0.プロローグ
前に投稿したのを改変して始めました。
暗闇から銀の光沢が向かって来る。
避けられない。
視界がモノクロに染まる。
………。(最初から、この結末は予測出来ていたな。)
「こちらの処理は完了しました。これから帰還します。」
横たわった俺の隣で、男が電話をしている。
意識が遠のく。
「て…ずど……に…………す。」
(くそ、もう意識が……。)
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2156年。
担架に乗せられて運ばれている俺は病人ではなく、これからゲームをする、ゲーマーという奴だ。
2153年、再生可能な光合成発電などの発明により、エネルギーは人間社会において完璧なサイクルを実現した。
しかし、微量のキャパオーバーが起きたため、支給対策が練られた。
その結果、ロボットなどの台頭によって仕事を無くしていた人、通称『無職人』を脳を稼働させたまま冷凍保存する処置が取られた。
実を言うとこの無職人、人口の99%以上の占め、就職している人、つまり『有職人』はなんと1%以下という極めて少ない数値になっていた。
何故、この状態で社会が機能しているかと言うと、先程も述べたように、ロボットが人間の職業を根こそぎ奪っていったからである。最初は、面倒な作業をロボットが手伝う程度の物だったが、技術の進歩により、農業や、工業、サービス業まで、幅広い職業の役割が出来るようになっていった。
そして段々と人間はやる事を無くし、最終的には、娯楽産業、一部研究職と、国家代表くらいの仕事が無くなってしまい、その僅かに残った職にあぶれた者は、無職人となってしまい、今に至る。
しかし、無職と言っても、そこまで卑下するような事は無い。人口の1%以下しか就職する事は出来ない。それこそ、血の滲むような努力をしたところで、その中から、宝くじで選ぶような物だ。しかも、もしも就職したとして、何になる。無職でも、国から毎月、電気、水道、そして、生きる為に必要な食べ物一式と、少しの金が貰える。わざわざ働く意義がない。働いても、家族の誇りになるだけ、ただそれ以上でも、それ以下でもない存在だ。
教育に関してもそうだ。前は、ロボットが授業していたそうだが、30年前からそれも無くなった。頭にINTパッチという物を直接埋め込む。そうすると、脳と直接交信して、寝ている間に学習してくれるらしい。だから、30年前からは、いつのまにか話せるようになったし、いつのまにか、国数理社は出来るようになったって感じだ。専門の知識は専用のINTパッチを買えば、手に入る。祖父の代の人みんなが『知識が買える時代になったか…』と嘆いていたのはこの事だ。
話を戻そう。人類は3年前に、エネルギーという最大かつ最も重要な問題を解決した。詳しく言うと、酸素を吸収し二酸化炭素を排出する時のエネルギーと、酸素を排出し二酸化炭素を吸収する時のエネルギーどちらも電気エネルギーに変換可能にした。
この光合成発電のお陰で今まで木や、石油などを、燃やしていたのをする必要が無くなった。しかし、ある問題が起こった。
それは、光合成発電はその永久機関性が故に、あまり発電量が多くない。
その為、今ある石油火力発電などを建て替えると微妙に電力が足りないことがわかった。
発電量はこれ以上増やせない為、やむなく消費電力を減らそうとするが、無職人はやる事がゲームなど娯楽しか無いため、電力の消費削減は難しかった。
しかも、ゲーム機本体の消費電力は科学の発展と、共に上がっていき、収まる様子が無い為、ある策を打ち立てた。
それは、『Plan World Game』と言うもので、それは、脳以外を冷凍保存し、無職人を安全な場所に隔離し脳の意識をVR世界、つまり電脳世界に置くという方法だ。
これには、3つ程メリットがある。まずは、人口の99%以上を占める無職人のエネルギーの削減。次に、有職人の地位を上げること。そして、一つの目標を達成するために世界を一つにするということだ。
と言ったわけで、俺は、現実世界を捨てて、電脳世界へログインする途中なのだ。今も麻酔で頭が怠い。まあ、いいや、寝てもあまり……変わらない……よね?