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光の家族、膨大な魔力で世を救う!  作者: タカハシあん


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85 赤目

 赤目とは蛇の魔物であり、それほど珍しい魔物ではない。


 山の水場ではよく見れるし、毒もなく動きが鈍いので山での食料には持ってこいだ。サイズも二メートルくらいで、結構旨いから猟師もよく狙う。だから、猟師を抱える村ならまず増えないし、驚異でもないのだ。


 だが、狩らないでいると赤目は凶悪な蛇と化す。


 魔物と呼ばれるだけあり、魔を食らうと変な進化を起こし、巨大化したり凶暴化したりと、人の手では負えないくらいの存在となってしまうのだ。


 ……それを狩る傭兵が化け物といわれる所以だがな……。


「赤目が現れる原因は、昔からそれです」


 驚く村長代理のヨシアに言ってやる。


 昔から知られていること。だが、人は平和になったり、時が過ぎたりすると忘れる。年寄りの言葉を軽く見て、禁忌を平気で破るのだ。


「白目で赤目を増やすアホウかな。傭兵の間ではよく知られた言葉ですよ」


 面と向かっては言わない。酒の席でアホな村人を嘲笑う言葉だからだ。今言っちゃったが。


「……返す言葉もない……」


「なに、それも昔からあること。あなたが特別アホウと言うわけではありませんよ。閉鎖的な村ではそれが当たり前ですからね。もっとも、それで滅んだ村も数知れず。滅ぶ前に傭兵団を雇おうとしたあなたは賢いほうですよ」


 金を惜しみ、人を蔑ろにし、後手後手に回り、消えていく。珍しくもない話だ。


「それで、年寄りを捨てたのはいつからで? 間隔はどのくらいです?」


「去年の秋に十二人。春に八人です」


 寒村では珍しくない数字だ。だが、それほど貧しい村とは思えない。空から見たとき、沼が枯れているとか、蓮根が不作になりそうな感じはなかった。


「絵に描いたようなアホウですな……」


 よほどのことがなければ年寄りは捨てたりはしないし、年寄りも自らは決断しない。年寄りだって立派な労働力だからだ。


 ましてや、連坊華(れんぽうげ)の選別はベテランがものを言う。捨てるなんて持ってのほか。村長が捨てろと言わない限りはな……。


「不知火様にはお見通しのようで……」


「古くから言われたことで、何度か経験したからです。あなたも三回も経験すれば学びますよ」


 村が滅びなければ、だがよ。


「まあ、村のことまで口を出す気はありません。で、赤目は何匹まで確認してます。大きさはどのくらいで?」


「四匹まで確認してます。大きさは人を丸のみできるほどです」


「四匹とも?」


「はい。そのうちの一匹は凄まじい水を吐いてきました」


 まあ、ほどよく育ったってことで、飛び抜けた話ではない。昔は八つの首を持つ大蛇(おろち)になったものもいたそうだからな。


「となると、人馬組(じんばぐみ)からも被害は出てますね?」


 枯れた年寄りではそこまで育たない。活きのよい餌がなければ育たない。下手したら村まで襲いにきてるかもな。


「本当によくわかってらっしゃる。はい。もう五人、食われてます。他にも沼に出た者も……」


 わかっていても「はぁ~」とため息が出る。愚かにもほどがあるだろう。気づけよ。人を出すなよ。対策しろよ。クソが。


「そこまで大きくなり、冬を越えたとなれば子は産まれているでしょうな。最近の日のよさとカグナ鳥の渡りを考えたら、まあ、想像し難いものがありますね」


 万能変身能力がなければ断っているところだ。


「人を食らう赤目は四匹。これを退治する場合、通常なら傭兵は八から十人。確実に倒すために一匹一匹相手します。人を食らうような魔物は知恵をつけてるから。それは、手こずっているあなたならわかるでしょう?」


 人馬組(じんばぐみ)総出でも退治できず、逆に食われているのだがら。


「……ええ。為す術もありませんでした……」


「傭兵十人として、状況により退治は数日かかる。もちろん、手段を問わないのなら一日で可能ですが、周りは被害甚大。お勧めはしません。ですが、短期解決を望みならやりますよ」


「……それは止めてください……」


「賢い判断です。そうなると、数日かけて倒すことになる。その間の食事と休む場所を必要となります。これは、村で提供したほうが安上がりですが、どっちにしろ金はかかります。もちろん、成功報酬とは別ですよ。一緒にしても報酬を上げられるだけですから。ちなみに、ケチるのは止めておいたほうがいいですよ。ケチる村に傭兵はきたがらないですから」


 傭兵にも情報網はあり、いろいろ交換し合っている。ケチる村の依頼は極力避け、三流傭兵団に押しつけたものだ。


「通常、まともな傭兵団なら成功報酬は一人金銭二枚。必要経費。食事と寝床は村持ち。ざっと計算して金銭二十枚はかかるでしょう」


「……き、金銭二十枚……」


「まともな傭兵団なら、そんなものでしょう。ですが、がめつい傭兵団では金銭三十枚は要求するでしょうね」


 そう言うのは実力のない傭兵団が多く、なんだかんだと報酬を吊り上げるものだ。逆に騙される傭兵団もいるがな。


「おれがもし、この依頼を受けるとしたら金銭十五枚。狩った赤目四匹はこちらでもらう。ってことになります」


「維持費と食事は?」


「今日中に終わらせるので食事はいりませんし、専用の武器があるので消耗は微々たるもの。要求するまでもないです」


 相手が魔物なら神無月(かんなづき)で充分。おれは傭兵時代から誠実価格でやっています。


「で、では、それでーー」


 と、興奮する村長代理のヨシアさんに待ったをかける。


「話はまだです」


「た、まだとは?」


「これは経験から言うのですが、後手後手に回り、にっちもさっちもいかなくなった場合によくあることなのですが、こう言う場合、かなりの高確率で五匹目がいることがあります」


 そんなどんでん返しいらねーんだよ! と突っ込んだこと数知れず。世界の常識とばかりに出てくるのだ。


「四匹退治する報酬は金銭十五枚。成功してから支払う。赤目はこちらのもの。こちらが死んだ場合は、装備はそちらのもの。もし、五匹目六匹目と出たら一匹につき金銭四枚を支払う。日暮れまで出てこない場合は依頼終了とする。赤目の子はそちらで排除。これを証文として二枚したためる。で、どうですか?」


 証文を作る傭兵団は少ないが、おれは知り合った商人から、大切な商売をするときは証文を作れと教わり、傭兵時代は必ずそうしていた。


 まあ、小狡い村長とかいて、損をしたこともあるが、それで大きな問題は回避できたのだからやらない手はない。


「……わかりました。それでお願いします」


 村長代理のヨシアさんが深々と頭を下げた。


「あなたとは、是非、長い付き合いをしたいものです」


 できる人とは仲良くしておくほうが吉だからな。

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