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世界樹の魔女  作者: ぺぺん
1章 落とされた幼女
6/9

動き出す周辺諸国

本日2話目です。



かつての不毛の荒野は世界の中心にあり、世界のほぼ半分を占めていた。

現在、世界樹はバレック大陸と言われる世界中でも一番の広さを誇る大陸のほぼ中心に位置している。

世界樹の森は、世界樹を中心にほぼ円状に森は広がっている。

バレック大陸はやや台形に近い形をしており、北側がやや狭く南側が広く広がっているような形をしている。

また、大陸の北西部にはひし形に近い形のスティル大陸と、その周辺に大小複数の島々が連なっているスティル諸島がある。

南東には五角形に近い形をしたクリーク大陸があり、どちらの大陸も狭い海峡を挟んではいるが十分に人間が行き来できる場所に位置している。


バレック大陸、スティル大陸・諸島、クリーク大陸の人々は不毛の地の変化にどういった対応をしていくのか。

彼女の自重のない思いつきのお陰で、世界はこれからどうなっていくのか……。










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バレック大陸南西部から中部にかけて発展しているのがハピネル王国である。

ハピネル王国はバレック大陸で一番の大きな国家で、人間を中心に栄えている国家となっている。


ハピネル王国王都ブラスクにある王城、謁見の間。

白亜の王城に相応しく謁見の間も白を基調とし、落ち着いた華美ではないが豪華に掘られた彫刻や趣味の良い調度品で彩られている。

玉座もまた白を基調としており、そこに座る人物の深紅のマントが鮮やかに映る。

深紅のマントを羽織る人物がハピネル王国第32代国王ブラークス・オ・デュラン・ハピネル、その人であった。

壮年ではあるが、がっしりとした体格は実年齢よりも若く見られる事を助けており、彫りの深い顔つきは正に美大夫と言える。

彼の隣には美しいブロンドの髪が緩く巻かれてアップスタイルの美しい王妃ネーラ・オ・シシリー・ハピネルが控えている。王の深紅のマントを際立てるような深緑のドレスを身にまとい、静かに微笑みを湛えている様は王国の聖母と称される。

この二人をはじめとし、謁見の間には数人の臣下が整然と立ち控えている。


そして彼らの前には一人の騎士風の男が跪いている。


「頭を挙げよ。して、今回の不毛の地への調査であるが…」


王の言葉に頭を上げる男。

緩いウェーブがかかった赤毛を襟足で緩く束ね、その房は胸元にたらされている。

深いグリーンの瞳は精悍で力強く、鼻筋は通っており、薄い唇は一文字に結ばれた凛々しく若い男騎士であった。

身長は180cm程で体つきは細くも太くもなく、引き締まっており、常日頃から体を動かしている事がうかがえる。


「はい、国王陛下。我ら第3兵団が今回の調査を行う事となったとお聞きしています。」


「んむ。そなたの言う通りである。第三兵団兵長ダレン・フォン・ジョーゼフ。そなたを呼んだのは他でもない、今回の不毛の地への調査の件である。あの地が…あの荒れ果てていた地が、たかがこの数年で緑豊かな…本当に緑が豊か過ぎるほどになってしまった。これはいかようにして起こったのか、危険な場所ではないのか、他の国の行った事ではないか…まぁすべてまで言うまいが…。」


「はい。我が国にとって国益となる場であるか、不可侵の土地として多国間の条約で保護されていたあの地への他国の侵略ではないかどうかなど、数点に要点を絞って調査して参ります。」


「んむ!言わずともそなたならばわかっているとは思っていたが、これも大切な事なのでな…。気をつけて行って参れ。そして、必ず帰還するのであるぞ!」


「はっ!我が剣は王国の為に!」


騎士の誓いと共に再びダレンの頭が下げられると、王は王妃を連れてその場を後にした。

二人が奥へ消えると定位置に控えていた大臣らもその場を後にする。

それと同時にダレンも立ち上がり、その場を辞するのであった。












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「はぁ~~~~……ほんっと、第三は色々雑用ばっかだなぁ」


彼の属する第三兵団の兵舎は王城の敷地の端にあった。

騎乗用の動物の厩舎近くに用意された兵舎は、大きさこそ他の兵団と違わぬものであれどその設備や様相は他の兵団に比べるまでもなく劣っているのは見るだけで分かる。

兵舎の様子からもうかがえるように、第三兵団は第一、第二兵団に比べて期待されていない者や一応入隊試験に合格はしたものの、他の兵団では着いていけない者、コネで入団した者など、謂わば訳アリの者たちが所属している兵団である。

そのため、予算から食事に至るまでのすべてにおいて他の兵団と差が付けられていた。

仕事についてもしかり。

平素は厩舎の掃除や馬などの世話、民意より上がってきた事柄の調査、スラム街の巡回警備、市街の清掃活動などなど。

他の兵団では行わない雑事、わざわざ騎士がしなければならないのか?と思われるような事柄を一手に引き受けるのが第三兵団だった。

他の兵団や町の人々からは雑用団と呼ばれている。


そんな第三兵団の兵舎。

昼間でも薄暗く掃除が行き届いていないのか、壁沿いにやや乱雑に物が積まれたり、天井にチラホラ蜘蛛の巣が張ったりしている、第三兵団兵舎の食堂でテーブルに頭を突っ伏してぼやいているのはダレンだ。


「今度はどんな厄介事かと思ったら、あの不毛の地の調査だとよ…」


「あら~…あの急に森になっちまったところのかい…。誰も気味悪がって近寄らないのにねぇ…」


ダレンの言葉に返事を返すこの恰幅のいい女性はサリーと言って、第三兵舎の食堂を取り仕切っている。

テーブルに臥せったまま落胆したダレンの様子に苦笑いを浮かべ、木のコップに入った果実水をトン、とテーブルに置き、彼の伸ばされた掌に押し付けてやる。

それに反応するように顔を上げ、コップを受け取ると頬杖付きサリーを見る。


「陛下は必ず帰還せよとはおっしゃったが…。あれはただでは帰ってくるな、それなりの成果を上げて帰って来いってこった。…ほんっっと、なんで第三の兵長なんかしてっかねー、俺は」


盛大にため息をつき、果実水を一気に煽るように飲み干す。

そしてまたため息をつき、どこか遠くへと視線を向けるのだった。

ダレンの向かいの席に腰を下ろしたサリーも呆れたようにため息をつく。


「はぁー…今度はどれくらいで戻れるんだろうねぇ?」


「さぁなー…。1年で戻れればいい方じゃないのかねぇ…まったく」


二人で蜘蛛の巣の張った天井を見上げて、再びため息をつくのであった。




お読み頂きありがとうございます。

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