珊瑚礁から抜け出せない
メニューに載っているマップ的にはこうだ。
その1、竜宮城。
その2、竜宮城周辺のフィールド。
ここまでは呼吸ゲージが発生せず、虹色のホラ貝を設置しておけばホラ貝同士で音響を増幅して無限バフがかかる。
その3、珊瑚礁の森。
その4、魔獣海域。
ここから呼吸ゲージが発生するため、継続的にアイテムを使用する必要あり。
また、魔獣がかなりの数出現しており、あちら側も自陣の防衛を固めているので、ここまで進軍して闇色のホラ貝を破壊していく突撃部隊が必要となる。
ちなみに、今私が目指しているのがこれね!
その5、嫉妬龍の水中煉獄。
最後に、マップに書いてある名前がやたらと格好いいラスボス周辺。
煉獄って罪を清算するための炎に焼かれる場所のはずだけど……あれか、水中煉獄が捕らえているのは私達ではなく、リヴァイアサンってことになるのか?
今現在嫉妬の炎で身を焦がしているだろうし……。嫉妬は七罪のひとつだもんね。
わあわあと突撃している人達に追いついてオボロが並走する。
早めに出た人達は既に珊瑚礁まで辿り着いているし、その先に抜けている人もいるかも?
おっと、前方にペガサスっぽい馬を連れた女性プレイヤーを発見。珊瑚礁の森の中をキョロキョロしながらのんびり歩いているみたいだけれども……。
「あのー、どうかしましたかー?」
一応声をかけておく。
なんだかペガサスが彼女の上着を咥えて主張しているが、肝心の彼女のほうは気づいていないような……?
「あ、すみませ……生ケイカちゃん!?」
「あ、はい。ケイカですー。えっと、なにかお困りですか?」
頭の上に浮かんでいるプレイヤー名は……『迷子』さんね。うん、なにが起こっているのか単純明快だった。というか、完全にこれだよね。
「ごめんなさい、ちょっとコンビ組んでる相方と逸れてしまって……」
おや、パーティ参加している人なのかな?
話している最中に四角の大きなマスで区切られたフィールドの上に10個分のホラ貝を設置。珊瑚礁の中でもホラ貝の設置が着々と進んでいるらしくて、今設置した分も含めて段々曲の音量が上がってきている。
だからと言って会話の邪魔になるほど不快な大音量じゃないっていうのがすごいよね。妙に頭に残るBGMなんだよなぁ……本当に中毒になりそう。神獣郷はフィールドに音楽とかほとんどないし……まあ、あったとしても多分ノイローゼになるレベルで聴きたくないし、早々に音源設定いじって消しちゃうだろうけれども、ともかく神獣郷の中でまともに音楽を聴くのは珍しいのでなんだか印象深い。サウンドトラックとか出たらいいのに。
「ランランってプレイヤーは見かけませんでした?」
んー、私は後から追いついたから見かけてないなあ。
「見かけてないですね。もしかしたら先に行ってしまっているのかも? あ、あとなんですが……えーっとですね、あなたのペガサスちゃんがなにやら言いたいご様子ですけれども」
指差すとペガサスはうんうんと首を振って彼女の服を口先でつまむと、特定の方向に引っ張っていこうとする。
「もしかして、その子は把握してるんじゃないでしょうか?」
「はっ! ……そ、そうかもですね! ケイカちゃん、ありがとうございます!」
「いいえ〜、どういたしましてです」
頑なにその場から動こうとしない迷子さんをペガサスが口でよいしょっとくわえて投げる……投げる!?
……と、ペガサスの背中でキャッチされた彼女はそのまま迷いのない足取りで歩き出すパートナーに連行されていったのであった。
……大丈夫かな、あれ。前線に行って本当に大丈夫? なんとなく保護者感覚の心配が浮かび上がった。
「クウン?」
「あ、ごめんねオボロ。こっちも移動しよっか」
プレイヤーの欠点を聖獣が補う……こういうことができるからいいよねぇ、神獣郷。ソロでも聖獣枠があるから、いわゆるゴミ職業とかビルドが皆無と言っていい。
好きな職業になって、好きなステータス振りをして、そしてそれを補うような構成に聖獣のステータスを調整すれば誰でも強くなれるのだ。
配信者が使っている職が人気になったりはするものの、産廃だけは存在しないのでどの層のプレイヤーも楽しめる。
それに、私の舞姫みたいにマイナー職業を、スキル構成とかステータス振りとプレイヤースキルでほぼオンリーワンみたいに仕立て上げたり、意外な職業で意外な活用法を探してみたりする楽しみもある。
「方向音痴だから聖獣が頼もしくなる……っていうのも中々成長の仕方が面白くていいですね」
『そうだね、散財するケイカちゃんを止めるアカツキ達みたいだね』
「ヴッ」
『今の声どっから出た???』
なんで私をオチにしようとするんですか……? 実は皆さん私のこと嫌いなの……?
