今日も緩やかに死んでいく。
今日もまた
蠢く亡者が揺れている。無数の列を連なって、縦にも横にも縦横無尽に敷き詰められている。
長方形の箱に入る限りに。箱は六つ連なって、決められているルートを繰り返して進んでいく。
俺もその中の一人。無数の列に埋もれながら、この箱に揺らされている。息苦しさを感じ、深呼吸すると、亡者共の視線がこちらに向き、煩わしそうに、睨め付けるように、見てくる。
目は口ほどに物を言うと言うが、あまりにも露骨すぎるやり方だ。文句を言おうにも、この嫌な雰囲気は一人で覆すのには、無理だ。いつだって、少数派は切り捨てられる。だから、止めた。
そうすると、興味をなくしたように視線は戻る。或いは、それでいいんだよと言わんばかりに満足そうに鼻を鳴らしたりする。
一体全体何のマウントをとりたいのだろう。優越感か、同調圧力の犬めと心の中で吐き捨てってやった。
口に出して言えないから、惨めに感じて泣きたくなった。
一体何時からだろうこんな風になってしまったのは、昔はもっと夢を持っていたのだ。無限大にも思える夢を。今はもう風化して残骸さえ見当たらない。子供の頃に何になりたいかなんて、もう口に出して言えないのだ。言えるものか、叶わないと分かっているのに、ただただ虚しいだけだ。こんな人生に何の意味があるのかと問いかけられたら、応えることが出来ない。そんなの俺が一番教えてほしい。
ここにいるのは、そんな下らない奴等の墓場だ。
もう何も出来ない奴等の負け犬共の有象無象の墓場だ。
このまま延々と続けていくのだろうか。何時終わるか、死ぬ時か、何をどうしてそうまで生き急がなければならないのか。このまま死ぬまで続く無為を行うのなら、いっそのこと皆好きなことをやればいいのだ。好きなことをやって滅ぶ方が、無為を行い続けて死ぬよりかは幾分かはいいだろう。そんなことなど出来やしないが。死にたくないだろう。
ああ、本当は分かっている。どうしてこんなことになっているのかを。挑戦しなかったからだ。勝手に諦観を覚えたからだ。上を見ず下だけを見ているからだ。
無理無茶無謀と嗤われながらも、本気で諦めなかったやつだけは最高に成功するだろう。
安定を求めて、それが唯一の正解だと思い込んだ堕落が、この末路だ。普遍を盲信した成れの果てだ。
いっそのこと訳の分からん超常現象が起きてしまえばいいのに。自分で何も起こす気はなく、他人に理由と行動を求めた。怠惰なことだ。
下らない言い訳と世迷い事を考えている思考を断罪するように、成れの果てにそんなことを許さないと断言するように。
長方形の箱が目的地に着き、開いていく、蠢く亡者の群れは流れるように吐き出されていく。
亡者は誰一人として区別がつかない。有象無象の無為には、個別がいらないからだ。
ここはまるで、世界の終わりの景色だ。
鳥の鳴き声は天使のラッパなのだ。
俺たちはこうして緩やかに死んでいく。
緩やかに死んでいく。