妖しく麗しい、蝶が依りつきし花の竜
「蝶喰い個体……なるほど」
縁側に座ったまま頬をかく。花壇の辺りを見れば、ニッコニコの笑顔で蝶々を食べているプラちゃんの姿があった。
レアといえばレアなんだろうけれど、確か食性は個体それぞれ。仲間にして試してみるまで、どんな食性を持っているかは分からない。要するに食性ガチャみたいなもので、マニア化した人達は仲間にして逃して……ってこともするらしい。
しかし私はそういうことをする主義でもなし。プラちゃんはプラちゃんだ。私を助けようと動いてくれた。お気に入りで、大事にしていた金魚鉢が壊れることになっても、私を庇ってくれた。あまり多くは構ってあげられなかったはずなのに。それだけ懐いてくれていた。
食虫植物だって綺麗な姿の種類はあるわけだし、神獣郷は基本的に可愛い・綺麗な聖獣ばかりだから安心感もある。私のこの子達への情熱が冷めることはまずないと断言できるわけだし……うん、進化させよう。
プラちゃんと、新しいお家のプレゼントを贈るって約束したもんね!
まあ、さすがに蝶々を食べたのはビビったんだけどさ! それはそれ! これはこれ!
「プラちゃん」
「きゅわ!」
シャークくんの上に乗ったまま移動してくるプラちゃんの頭を撫でる。小さな蛇のような頭を指先でこねると、プラちゃんは気持ちよさそうに口を開けたまま目を細めた。ぺろーん、と舌が出っ放しになっているのがご愛嬌だ。身体が植物でできているためか、舌も緑色の細い葉っぱだ。
どこを触ってもひんやりとしていて、夏にはそばにいてほしい子である。
「それじゃあ、いよいよ進化です。いいですか?」
「きゃう!」
プラちゃんは身体の植物から生えた、平たく丸い葉っぱで拍手をするように打ち合わせて喜びの声をあげる。どれだけ大きくなるのかは分からない。故にプラちゃんには庭の地面に降りてもらって、他の子達を縁側付近に呼び寄せた。
みんな進化の瞬間を今か今かと待っている。これは進化が終わったら祝福の宴会を開かないとね? なんて笑いながら、真っ先に膝の上を占領したジンの背中に手を置いた。
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聖獣個体名【プラちゃん】の進化が可能です。
――――――
こうして見ると「ちゃん」まで名前なのはおかしな感じだ。そういう名前にしたのは私なんだけれども!
――――――
進化可能な形態
壱 アクアリウム・ドラゴン・プラント・コモン
弐 アクアリウム・ドラゴン・プラント・バタフライ
――――――
ふむふむ、一番のは「コモン」ってことは、特殊な食性に関係なくノーマルな進化先ってところだろうか? ごくごく一般的な正統進化ってやつかな。
それから、バタフライ。こっちがプラちゃんの食性による特殊進化だろう。ならこっちに決まっている!
弐を選択して、イエスを押す。その途端、プラちゃんが光に包まれた。
「きゅおおおおおおん!」
金魚鉢に入るほど小さかった植物の身体が大きく、長く伸びて枝葉を増やしていく。中程には二本の大きく丸い葉っぱが発達し、手足のように地面に着く。ヒレのある首長竜のような姿であり、大きさの成長は一メートルもいかないうちに止まった。頭から尻尾の先まで八十センチか九十センチくらいだろうか?
目の上……眉にあたる部分からは、赤色の細長い葉っぱが飛び出して長く伸び、頭の後ろのほうに垂れる。プラちゃんが優雅に首を振ると、まるで二枚の花弁が頭の後ろに向かって垂れ下がっているかのようなシルエットになるようだ。
それから、尻尾の先が分かれて、五枚の赤い花弁のようなものが扇のような形を作った。くるりと尻尾を巻けば、そこには擬似的な花が出来上がる。
最後に……一番の変化はプラちゃんの背中だった。
まるで蛹から蝶が出てくるようにして、背中から美しく、妖しい蝶の翅が生える。ふるりと試すように動かされた翅の色は青と黒。模様は世界でも美しいとされるモルフォ蝶に近いものだ。
しかし、この翅もプラちゃんの一部なので、根本の部分は植物の緑色である。だんだんと青く美しく染まっていっているようなグラデーションになっていて、付属品というより、植物体を蝶の翅のようにしていると考えたほうがよさそうだ。
あまりにも美しい姿だった。
さすがにそこまで「綺麗」の権化になるとは思っても見なかった。
さっきまできゅるんきゅるんだった目が、流し目を会得した瞬間を見てしまった。可愛かった娘がクールで美しい深窓のご令嬢に成長した……みたいな感慨深さがある。
「きゅおん」
進化の光が収まったとき、プラちゃんが私を見てうっそりと微笑んだ。
なんてこと……! すっかり大人になっちゃって!!
そして、プラちゃんがなにかを思いついたように首を傾げてから、身体を丸める。すると、尻尾の扇子のような花弁と眉の位置にある二枚の葉が合わさって、そこに大輪の花が咲いているような姿になった。中心に上を向いた口が……あ、そういうこと。
プラちゃんは、そのまましばらくジッとしていて、大輪の花……のように見える尻尾と眉の擬態に釣られた蝶々をぱっくりと食べた。そこは変わらないんですね……。
コメントで尋ねられた『ドラプラ板に写真を貼ってもいいですか?』という質問にイエスで返して、さあ宴会にしようと立ち上がる。
試しにステータスを開くと、プラちゃんの種族はこう書かれていた。
……『【妖麗蝶花竜】アクアリウム・ドラゴン・プラント・バタフライ』と。
二つ名がついてる!?
目の上の眉毛に当たる部分の葉っぱが後ろに向かって〜って部分はミロカロスの同じ部分を頭の後ろに流した感じを想像すると分かりやすい……はず。
そのうちイメージイラスト描いてTwitterにでもあげますね。