なお、先程の迷子さんはすぐそばにまだいました。
前に屋台やったときに来てくれた、パンダ柄のウサギちゃん連れた『ランラン』さんとパーティを組んでるお友達だったみたい。
通り過ぎざまに軽くファンサをして珊瑚礁を抜ける。
抜ける。
抜け……。
「オボロ?」
「キュン!? クゥーン、クォン! クォン!」
意訳(推測)いやいや!? 迷ってないよ!? 本当にだよ!?
……。
「ふっ……」
そうだね! 私達も方向音痴でしたね!!
立ち止まって方向確認をしている間に、迷子さんとランランさんに追いつかれたときの一言がこれです。
「迷子仲間ですね! 親近感湧いちゃいます!」
「あの、ごめんなさい」
くうっ、光属性……!
「いやー、まったく同じ方向に行っちゃうなんてすごいですよね!」
「私まで迷っちゃって……」
いや待てよ……?
全員迷子だ。つまり、全員方向音痴だ。
ならば。
「その、方向音痴がこれだ! と思う方向の逆を行けばいいのでは……と思うのですが」
「それだ!」
「天才ですか!?」
私の声に追随して二人がわちゃわちゃと喜び出す。
アカツキは私の肩の上でやれやれと首を振っていたが……ナンデナノカ、ワカラナイナァ。
二分で珊瑚礁から抜けられました。
『聖獣を頼れば一発だったのでは(小声)』
『シッ』
『世の中気づかない方がいいこともあるんだよぉ』
『さっきペガサスくんちゃんが正解引いてたはずだよね?』
アーアー、聞こえなーい。
盤面的にはこう。
(味方側)
竜宮城
竜宮城周辺
珊瑚礁の森
魔獣海域
嫉妬龍の水中煉獄
(敵側)
ネクロニカとかにある盤面と似たようなもので、進んだり後退したり位置取りを考えながら遊ぶ感じです。
それぞれのマップの地形は視点を変えると、ローグライクとかにありがちな四角い枠線で区切られた床に見えます。ただしローグライクなんかで見るほど細かい区切りではなく、もっと大雑把な区切り。VR視点だからね。あんまり細かいと目が痛くなるからね。
ここの四角の枠内にマックス200個分のリソースを注ぎ込むことが可能。
それぞれのマップに設置できるリソースの数は決まっているとする。
というか全員納品マックスクリアで、300万マックスのリソースが乙姫側にあり、それぞれのマップに注げるのは5等分でマックス60万まで。
なお、この枠内にいくつもホラ貝を置いてリソースを独占することもできれば、同じ容量のホラ貝を置いて相殺することも可能。そして、互いのホラ貝を壊してリソースの最大値を削り合うこともできる。
最終的に盤面に設置されたホラ貝のリソースが大きいほうがより強いという、わりとシンプルな陣取り合戦です。
勿論陣取りも大切ですが、陣取りした結果生まれる決戦フェイズのようなもののほうが決め手です。
リヴァイアサンの眼前のフィールドを制することができていると、リヴァイアサンへ乙姫からのスカウト(歌声)が炸裂していき、嫉妬メンタルゲージが段々減少。これを削りきったら大規模レイドボスバトルは勝利となります。
もちろん逆の展開も起こりえますので、乙姫のメンタルゲージを削られないよう陣地を獲得しつつ、相手の嫉妬の炎を消化してやりましょう!
なお、あり鯖で起こった悲劇については今後の話でちょろっとだけ噂ということで出しておきます。リヴァイアサンとサンゴが組んでプレイヤー襲ってきたりするのか? という系の質問の回答はそちらで。
◇
#神獣郷こっそり裏話
聖獣や神獣は寿命が設定されているが、共存者と契約した者は人間の寿命と一蓮托生になるので、共存者の生死とパートナー達の生死がイコールの関係
契約解除すれば一蓮托生の契約はなくなるのでユールセレーゼ達はパートナーの死に際に契約解除され、赤ん坊を託されたこととなる
プレイヤーはリスポーンするので実質無限に生きることができる
モンスターファームみたいに寿命イベントで泣く必要はないよ!!
でもNPCは別だよ!!!
なんでこんなあとがき長いん???
ちゃんと補足の分も本編に反映させます(反省)




