パンケーキって無性に食べたくなるときがあるよね
「た、助かったぜ。焦ったー!」
焦ったのはこっちのセリフだよ!
今はシズクを連れていないから、消火するのだって人力で水をぶっかけるしかなくてどうしようかと思ったくらいだ!
なにをどうしたらただのコンロで火が噴き上がって天井を舐めるなり、窓から溢れ出て外から見えるようになるんだよ。多少火が燃え上がっても、普通は家の中の様子なんて見えないはずなのに。外から見えるって相当なんですけど!?
霊力流して火を出す仕組みの霊力コンロはフレゼアさんにはもしかして、いやもしかしなくても向かないのではないか? というか、あの人を厨房から出禁にしたほうがいいんじゃないか? とか、色々思うところはある。
今日はリリィが来ていないようなので、余計フレゼアさんを止められる人がいなかったのかも……?
しかし、あの子に料理を教えるミッションも存在するんだよなあ……。
あれ、もしやフレゼアさんにお料理を教えるミッション……このゲームで最高難易度なのでは???
「ご、ごめんなさい。あまり火力を出してはいけないとは頭で分かっているのですが……」
「フレゼアさん、おれらより強いからね」
「うう、火力お馬鹿でごめんなさい」
消火活動を手伝ったお礼プラスお詫びということで店に招き入れられた私は、涙目になって謝る彼女の頭をそっと撫でた。そんなに落ち込まなくてもいいよー、誰でも苦手なことのひとつやふたつあるからね! そんなことを言って宥めつつ。
フレゼアさん、薄幸美少女だからついつい許してしまう。カナタくんも謝ってはくれたが、彼はどちらかというとフレゼアさんの完全擁護派。厨房から彼女を出禁にしたとしても、カナタくんが甘やかして結局やらかしそうなのでこの料理下手の問題は別側面から解決するしかなさそうな気がする。
『何人かそのミッション挑戦したみたいだけど挫折したみたいだね』
そりゃあ、そうだろうなあ。
『あ、でもまだ受けてる人いるよ? 鍛治師の人』
『え、そうなん?』
そこは料理人じゃないのか。ま、私はどうあがいてもフレゼアさんの火力バカっぷりを直せない気がするので、誰かがどうにかしてくれることを祈るしかないわけだが。
「姉上〜、注文したもの持ってきたぜェ!」
「ちょっとアリカ、たとえ知り合いでも『お待たせしました、ご注文の品です』だってば」
「おっとォ、そうだったな!」
「私は大丈夫ですよ。アリカくんありがとう」
「あのね、こいつを甘やかさないでくれない?」
そして相変わらずカナタくんはアリカくんに若干塩対応である。お姉ちゃんは二人が仲良しでなによりです。
運んできてもらった可愛らしいパンケーキをスクショしながら、他にも注文した品をそれぞれうちの子達の前に置いていく。はわっ、パンケーキがクマさんの形してる……女子力。
「ちなみに、パンケーキを焼いてくれたのはどちらですか?」
「……おれだけど」
『そもそもの選択肢にフレゼアが入ってなくて草』
「そうなんですか! とっても可愛くて素敵です! カナタくんは器用なんですねぇ」
「別に、普通だけど」
カナタくんはちょっとだけ目線を逸らして照れている様子。あら可愛い。なんだか、本当にツンデレ気味な弟ができたみたいな気分になる。
人懐っこいワンコ系な弟のアリカくんと、ツンデレ系弟のカナタくん。そして儚い見た目に反してそこそこ脳筋な妹フレゼアさん……そう思うとさっきの消火活動の苦労も苦ではない、かも?
「さっきのお詫びでハニーハニーとたっぷりのバターがかけてあるから」
「ありがとう〜! いただきます!」
ハニーハニーは神獣郷世界のハチミツだよね。バターはそのままバターか。食材系も種類が多いからなぁ。あー、でも絶対美味しいやつ……!
切り分けて、フォークでひと口ずつ頬張る。クマさんの形をしたパンケーキを切り分けるのはちょっともったいない気がしたけれど、食べ物だからね! スクショは撮ったからちゃんと食べてあげないと!
ぱくっと。
う〜ん、焼きたてで厚みがあるから口の中に入った途端、ふわっとした食感がいい。濃厚でクリーミーなハチミツとバターもたまらん! 舌触りがリアル〜! でも、絶妙に味が薄くて泣きたい〜! これ本物なら絶対美味しいやつ〜!!
視界の下に表示された詳細ボタンを意識して開く。イベント料理以外はこうして、詳細を開くことで料理についているスポンサーを知ることができるのだ。気に入ったものがあったらこれで調べれば、リアルでも食べに行けるというわけ!
このパンケーキは……ふうん、パンケーキ専門店『幸福のパンケーキ』が提供か。ご近所にはないから、リニアでお出かけするしかないかな。もう既にリアルでも行く気満々である。妹達を連れて食べに行きたい! 絶対喜ぶもの!
「みんなも美味しい?」
「く!」
「ふぉ、わふん!」
「クォォ」
「きゅわ!」
アカツキが食べているのは分厚いベーコンだ。あれも美味しそう……。あんな分厚いやつでベーコンエッグを食べてみたい……! 絶対美味しい! アカツキも夢中でつつきながら返事をしてきたし、実際美味しいんだろう。
オボロもベーコンだが、夢中で食べ過ぎて返事がくぐもった変な声になっていた。わざわざ返事をし直してくるところが可愛らしい。
シャークくんに用意してもらったのは新鮮サラダとフルーツだ。カフェにはまだ、質の良い岩みたいな、砂場に生きる子達の食事が不足しているようなのでこのチョイスだったわけだけれど、美味しく食べることができているみたい。よかった。
プラちゃんはフルーツをつけてあるお水。いわゆるデトックスウォーターと呼ばれるものをストローで飲んでいる。プラちゃんにとっては栄養たっぷりな食事になるので、食事としては十分なはずである。
「人気店になれるといいですねぇ」
「頑張る!」
「まあ、そのうちなったらいいよね」
「ごめんなさい、私が足を引っ張ってしまって……」
しゅんとした様子でフレゼアさんが言う。
うーん、事実ではあるんだけど解決法は多分絶対あるはずだ。早めにその方法が見つかるといいのだが……。
ふと流れてきたコメントが目に入る。
『霊力流して火がつくコンロじゃなくて電気であっためる電気コンロにすればいいのでは?』
そ、それだ!!!
幸せのパンケーキっていうパンケーキ専門店が実際にあるぞ!!




