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94 次元が違う

 どうしようもなにも、ここまで包囲されたら「イエス」しかない。「ノー」と言うヤツは悪魔より最悪のヤツだろうよ。


「お売りするのは一向に構いません。元々資金を得るために三賀町(さんがまち)で披露しましたからね。ただ、飛空船と同じく魔力で飛ぶもの。花木村(はなきむら)から三賀町(さんがまち)まで四級魔石、四つはかかります」


 優月(ゆうげつ)で約1000。朝日で約2200。重量が重なれば消費も増える。いくら大手でも運用するのら大変だろうよ。


「ここから三賀町まで四級魔石が四つ!?」


 と、サイレイトさんが驚きの声を上げた。やはり消費量が多いか……。


「なんですか、その燃費のよさは!?」


 あれ? 驚きのベクトルが逆でした!?


「飛空船なら一級魔石を使いますよ!」


 いまいちわかり難いが、五十メートルもある物体を空に浮かばせようとしたら燃費のよい乗り物ではないのは確かだろう。


「飛空船に詳しくないので比べられませんが、魔力さえあれば飛び続けることは可能です」


「す、凄い。カイナーズでも給油は必要なのに……」


 カイナーズ? 給油? 燃費って言葉にも疑問に思わなかったし、飛空船とは違う技術があるのか?


「あ、失礼。魔族は我々とは違う文化と技術を持つので」


「ま、魔族とも交流があるので!?」


 世界のどこかに魔族と呼ばれる種族がいると言う話は有名だが、この国ではお伽噺レベル。前世で言うなら鬼ヶ島に鬼がいるみたいなものだろう。実際、そんなお伽噺があるしな。


「ふふ。世界は広いですからな、我々のような人とは違う種族はたくさんいますよ。海の中も何千何万と言う種族が生きてますからね」


 ファンタジーな世界だから否定はしないが、ゼルフィング商会は噂通りの商会のようだ。


「……ワールドワイドな商会だ……」


 そう呟いたら、サイレイトさんが驚いた顔をした。


「……ワールドワイド、ですか。ベー様と同じことをおっしゃる……」


 ベー様? その人がワールドワイドと言ったと?


「ゼルフィング商会の設立者で自由気ままな方です」


 それで完結する人なのか、それ以上、ベーと言う人物のことは口にしなかった。


「え、えーと、それで、乗り物はいかほどでお譲りしていただけるでしょうか?」


 おっと。本筋からズレてたな。


「まずは、わたしが所有しているのは優月(ゆうげつ)朝日(あさひ)天烏(てんう)の三種ですが、どれをご所望で? どれも魔力があれば航続距離は伸びます」


 万能素材で三機の模型を作り、卓に置いた。


「どう言う魔術ですか?」


「錬金術のようなものです」


 どうと訊かれても困る。変身能力の応用ですって言ってもわからんだろうからな。


優月(ゆうげつ)は二人乗りで中距離ならこれでしょう。価格は金銭千枚。朝日(あさひ)は長距離用輸送を目的にしたもので、ここの貨物庫を改造すれば三十人までは乗せられます。価格は金銭二千二百枚。天烏(てんう)は、一人用で短距離用で積載量も少ないので金銭三百枚です」


 価格は決めていた。あんまり高いと買い手がいないからな。


「……随分と安いのですね……」


 あれ? 安いの? 結構ぼったくり価格なんですけど!


「ええ。まあ」


 と言うのが精一杯。しくじったようです。


 だが、それを見せたらつけ込まれる。さも当然ですが、って顔を貫き通す。


「……この三つだけですか? 他にも売っていただけるのでしょうか?」


 サイロさんが声を震わせながら尋ねてくる。


「そうですね。魔力と素材があれは造ることは可能です。優月(ゆうげつ)なら一級魔石、ニ十八個くらいでしょうか? 普通に造れば十日。魔力を惜しみなく注ぎ込めば五日で造れます」


 さらにぼったくりを重ねる。


「……儲ける気はあるのですか……」


 目を丸くするサイレイトさん。


 あれぇ~? まだ安いの? ってか、ゼルフィング商会ってどんだけだよ!? 一級魔石一つで死ぬまで豪遊できるものだぞ! ニ十八個って城建つぞ!


「タカオサ様。この乗り物をお譲りください。お代は金でよろしいか? それとも魔石でよろしいか?」


 なんかリュウランさんも即決買いだ!


 ゼルフィング商会もオン商会も次元が違い過ぎるよ! なんなんだ、この商会は!!


 次元の差に心が折れそうになるが、傭兵時代に心が折れそうなことは何度もあった。堪えて乗り越えてきた。命の危機が訪れたわけじゃないんだ、踏ん張れ、おれ!


 動揺せず、表情も崩さず、笑みを見せる。


「魔石と金でいただければ幸いです。大陸から仕入れたいものもありますので」


「仕入れたいものですか。その場合はオン商会をご利用ください。大陸にあるものは大抵ご用意できますので」


 それは嬉しい限りだ。大麦は絶対に欲しいからな。


「では、一級魔石三十個と金銭五十枚でどうでしょうか? それと、朝日(あさひ)でしたか? これをニつ、いえ、五つ買わしてください! これは手付金です」


 と、金の延べ棒を五つも出しやがった。


「タカオサ様。オン商会のあとでよろしいのでゼルフィング商会にもお売りください。造った分だけ買わしていただきます」


 と、極大の魔石四つと金の延べ棒を……十五本も出しやがった。


 ク、クソ! 心が砕けそうだわ……。

今、ギリギリで投稿してます。投稿できないときはごめんなさい。

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