生み出した最初の狼のうちの1匹である。

なんとなく気まぐれで名前をつけたこの狼。

成長するにしたがって、普通の灰色だった毛が段々と銀に輝くような色になり、体格もどんどん大きくなっていったのだ。

この狼以外にも、生み出した時期はちょっと後だが、同じように気まぐれで名付けた狼の3匹ほども大きく、銀色っぽい色の毛にはなったが、この狼ほどの大きさにはなっていない。

更にこの子は今も成長期のようだ。

少し前に見た時はもう少し小さかった気がするのだ。


この子のように生み出した子たちの中には、突然変異のように大きくなったり、姿がちょっと他の子とは変わっていたりする子が出てきた。

そしてその変わり種の子たちはあたかも当然のように、それぞれの種のリーダー的な存在になっているようだ。

大体の子は体が大きく成長し、なぜか神々しさを感じる見た目になっている。

そのうち他の子にも会うだろうから、その時にまたそれぞれ紹介をしよう。


(そういえば大きくなった子たちにはみんな名前があるな…)


ふとそんな事を考えていると、ポチが遠くを見つめて低く唸った。

これは何か異変があった時に知らせてくれる時のやつだ、それもあんまり良くない異変の時のやつ。


私はその異変が何か確認する為に、ポチが見つめる先の方へと探査魔法を張り巡らせる。

目を閉じてソナーのようなイメージをした。

すると網目状に魔力の線が広がる。

その線が広がると私の頭の中には森の情報が一挙に入ってくる。

初めてこれをやった日は頭が情報で埋め尽くされてパンクするかと思った。

でも今はもう何万回もしてるから慣れたもの。

私は線をどこまでも、森の端まで伸ばしていく。

するとすぐに異変の正体を知る。

森の終わりに動物の反応がある。

そしてその形はここに生まれてから今まで見た事がない…でも私がよく知るその形。


(……これは…人間…)


私は震えた。

この世界に来てから初めての人間。

存在しているかさえ疑っていた人間が、今森に入ってきている。

理由はわからないけれど、人間はいた。


「ど、どうしよう…?!」


思わず自分自身の肩を抱き、ポチを見つめる。

ポチは一度首を傾げ、私が怯えている事を不思議そうに見た。

どこか納得いかなそうではあったが、私の様子を見て放っておく事は出来ないと判断したのだろう。


「ワオォォォォォォォォォンッ!!!!!」


大きく一つ遠吠えをする。

すると途端に全方位から何かが集まってくる。

あっという間にそれらはポチの後ろに集合し、お座りをした。

集まったのは五十匹ほどの狼だ。

彼らはみな普通の大きさをしている。


多数の狼を従えて、ポチは私を見る。


「……うん。確認しなきゃだよね……一緒に行こう?」


「ワフッ!!!」


勿論、と言っているようにポチは尻尾をブンブン勢いよく振りながら吠え、頷いていくれる。

そしてポチは私に背中を向けて伏せをする。

これは乗れという合図。


初めてポチの背中に乗せてもらったのはもう随分前の事であるが、その時はもう少し小さかった。

それでも安定感抜群であってとても早かったのだが…はじめの頃は怖かった。

しかし、時々森の端の様子を見に行くのに乗せてもらったりして段々とその速度には慣れたし、途中で風の抵抗を減らす魔法を自分の周りに張ればいい事を思いつきそこから快適性は格段に上がった。

そのため、今ではもうすっかり慣れっことなっているポチの背中である。

今では安心感さえ感じる事が出来るくらいだ。


そんなポチの背中に跨ると彼は立ち上がり、周囲の狼に合図を送り走り出す。

不規則に木々の立ち並ぶ森を凄いスピードでポチは駆ける。

それを追うように狼たちは従う。

私はしっかりとポチにつかまっているだけ。

すると10分もかからずに森の端近くまでやってきた。

私はポチに彼ら侵入者に見つからないような位置に回ってもらい、様子を探る事にした。



お読み頂きありがとうございます。

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