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世界樹の魔女  作者: ぺぺん
1章 落とされた幼女
2/9

荒野の真ん中に落とされた

ジリジリと灼けつくような日差しに眉を顰め、寝返りをうつ。

寝がえりをうったところで枕がどこかに行っている事に気が付く。


よくあることだ。


何せ私は寝相がすこぶる悪い。

布団を片づける手間がないという理由で、私はベッドで寝ている。

しかしこれまでに数回、頭と床が接触した衝撃で目覚めた事がある。


だからなんの疑問も抱かずに、二度寝を決め込むつもりで目を閉じたまま手探りで枕を探す。

今日は数か月振りの休日なのだ。

太陽が真上に登ろうが嵐がやってこようが、私は惰眠を貪るつもりだ。


が、いくら探しても枕がない。

それどころか、なんだかマットレスがいつもより固い気がしてきた。

それに匂いもおかしいし埃っぽい。

これでも給料は同年代の男たちよりも貰っているのだが、休日がないために使うところがなく、安眠が貪れると有名な某超高級ベッドマッドを購入しており、こんな乾いた地面のようにガチガチに硬いはずがないのだ。


(……乾いた地面のように??)


ここで私はようやく目を開ける。

私の目に入ったのは地平線の向こうまで続く乾いた地面と青い空。

人は本当に驚いた時、声を出す事が出来ないのだと知った。

あんぐりと口を開けるというアホ面を晒す。

ゆっくりと起き上がり辺りを見渡す。

360°パノラマの乾いた地面と地平線、青い空。

太陽はギラギラと真上から私を見下ろしている。


私は確かに自分の部屋のベッドで寝たはずなのに、この状況はなんだろうか。

普通の家の3か月分の給料をかけて整えた寝具たちに包まれて眠りについたはずだ。

が、私がいるのは荒野だ。

誘拐でもされたのだろうかとも考えるが、だったら私一人をこんな荒野に放りだしていなくなるだろうか。

まぁ、身代金を要求する先も私にはないのだが。

寝起きでボーっとする頭を酷使して状況を整理していく。


(一体何が!!どうして!!!!こうなったっっ!!!!!!)


空を見上げて私は心の中で叫ぶ。

確かに異世界転生ものにはあこがれていたし夢見ていたさ!

毎晩!!!

しかし、これは何だろうか?

誘拐の線はどう考えてもないだろう。

だって、周囲に人の気配はおろか動物の気配すらない。

風が吹けば容赦なく私に乾いた砂が吹き付けるような荒野。


(…イタイ…)


痛みを認識し、これは夢ではないと否応なしにわからせられる。

掌でひさしを作り、もう一度空を見上げる。

太陽は一つ。

色も変わりはない。

息苦しくないから空気だってある。

でもここは知らない土地だろう。

地球でもないんだろうな、となんとなく思う。


(……私はどうなったのだろうか?)







▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲









とりあえず気を取り直して状況をもう一度確認することにした。


私がいるのは360°パノラマの草一つない荒野。

見渡す限りそれはもう見事な荒野が広がるだけで建物の類は見えず、全方位に地平線が見える。


そんな生命の危機を感じられる場所に私は裸足で突っ立っている。

なぜか真っ白(砂でちょっと汚れたけど)なノースリーブワンピースを着ている。

自分の手足を見ると心なしか、肌が若返っているし透明感があり白くなっている気がする。

それから手足がなんだか短い、というか幼くなっているような感じがある。

そして一番の驚きだが、なんと!


私は銀髪になっていた!!!


私はこれまで生きてきて一度も髪を染めたりパーマをかけたりした事がなかったから、本当に衝撃だった。

少女漫画とかに出てくるような、とてもきれいで柔らかな銀糸のような銀髪だ。

本当にきれいなのだ。

これに気が付いた時ちょっと興奮して鼻息が荒くなった。

だけど、誰にも見られていないからセーフだ。

それからもう一つ驚いたが、眼鏡をしていなくても遠くまで見えていた。

私は視力が低くて眼鏡なしでは生活できなかったはずなのに、それはもうクリアにすべてが見えている。

地平線のカナタまで。


そのくらいだろうか。

自分の容姿についてはもう少し詳しく見たいが、何せここには何もない。

鏡なんてあるはずもない。


(………?!)


