幼女と魔法と棲み処
あれから色々試してみた。
足が痛くなりそうだから靴がほしい。
このままでは熱中症になりそうだから帽子がほしい。
折角の白い肌が日に焼けるから上着がほしい。
お腹が空いたからごはんが食べたい。
疲れてきたから日陰で休みたい。
等々…。
そうした試みから今、私のこの現状がある。
白のワンピースに合わせてくれたのか、白い運動靴に白い長そでのカーディガン。
真っ白なツバ広の帽子。
純白コーデである。
肌の白さや銀髪であるため、驚くほどに白い。
また、何もない荒野だった場所が今や、1本の大きな木が生え、その根元には木製の頑丈そうなベンチがあり、座りやすいようにと柔らかな真っ白レース編みのクッションが数個置かれている。
ベンチの前には小さな金属性のガーデンテーブルが置かれ、その上には出来立てと思われる温かなサンドイッチと氷の入ったガラス製コップにアイスティーが注がれ置かれている。
ちょっとしたお金持ちの家の庭って感じになっている。
結論。
(……私は神になった!!!)
フワフワのクッションを一つ胸元で抱え、行儀なんて関係ないとばかりにテーブルに置かれたままのアイスティーをズズーっと音を立てながら飲み、ムフフと何やら不気味な笑い声を漏らす美少女。
なんとも残念な光景である。
モシャモシャと新鮮な野菜の入ったサンドイッチを噛みしめながらあたりを見渡す。
(……でもこんな何もないところの神様かぁ…)
見渡す限りの荒野は一言で言えば、生命の生きる事が出来ない不毛の地と言えるのではないだろうか。
ここには生物の影ひとつなく、生命の源と言える水の気配は全く感じられない。
あるのは吹く風が巻き上げる乾いた砂だけ。
(でも、それはかえっていい事なのかもしれない。好きに出来るって事だものね…?)
ここに来てからひどく私はポジティブになっている気がすると、自分で思う。
しかし、それも悪い事ではないだろう。
なんせこの不毛の地に、私は一人きりだ。
孤独なのだ。
そんな孤独な私は思ったものを思うように出せるようだ。
ならばきっと、転生に関わった神様が自分で好きにしていいよ、とチートをくれたんだと思う。
そうでしかないと思う!
何の因果か、誰の思惑か。
若返り、そしてとてつもない美少女にしてくれたと思われる神様に私は会っていない…と思う。
記憶にはない…はず。
ならば、私は好きにしていいはずだ。
転生者に使命がある場合は、転生時に神様と会うのがセオリーだと思う。
そんな神様には会っていない。
記憶が抜け落ちているとかでもないと思いたい。
だから私は……
(うん、もう好きにする!!)
とても自分勝手だとは思うがそれしか自分が生きていく方法がないような気もする。
だって、こんないい生まれ変わり?転生?したんだから、簡単には死にたくない。
私の目標は老衰で死ぬこと、に設定されたのだ。
(自重なんて必要ないよね!!!)
今の私は多分、誰から見てもいい笑顔になっていると思う。
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(……はーーーーー。びっくりした)
何にびっくりしたか。
それはちょっと待ってほしい。
順を追って説明する。
自重を捨てたあの時から時間が少し経っている。
そしてここは屋内なのである。
そう!
外ではなく屋内なのです。
私は今、女の子ならば一度は憧れるであろう天蓋付きの大きな、所謂クイーンサイズのベッドに無造作に転がっている。
寝転がっているのではなくて転がっているのだ。
ベッドの置かれたこの部屋の家具や内装は、素朴な感じの木製では彫刻とかをちょっと凝った感じの…ビクトリア調とでも言えばいいんだろうか?
そういった如何にも金持ちです!といった趣味の悪いものではなく、見る人が見ればわかる高級感、という感じで統一してみた。
あんまり派手なのは好みじゃないからね。
そしてこの部屋の窓から見える景色はちょっと高い。
そうここは二階なのだ。
あの何もなかった荒野に二階建ての建物ができたって事。
勿論作ったのは私。
私以外には結局今日まで誰とも会っていないし、小動物の気配すらない。
ではマイホームの説明といこう!
ここを出ると向かいにももう1つドアがあり、今いるこの部屋と同じくらいの広さの部屋が1つある。
そこにはお風呂とトイレと衣装部屋、ちょっとしたリビングと簡易キッチン、トイレがある。
衣裳部屋はちょっと空間をいじって、見た目よりもたくさんものが入るようになったウォークインクローゼットにしてみた。
2つの部屋は勿論南向きにして、日当たり抜群の部屋となっている。
まぁ遮蔽物が何もないから日当たり良好なのは当然だろう。
2階は私のプライベートスペースとして作ったのでこんな感じ。
二つの部屋に挟まれるようにして細い廊下がのびていて、その北側に下へ降りる階段がある。
その階段を下りると階段と下の空間を仕切るようにドアが設置されている。
この階段へのドアは、仮に誰かがここに侵入しても二階への侵入手段がわからないように、隠蔽の魔法を施してある。
どうしてかわからないが私は、自分の思うように魔法を作り出す事が出来、それを自由に使う事が出来るようだ。
勿論私はそれをフル活用して、存在しているかわからない相手から身の安全を守るための家を作ったのだ。
話を戻そう。
ドアを開けると1階は1つの広い空間にしてある。
右手の南側は大き目の窓があり、そこから温かな日の光が差し込んでいるリビングがある。
リビングには幼い頃に憧れた大きな暖炉を備え付けた。
暖炉の前には、フカフカの絨毯にクリスタルガラスを天板に使ったおしゃれなローテーブルが置かれている。
フカフカの3人掛けソファーが1つ、一人掛けが2つ。
リビングの奥、北側はダイニングキッチンにした。
ダイニングには無駄に大きい6人掛けのシックなダイニングテーブルセット。
キッチンは対面式にした。
勿論システムキッチンにしたよ。
階段の隣はお風呂とトイレ。
勿論風呂トイレ別!
