釣りができるゲームは良いゲームと言ってもこれはさすがに予想外!
さてみなさんこんにちは。
おやすみするために配信をいったん切ってから、ゲーム内時間で早くも数時間。現在私は――。
「せいやぁ!」
勢いよく腕をあげる。
バッシャーン! と波しぶきが起きて、それが宙を舞う。
岩だらけの島に重くて大きなものがドスンと落ちる音が無数に響く。
……あちこちで同じことが起きているからだ。
スンッとした顔で、私はそいつを見つめた。
「……と、自分でモノローグっぽく語るのはともかくとして、次の島に来てから衝撃のあまりに配信するのを忘れてしまっていました。すみません。途中からで失礼します」
とは言っているものの、何回これをやっても私の表情は『困惑』のままである。
『あーwww』
『出た釣り大会()』
『あったあったw』
『橋でもないのに変なオマージュされててびっくりしたよねw』
『橋ならあるじゃん』
『おー立派立派』
『でもカジキってハズレだよねw食材になるけどw』
そう、カジキ。
私の目の前には、鋭いトゲ? ツノ? とにかく、カジキ特有のあのツノのようなものが岩に突き刺さっている光景がある。どんだけ硬いんだよ。そして、周囲でも同じような光景が広がっているという、ある意味での地獄絵図がそこにあった。
見渡す限り、釣りをしている人ばかり。
実はこの岩ばかりの島。二つに分かれていて、その二つの間を大きな橋が渡されているのだけれども……。
――――――
献上品にカジキを選びますか?
はい
>いいえ
――――――
視界に映った選択肢の『いいえ』を押す。
カジキは一番最初に試しに行ってみたが、ダメだしされたので『もう二度と献上品にするかよ』と思っている。狙うならもっと長い得物だ。そう、獲物ではなく得物。
ここ、『九十九の岩島』は、橋の向こうにある『鬼ヶ島ランド』に繋がっており、なおかつその橋の中心にいる人物にチケットならぬ、献上品を渡さなければならない。……ランドってなんだよ。
そしてその献上品は、なんらかの『武器』または『刀』でなければならない。
なぜなら、その橋の中心にいる人の名前が『ベンケイ』だからである。
……いや、だからなんで!?
ベンケイが言うところによると、この岩場の周辺の海域には九十九神、または付喪神となった武器がたくさん泳いでいるらしい。
付喪神というのは、100年使われて心が宿った道具のことを指す。
つまりはこの海の中に意思を持って『生きている武器』がいるわけだ。私達共存者はそいつらを釣り上げて、この世界でも変わらず『刀集め』をしているベンケイにお土産として渡さなければならない。しかもちゃんと気に入られなければ橋を通してもらえないときた。
おまけにベンケイは非常に好みにうるさい。
これこそ攻略班の出番かと思ったのに……。
『ベンケイの好みはランダムっぽいから正解と呼べるものはないってさ』
『絶望の一言www』
というわけである。表情が『無』になるのも仕方ないよねこれ。
なお、サンゴさんは語尾にハートがつきそうな勢いで頑張れ! と言って釣具を売ってくれるが、スタンプ担当のサンゴさんは鬼ヶ島の中らしく、どうあがいても鬼ヶ島に行かなければスタンプラリーをクリアできない仕様だ。
一番謎なのが釣りの方法である。
釣り竿自体は普通のやつだけれども、エサが特殊すぎる。
「エサが巻藁ってどういうことですか」
『刀とかの試し斬りに使うやつだね』
『そうだね、だから食いつくんだよね……武器が』
『そうそう、釣り上げると刺さってるんだよね……巻藁に刀とか薙刀とか』
絵面がシュールすぎる。
ついでに武器じゃなくてカジキも刺さるため、あちこちで濡れた巻藁を突き刺したカジキが釣り上げられるという謎の光景が広がっている。
……なぜか武器類よりカジキの出現率のほうが高いんだよ。なぜか。
体感……カジキ7割。他のツクモガミ武器が3割くらいかな。
このツクモガミ武器、自分でも装備できたりするが魔剣のようなものなので、意思のあるツクモガミと相性が合わないと、データ上の数字より攻撃威力が下がったりするようだ。その代わり、相性のいいツクモガミに当たるとデータ上の数字よりはるかに威力が出たりするらしい。扱いかたで幅の出る武器だね。
うん、おもしろいギミックではあると思うんだ。思うんだけど。
でもさ、シュールすぎません? 釣りのできるゲームは良いゲームとか、そのゲームのよさは釣りの楽しさで測ることができるとか、そう言われることがあったりするけど……まず間違いなくこの釣りは困惑するしかないと思う。
キャベツがお空を飛んでるとか、泳いでるとかじゃないからまだマシ……なのか?
「あっ、クナイが釣れた」
巻藁に突き刺さったまま岩場に持ち上げられ、ビチビチと巻藁から抜け出そうとするクナイを引き抜く。手の中で逃げようとするそれを掴み、しばし眺めてからアイテムボックスの中へポイ。
相性が合えば使える武器達と言っても、基本的に聖獣頼りなんだから武器とまで合う合わないがあるのはちょっと厳しい。しかも、嫌われても、好かれすぎても『呪われた武器』のように装備から外せなくなったり、逆に身体能力まで下げられたりするらしいし……それなら普通の武器使って聖獣愛でてるほうがいいよね。
「えー……、まず間違いなくこの島が一番難易度の高いところだと思います」
奇しくも、専用掲示板の人達と全く同じ結論に達していると知ったのは、コメントで指摘されてからなのでした。
ちなみに、ジンはカジキに興味津々。アカツキとオボロは昼寝中。シズクは海の中が気になった私の指示で一度海に入ったが、どうやら『刃物が危なすぎて泳げない』という結論になったもよう。自分の鱗を尻尾で指して首を振っていたので、多分傷がつくレベルでうようよと刃物が泳いでいるんだろう。
スリップダメージ扱いなのか、はたまた溶岩の上とかみたいに歩くだけでダメージが入るダメージ地帯扱いなのか……多分後者かな。
体の大きくて、乙姫ちゃんイチオシのサメさんならともかく、対策をしないと上陸すら困難なようだね。
どうやら、サンゴさんや乙姫ちゃんに聖獣を借りなかった人はダメージを受ける海原地帯を突っ切ってくるか、刃物のダメージが軽減されたり無効になる装備品を聖獣につける必要があるみたい。
……あれ、そんな中で普通に泳いでるカジキっていったい…………なに? なんなの??
ギャグを挟まないと死んじゃう病かなにかか???
ギャグを挟まないと死んじゃう病かなにかか???
最初は真面目に釣り回やる予定だったんです。どうしてこうなった。
なお、釣り竿は500ゴールド。エサの巻藁は100ゴールドです。
エサの巻藁とかいうパワーワード。なんだこれ。