ふと何かを感じて振り返ったら、そこには陶器のような白磁の透き通る肌、薄いブルーの瞳、金の光彩という不思議な光を放つ瞳、影を作るほど長いまつ毛が周囲を囲むアーモンド形の目、ふっくらとしていかにも柔らかそうなバラ色の唇、そしてさっきも見た銀糸のような銀髪を腰辺りまで伸ばした美少女がそこに立っていた…。


という夢を見た気がした。


と、現実逃避をしてみたが確かにそこにある。

そう、そこにはシルバーと思われる素材で綺麗な彫金が施された大きな姿見があった。

やはりこの鏡に写っている美少女は自分なのだ。


なんという衝撃!

大きな口を開けて鏡を見つめる、というアホ顔を晒してしまった。

見たのは自分だけだが。

自分で自分のアホ顔を見るのは少しツライが、そのアホ顔は美少女のものだ。

なんとも眼福だった。

やはり美形は得なんだな…となんだか他人事のように考えていた。


(それにしても……)


先ほどまでは鏡などここには影も形もなかった。


いつの間に…?

というかどこから??


一人で解決される事は無いであろう疑問に、うーん、うーんと唸っていると鏡は唐突に粒子となって消えた。

自然と眉間にしわが寄る。


不思議だ。

絶対自立する感じの姿見でなかったにも関わらず、何の支えもなしに立っていた豪華な鏡。

いつ、どこから現れたのか。


答えを教えてくれる人がいるわけでもないので、一人で満足するまでうーん、うーんと唸っていたら喉が渇いてきた。

それも当然だろう。

日陰もないギンギンに照り付ける太陽の下に長時間、私はただ立っている。


(……喉が渇いて死んだらミイラになるのかな)


段々とぼーっとしてきた頭で、自分が包帯でグルグル巻きになっているところを想像するも、途中で気が付く。


(包帯を巻いてくれる人がいないじゃないか!!!!)


ため息をつき、自然と視線が下を向く。

すると、そこには見慣れた水筒が落ちているではないか。

普段自分が職場へ持っていって使っていた、お馴染みのマイ水筒だ。

温かいものは温かいままに、冷たいものは冷たくの、サー〇スの水筒!

なんでもありだなーとか、ぼやっとした頭で考えながらもそれを拾い上げる。


(…これはっ!!!)


中身がいっぱいに入っている重さだった。

もう喉はカラカラだった。

急いでクルクルと蓋を回し開け、ボタンを押して口をつける。


(……冷た美味しい)


思わす安堵のため息が出る。

中はいつも自分が飲んでいたお手製の麦茶が入っていた。

体に染み渡るような冷たさに夢中で飲んだ。

飲んで飲んで飲みまくった。

途中で頭にキーンっと来たところで、痛みにより飲む事を中断させられる。


(これ……どれだけ入ってるの?)


そう、これだけ頭痛がやってくるほどにたくさん飲んだにも関わらず、水筒の重さは拾った時と一緒。

以前私が持っていた水筒は、中身の温度を保ってくれるのはとても優れものだったがいかんせん小さかった。

そのため仕事の時も途中で自販機で購入したものをつぎ足したりしないといけなかったのだが…。

今、この手にしている水筒の中からは麦茶が際限なく出て来ている。

勿体ないので中身をどれだけ出るか出してみるという事はしない。

そしてふとある思いが頭の中をよぎる。


(……もしかして、ほしいと思ったものが出てくる??)


思わずニヤリ、と悪い顔になったのが自分でもわかった。

これは所謂、転生特典のチートというやつなのだろうと、私は確信に近い思いを抱いたからだ。

お読みいただきありがとうございます。

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