閑話・朝食
ーマクベス商会本部・食堂ー
ついに念願の故郷の味、その1つの再現に成功した、今日は記念すべき日だ。
いつも通りの朝だった。だった...ハズだ。
我がマクベス商会では朝礼を兼ね、幹部は揃って朝食を取る。
その和やかな席はマクベスの一言で凍りついた。
「商会長...今、なんと?」
商会のNo.2いやもう実質全権持ちの完璧超人、王族のごときテーブルマナーを誇る副会長マールさんが匙を落とした。
...王族の食事見たことないけど!
いや、明日から朝食は各自で取らないかって言っただけなんですけど!何だこの空気!?
ちょっと人数も多いし集まるの辛くない?
「つまりこの場に相応しく無い者が?」
──各々の発する気で空間が軋みスープが波打ちガラスが震え皿に亀裂が走る。
いやいやいや!なんでそうなる、みな私の大事な人ばかりだ!勘弁してお願いやめて土下座?土下座しますか!?
「「「「「だいじ...」」」」」ピタァ
でもほらやっぱテーブルちょっと狭くn
「本日中に新調致します」
食堂そのものがちょっと狭くn
「本日中に拡張致します」
中庭の訓練場の物音とかほら
「ただちに粛清致します」
いや実は訓練音大好きなんだよね、うん
「左様でしたか、他に何か御要望はございますか?」
決まった時間に集まるの辛くない?
「その程度の者はこの場にはおりません」
...(´ฅωฅ`)
わかりました、白状いたしましゅ()
今朝厨房より報告があり私の故郷の食べ物の再現に成功したと。
「それは...おめでとうございます?」
「(笑顔でバンザイ)」
「師の故郷と言えばあの海を越えた遥か遠方と聞きますな、実に興味深い」
「へぇやるじゃねぇか料理長」
「おめでとうございますアニキィ!」
「それはもしや聖典にある神界の...?」
いやそんな大層なもんじゃない、ただ私の朝にはかかせなくてな。ただこの食べ物問題があって...
「今この場に無く異国の物と言う事は形状か匂いか味にクセが。故に朝食の席を分けるというお話になったという事でよろしいでしょうか?」
あ、ハイ満点解答です怖
「であれば...今生最大の侮辱と取ります。」
口の端から血を流すマール
「随分と舐められた...ものだなッ!」
握りしめた拳から血を流すクリス
「私の信仰は否定されました...」
血涙を流し始めるティア
「(信じられないもの見る目)」
驚愕するリーディア
「この俺を温室育ちのお嬢ちゃん達と一緒にされちゃ困るな、どんなゲテモノだろうg」
ギリアム、お前の事は忘れねぇよ...
あ、ボロ雑巾(旧ギリアム)が窓からログアウトした。
「あー、まぁ落ち着けてめぇら。ブツ見てからでも遅かねぇだろ?」
血管ビキビキで鼻血出てますよアリシアさん...落ち着いて...ヒェッ
「一理ありますね、ニコライ料理長。この件私は報告を受けておりませんが何か弁明はありますか?事と次第によっては...」
「しょ、商会長より直々に口止めを...」
うっそこっち来た!?いや確かに内緒でとは言ったが
「許します、以後も励むように。単刀直入に例の品、現物はありますか?ご禁制品という訳ではないのですよね?」
許されるの?商会長が言えばなんでも通るんか???独裁かよ草(※通ります)
「本邸の厨房と食品衛生を預かる者として...お、お断り致します」
──各々の発する気で空間が軋みスープが波打ちガラスが震え皿に亀裂が走る(2回目)
ま、まぁ待てニコライ!気持ちはわかるしプロ意識は汲むがそこを曲げてなんとか!
娘さん今度結婚するんだろ!?
「ですが会長...!!!」
あー、うんわかった。じゃあ今この瞬間より食堂は移転!この部屋は研究室とする。
...で...どうかな?
「研究素材であったと...?」
...朝食だっつってんだろ速やかに保温庫から持ってきて中央配置、機密保持の為退室しろ(半ギレ
「クリス、卿を見込んでお願いがございます」
「それは副商会長としてですか?」
「...騎士クリスの友、マールとして」
「伺いましょう」
「私が万が一商会長の御朝食に対し失礼な態度を取った場合、速やかに介錯をお願いします。」
「拙の腹の後で良ければ」
なんで朝飯如きで仲間を失わねばならんのマジ意味不、絶許。
「ですが肥えや下水道、孤児院、果ては地竜討伐など我々には想像すら叶わず。これまでの全てにおいて貴方は正しく。
無知な我々に『次』は無いのです、無能には無能なりの矜恃がございます。」
いや、あのほんと私全能のナントカさんじゃないからそれ全部たまたまだから!
君らが無能なら私はカスや、カスにもならん。
それとな...食いモンは本当に美味いと思う人の口に入るべきだよ。
確かに健康と美容に良いn
「料理長ォォォ!あるだけ持ってきてください!今すぐ!!走って!ハリアーッ!!!」
「待て待て待て待て独り占めする気かマール!この盟友アリシアさんにも共有すべきだと思うなァ!?」
「びびびびび美容とか特に興味ござらんが師の朝食は我も頂きたく!」
「!!!...!!!(挙手して跳ね回る)」
「神界の食...最高司祭である私にも権利があるはずです!!」
「報告!ニコライ料理長が休職願いを出し逃亡しました!さらに冷蔵室に踏み込みました所この『腐敗した豆』しかなく...」
「「「「「「......チラッ」」」」」」
綺麗に腐ってるだろ。嘘みたいだろ。発酵って言うんだぜ。それ...
これを生卵(禁忌/特殊処理済)と特製のタレでこう混ぜて(ネチョォ...)ご飯にこう...モグモグ
「...(口周りが糸まみれになり無言の抗議)」
糸が気になるなら玉ねぎのみじん切りと卵と麺つゆで割ると良いぞ、見た目がさらにアレになるが、ただマナーとか無理だろこれ
「ふふっマナーより大切な物もございます、野営で学びました。」
いやマールさん、全然テーブルマナー消えてないから。ナイフとフォークでそんなオシャレに納豆ごはん食える???
「もぐもぐもぐもぐもぐもぐ」
おいクリス、それ私の茶碗じゃないか?
いつ取られたんだ?ウソだろ箸も無ぇ...
「間違いなく栄養価も高い、素早く食えるのも良い戦闘食向きだ。ただ魔物と戦るなら匂いが...」
「【消臭】」
「...おい、ずるいぞティアこっちにもくれ」
「ズルズルズル...(もはや啜ってる)」
あの、私の分は???おい!?
この後マクベス商会から副会長手製の腐った豆が献上されるという異例の嫌がらせを受けた国王が、憤慨した毒味役を蹴飛ばして厨房に走りドカ食いした挙句、大絶賛するという異常事態を経て異世界納豆は製造と販売が決定した。




