実は残酷表現を見るかどうかの設定もあるのです
「ジンのは多分猫獣人みたいになるだろうし……オボロのときと一緒で……」
呟きながら訓練場から退出。そろそろ二時間くらい訓練場にいたことになるし、あとの子達は聖獣纏がまだできないから技の構成だけ考えることにするのだ。
それと、お腹の状態を表すゲージがそろそろ三分の一くらいになってしまうので、要するに空腹状態。大技のスキルや聖獣纏ばかり連発しているとお腹も空いてくる仕様なのである。先ほどたくさん屋台があったし、そこで休憩を入れようと思ったのだ。そろそろ……というか、多分とっくにユウマも訓練場から出ているだろうという予測もあるからね。
「紫電の文字とジンの『迅雷』は入れたいよね。それから、レキの場合は『霊亀』と同じ音は入れたいし……唸れ私の厨二病……!」
あっ、そういえば配信してないんだっけ。口に出して喋る必要ないじゃん。わざわざ構想を口に出してぶつぶつ独白してるとか、痛い人になってしまう。黙って考えつつ、ユウマを探そう。
周囲を見回す。
ざわざわと雑踏の音が耳に入ってくるが、目当ての人物はどこにも見えない。真っ暗な騎士スタイルだから見れば分かると思うんだけど……似たようなロールプレイしている人もいるからなあ。ダークヒーロースタイルってやる人多いよね。厨二心的には心惹かれるものがあるのは確かだけれども、私は正義の味方な聖女スタイルで行きますので? 圧倒的光属性のまま突っ走るのだ!
……配信していたら思いっきりツッコミを入れられそうなことを、脳内だから別にいいだろと割り切りつつ、つらうらと考える。
あとユウマが連れているのは八本脚の馬『スレイプニル』だから、暗黒騎士プラススレイプニルだと結構分かりやすいはずなんだよなあ。
暗黒騎士が白馬の王子様よろしくでっかい馬連れているわけだし。
しかし、それでも見つからない。
んー、もしやまだ訓練場では?
まさかまさか、私のほうが出てくるのが早かった? そんなまさか?
いや、ありえないことはないのか。なら、見つからないことだし屋台巡りでもしよう。
「みんな、なにを食べたいですか?」
声をかければみんな、それぞれに手や翼、頭を使って指を差すように屋台を示す。うーん、全員見事に食べたいものが違う。
「アカツキはバターナッツ。オボロは圧倒的肉料理。しかもがっつり。シズクは茹で卵とじゃがバター。ジンはまさかのラーメン」
ラーメン? 本当に? 隣の魚の屋台ではなく? マジで?
ていうか猫ってラーメン食べられるの? 食べられる形状してるの? 大丈夫? むせたりしない? そもそもすすれる?
さすがジン。私のまったく想定していないことをしてくれる。新鮮な驚きに満ち溢れた素晴らしいパートナーである。
これにはいつも冷静なアカツキくん達もびっくりである。他のみんながある程度『らしい』味の好みを表しているのに、ジンだけはまったくの予想外だ。いや本当に。
「……全部買いましょうか」
チラッと眼前の画面に表示されているゴールドを確認する。うん、大丈夫。全部買っても問題はなにもないな。これもレキのおかげだ。レキが緋羽屋敷でやっている果樹園の果樹や野菜は品質が良くてレア度も高く、それにお爺ちゃんが頑張ってくれているからたくさん採れる。素材としてもレア度が高めだからよく売れるし、最近では料理を専門にしている人からの注文や、常連としてご贔屓もしてもらっているそうだ。
ルナテミスさんのところのお店でも、うちで作る果物と穀物系アイテムをたくさん購入して贔屓してくれている。だからお金は自動的に入ってくるのだ。
どうだすごいだろう! どやさと内心胸を張るが、顔には出さない。出さないったら出さない。アカツキに変な目で見られている気がするとか気にしない。
……え、もしかして顔に出てる? いやそんな馬鹿な……まさかまさかね。いやでもオボロも純粋な目で私を不思議そうに見上げている。ア、これは顔に出ていますね。配信やっていたら絶対ツッコまれていたところだ。
「んじゃ、食べ物でも食べながら他の人の対人戦の観戦でもしましょうか」
一人と四匹。連れ立って観戦ができそうな場所へと歩き出す。
さてさて、対人戦は見るのも初めてだ。いろんなところで盛り上がっているが、どれを見ようかな。
あ、そうだ。残酷表現の設定どうしようかな。
今は軽い血表現は出るようになっている。このゲームでは他のゲームでもよくある、血の表現を制限することができるのだ。対人戦では体力をいちいち見る暇がない場合がある。故に聖獣や神獣は傷つくと『軽傷』『中傷』『重症』の段階で分かれて見た目が変わるようになっている。
ただ、この見た目変化は設定で『なし』にできるのだ。
また、今の段階で分かれる設定の他に『部位破壊』表現を見られるようにする設定ができる。本来なら、ゲーム的にアウトラインにある傷表現や部位破壊表現は赤いポリゴンが出る。明確に『死』を、リアルに感じさせる致命的な表現は赤いポリゴンが出るが、この設定にすると首が飛んだり腕が飛んだりしても、それを見られるようになる。もちろん断面図とか血とかは出ずに赤いポリゴンになるけれども。
こうしてちょっとリアルにすることができるのだ。
故にあり鯖では真の意味での地獄絵図になる……ということらしい。
易しいモードでは全てポリゴン表現で軽傷動作などもなし。
普通モードでは軽傷、中傷、重症表現あり。
リアルモードでは部位破壊表現あり。
私はこの設定を、リアルモードにしてから対人戦を見ていくことにした。
興味があるというのもある。それに、リアルモードのほうが多分見えるものが増える。見えるものが多いほうが、きっと対応もしやすくなる。
この神獣郷は、優しい世界。
けれども同時に、残酷な世界でもあることをユールセレーゼのときに知った。
なにもかもリアルだ。
今までは血生臭いようなゲームは好かなかった。
だけど、これもこの世界の『リアル』だと思うと、不思議と嫌悪感は湧かなかった。
「どれにしましょうかねぇ」
そうして、設定を見直してから対人戦の様子が映されているホログラムモニターを次々見回していくと……見覚えのある人物を見つけた。
「あれ、ユウマ?」
ひとつのモニターに、見覚えのある黒騎士とスレイプニルが映る。
……見たい対戦が見つかったみたいだね。
私達はそのままモニターがよく見える場所に座り、買ったサンドイッチを頬張るのだった。
「あり鯖で生き抜いている友人のお手並み拝見……といきましょうか」
ストッキンさんにとってケイカのラミア状態は守備範囲かどうか?
>>推しの姿はどんなものになっても推せるもの。そして推しによって開拓される性癖もある。オタクってそういうものですよね。
運営の性癖がよくわかる
>>運営「お前らがケモになるんだよ!!!」