左手側は仕事場として整えてみた。
私は魔法が使えるし、性別はまた女の子だったので魔女っぽいかなーって思って、魔女が使うような大きな壺や錬金術師の使うような試験管やら実験セットのようなものを、作業机や大きな天井まで届く棚を作って並べてみた。
執務机的なのも置いて、そこの奥には本棚を作った。
なお、本棚には何も入っていない。
中に入れる本は自分で作って行こうかなって思ってる。
だって暇そうだし。
そしてその本棚の裏側はトイレとシャワー室にした。
こっちのシャワー室はなんかやばそうなもの被っちゃったり、外で汚れた時に使おうかなって思ってる。
1階は右手側がリビングダイニング、左手側が仕事場。
2つの空間は壁で区切らず、ちょっと背の高めの棚を仕事場側に設置してある。
折角広いんだから、広々と使いたいって思ったからね。
家の形はコの字みたいな感じになっていて、くぼんだこの中心が玄関になっている。
玄関の見た目は普通の木製扉になっているけれど、これも勿論魔法で加工してある。
蹴ったり殴ったりは勿論、剣とか魔法をぶっぱなしても壊れないように不壊の魔法をかけた。
だって外の世界は何があるか全然わかってないからね。
で、その玄関を出る。
そこから外に出るとそこは別世界でした!
って言われてもおかしくないほどに、初期の頃の荒野から大改造してみた。
前に出したあの休憩の為の木。
出した時のままでも十分大きかったんだけど、最初に出した思い出深い木っていうのもあってもっと大きくして私の家のシンボル的にしてみた。
それはもうデカデカと大きくした。
地平線の向こうからでも見えるんじゃないかなー?ってくらいに大きくしてみた。
本当におっきいよ。
イメージしたのは世界樹。
そのお隣に私の家がある。
家の外観は魔女の家をちょっと可愛く、かつ綺麗にした感じ。
最初私はこの世界の神になったと思ったりもしたけど、私はこの世界の事を全然知らない。
だから、世界の事とか自分について何も知らない神様なんて嫌じゃない?って思った。
でも私は多分魔法を使っているんだと思う。
だから私は魔女なんだと思う。
…ちょっと脱線したけど。
世界樹の前には大きな湖を作った。
やっぱり命の営みには水が大事だから。
で、世界樹1本だけじゃ仲間がいなくて可哀そうだから、家と世界樹、湖を中心として大体半径5キロくらいで森を作った。
勿論1回で全部作ったんじゃないよ。
何日もかけて作った。
でも段々と効率的になったお陰で大体3日で作った。
ひと段落ついたなーって思ってたら、勝手に湖から川が出来て森の中を流れている。
不思議現象。
そんなこんなを数十回ぶっ倒れてを繰り返してできたのがこの家と森。
倒れる回数は徐々に減って最近はあんまり倒れなくなっていたたんだけど、昨日はこれでひと段落つけるんだ!って躍起になってたからぶっ倒れた。
でもどうしても外で倒れたくなくてどうにかこうにかベッドにダイブする事が出来て、今こうしてベッドの上に転がっているって感じ。
ベッドで意識を手放す事が出来たのは実は昨日が初めて。
だからこのベッドで寝たのは今回が初なんだなー。
ちょっと頑張り過ぎかなーとも思ったりしたけど、ものを作るのは楽しい。
色々と考えたり作ったりしている間に、どんどん楽しくなっちゃって自分の限界を知りたくなってしまって、毎回外で倒れたりしてた。
それと、体が10歳そこそこになったからなのか、思考も幼くなったような気がする。
キッチン作ってわかったんだけど、身長も120センチ~130センチくらいになってた。
以前は160センチはあったから、そのイメージのままに家は作っちゃった。
だから、キッチンもお風呂もトイレも…色々ぜーんぶ日本での頃のイメージのサイズのままなの。
キッチンに立つにも台が必要だし、お風呂に入るのにも踏み台が必要。
トイレはまぁなんとか自力で大丈夫。
体小さいと大変だね、ほんと。
話は変わるけど、こうして森を作ってみたけど湖にも森にもやっぱり生物はいない。
虫さえいないんだよ?
前世ではどっからわいたの?!ってくらいに自然とどっかから虫はやってきていたのに…。
そろそろ私も寂しくなってきたし、一緒に生活してくお友達が欲しいなぁと思ったので、ついに私はあの実験をしてみる事にしたのだった。
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