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3.幼少期②

 特訓を開始してから6ヵ月。


 今日も何時もの様に外出用のワンピースに着替えた私は意気揚々と家を後にした。


 我が家の門まで歩いた所で、特訓の成果である魔術を発動する。

 家に置いてあった魔術書を読んで覚えた物で、風の初級魔術『敏捷上昇(クイックムーブ)』と言う魔術だ。


 それを発動し、軽くなった体を確かめる様に解した後、一気に駆けだした。

 以前は私が特訓している森までは、大凡5分弱と言った所だったが、この魔法を覚えてからは2分を切る様になった。

 竜だった頃の移動速度とは比べるべくもないが、ある程度はマシになっただろう。


 さて、森へと到着した所で早速何時もの特訓を開始する事にする。


 ここ数ヵ月の間に重点を置いたのは、魔力のコントロールだ。

 魔術使用の基礎とも言うべき訓練だが、竜だった頃の感覚が残る私にとって結構な苦行となった。

 まぁ苦労の甲斐もあってか、ある程度は慣れる事が出来たので取り合えずは及第点と言う所か。


 竜だった頃は体内に膨大な魔力を誇っていたが、人という小さな身に宿る魔力は少ない。

 どうやら体の成長と伴に増えている様だが、これまでの体の成長と比例して視た所、それは微々たる物の様だ。

 しかし、ここ数ヵ月で行った魔力のコントロール特訓や、魔術の試し打ち等を始めてからは目に見えて体内の魔力量が増えていた。

 どうやら人の体は魔術を使えば使う程成長するらしい。

 上限があるのかどうかは解らないが、今の所成長は続いているのである程度は気にしない事にする。

 成長が止まったら、その時はその時だ。新たな特訓方法でも探せばいい。


 まぁ後々の問題は未来の私に任せて、今出来る事を全力で取り組もう。

 そう思考に決着をつけ、何時もの様に特訓に励むのだった。


 暫く特訓をした所でふと風に違和感を感じる。

 ここから少し離れた場所から何かが此方へと向かって来ている。

 風竜だった頃の名残とも呼べるモノで、私は近辺の風の動きに敏感だ。『風の知らせ』とでも言おうか。

 まぁ昔と比べて大分範囲が狭まってしまっているが、自身の成長に比例して索敵範囲は多少広がっている様だ。

 それはさて置き、件の『風の知らせ』に引っかかったのは走る速さからして、獣型の魔物か、ひょっとすると唯の獣かもしれないが……。


 さて、数分もすればここに辿り着くだろうから答え合わせは直ぐだ。


 そして数分後、姿を現したのは、レッドウルフと呼ばれる赤い毛並みをした狼型の魔物が二匹。


 相手は私の姿を見るなり臨戦態勢に入り、牙を剥きだして威嚇してきた。


 確かレッドウルフは下級に位置する魔物だった筈だ。竜だった頃はこんな弱い魔物に喧嘩を売られる事など皆無だったのでかなり新鮮だ。

 まぁ今の私の姿ならば舐めれるのは当然だろう。私は動かず、ジッと二匹の様子を観察する。


 数秒のお見合いの後、痺れを切らした一匹が私へと躍りかかる。

 大口を開けて牙を剥きだし、文字通り私に飛び掛かる恰好だ。


 その大雑把とも言う攻撃を私は『敏捷上昇』を発動して悠々と避けた後、側面へと回り込んで『風刃(ウィンドブレード)』を放つ。


 風の刃は着地後のレッドウルフにあっさりと命中し、その首を刎ね飛ばした。

 血を吹き出して横たわるレッドウルフの首無し死体を一瞥した後、すぐさま逃走という選択をした残る一匹へ『風刃』を放とうとした所で私は動きを止めた。


爆炎(フレイム)!!」


 突如響き渡る声と同時に、逃走を図ったレッドウルフの体は地面から吹き上がった炎に包まれた。

 数秒後、炎が止まり、後に残るのは肉の焦げた匂いと真っ黒な狼の死骸。

 そして黒い炭と化した死骸を踏みにじる様にして姿を現したのは、私の姉、ヴィアリスだった。


「この下等生物がぁ!

 私の可愛いウェンディに喧嘩を売って、無事に帰る事が出来る訳ないでしょうっ!」


 私の色より少し暗い青緑色をした髪を振り乱し、何時もは温和な笑みを浮かべて私を見ているその優し気な黒い瞳は完全に怒りに染まっている。

 そして怒声を上げつつ消し炭と化したレッドウルフを更に踏みにじるという、何時もの姿とはかけ離れた姉の姿に私は呆気に取られていた。

 見事なオーバーキルだ。


「あの、姉様、もうその辺で……」

「はっ……、私とした事が取り乱しました……」


 もう遅い気もするが対面を繕い、上品に笑う姉の姿を見てふと思う事があった。

 さきの魔法は中級とされる火の魔術だ。

 別段難しいと言う程の魔術ではないので、姉の9歳という年齢を考えてみても有り得ないという程では無いと思われる。

 しかし、あのタイミングで横槍を入れられたという事に違和感を覚えた。

 ずっと見ていたのか?

 私の『風の知らせ』を潜り抜けて?

 範囲や効果は弱くなっているが、この技能には風竜としてある種の誇りを持っている。

 それを人の9歳の子供とされる姉が掻い潜るとなると、並大抵の隠密スキルではない。


 黙り込み、ジッと姉を見る。

 すると姉はダラダラと汗を流しながらフイッと目を反らした。


 まさか……。


「アグニス……?」

「……お、お久しぶりでございます?魔王様……」


 私は前世で唯一、私の『風の知らせ』を潜り抜けた事のある配下の名前を口に出した。

 炎帝という派手な二つ名を貰いながら、暗殺や密偵等の隠密スキルも極めていた有能な配下の名前を……。

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