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光の家族、膨大な魔力で世を救う!  作者: タカハシあん


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65 薬

「ほぉう」


「へー」


 清酒を飲んだ二人の感想、と言うか、反応だった。


「口に合ってなによりだ」


 清酒は飲めなくはないが、やはりおれはビールがいい。とよく冷えた缶ビールを出した。


「それも酒か?」


「ああ。大陸のエールってやつの一種だ」


 大陸のエール、知らんがな。


「エールか。わたしは好かんな。酒は米がよい」


「あたしゃ葡萄酒が飲みたいね。また持ってきて欲しいもんだ」


 さすが港町にいるだけはある。エールも葡萄酒も知ってるか。だが、その口振りからして滅多に入ってこないものなのか。残念だ……。


「……美味そうに飲むのぉ……」


 米がよいと言いながら酒はなんでも好きな玉緒(たまお)さん。わかっているって。


 ここでよく飲み交わしたもの。酒の好みはわかっている。


 瓶ビールとガラスのコップを出し、注いで渡してやる。


 世話婆(せわば)は? と目で問うと、もちろんとばかりにニンマリと頷いた。


「うほっ。冷たいね、こりゃ」


「風呂上がりに飲むとさらに旨い」


 生きてる喜びを感じる瞬間だ。


「それはよいな。紫波村(しなみむら)に置きたいものだ。どこから仕入れた?」


 それを待ってました、とニヤリと笑う。


玉緒(たまお)さんに渡した酒とこの酒は魔道具で作り出した」


 訝しく顔を歪め、互いを見た後、おれを射殺さんばかりに睨んできた。


 ……昔のおれなら逃げ出していただろうな……。


「本当に変わったね、お前さん。それに、なんだい、これは? わたしの魔力、吸われないかい?」


 妖力のような魔力だが、魔力は魔力。いただけるものはいただきます、と吸わしてもらいました。860もの魔力、ごっつぁんです。


「今のおれは魔力を吸い取る化け物なんで、いつでもかかってきてください」


 千でも二千でもドンとこい、だ。


 はぁ~、とため息を吐く二人。まあ、飲んでくださいと二人のコップにビールを注いだ。ほれほれ、飲みんさい飲みんさい。


「悪鬼羅刹の不知火め!」


 フフ。懐かしい罵りだ。昔はよく山賊から言われたものだ。


玉緒(たまお)さんから言われるなんて光栄の至りだよ」


 たぶん、玉緒(たまお)さんは、その悪鬼羅刹の権化だったと思う。妖気混じりの殺気は化け物以上。並みの者なら玉緒(たまお)さんの目を見ただけで心臓が止まるだろうよ。


「フン! なにが目的だい?」


 拗ねたように訊いてくる玉緒(たまお)さん。意外と可愛いところがあること。


「なに、商売をしませんか? ってことさ」


 この二人を敵にするとか、考えただけでもゾッとするわ。


「商売、ね。つまり、清酒をうちに卸したってことかい?」


「話が早くて助かるよ」


 清酒の取引は法で縛られている。が、それはそれ。蛇の道は蛇。抜け道はあるものなのさ。


 犯罪と言ってしまえば犯罪だ。捕まれば物理的に首が飛ぶだろう。だが、商売相手がアンダーグラウンドの住人なら法など関係ない。


 まあ、表向きはあるが、帳簿は裏仕様。決して外には出ないものだ。


「わたしらにも仁義はあるんだ、いきなり仕入れ先は変えられないよ」


「わかってるよ。だからまず、玉緒(たまお)さんと個人的に商売しましょうや。余ったら裏で流すよし。表に流すもよし。玉緒(たまお)さん次第。儲けの三割はおれ。残りはそっち。旨い話だろう?」


「旨すぎて胃がもたれそうだね」


 そう言ったのは世話婆(せわば)。金を握ってるのはこっちか。まあ、そう細かいことする性格ではないか、玉緒(たまお)さんは。


「なに、今後とも華絵屋(はなえや)さんとは仲良くしていきたいし、頼みたいこともある。そのお世話代さ」


 三賀町の裏の実力者。正義だ悪だと割り切ることができない時代。上手く付き合っていかなければ利用され、捨てられるだけ。ならば、弱者は強者にすがろうではないか。


「……黒いのが顔に出てとるぞ……」


「それは悲しいな。心は光に満ちてるのによ」


 見せられるのなら見せてあげたいぜ。クク。


「……まあ、よい。これだけ美味い酒が飲めなくなるのは悲しいからな。で、いくら用意できる? 一日ーー」


「ーー三十本は欲しいね」


 玉緒(たまお)さんの言葉を世話婆(せわば)が遮り、本数を要求する。


「お、おい、ホクト。なにを考えておる?」


「姐やん、美味い酒は多く確保してたほうがいい。他に捕られるのも癪さね」


 世話婆(せわば)がそれだけ言うと、玉緒(たまお)さんが納得したような顔をする。なんだい?


「で、一日三十本は欲しい。可能かい?」


「おれは構わないが、さすがに馴染みのところから文句がくるんじゃないかい? 三十本は馴染みから仕入れるより多いだろう?」


 華絵屋(はなえや)が一日どれだけ酒を消費してるかは知らんが、三十本は多いはずだし、定数に捩じ込む数でもない。馴染みが乗り換えたと思っても怒鳴り込んできても不思議じゃないぞ。


「それはこっちの問題だ。お前さんが気にすることはない。ただまあ、毎日持ってこられても困る。お前さん、どうやってここまできてるんだい?」


「ちょっと変わった船でやってきてる。荷馬車よりちょっと大きいくらいだな」


「ああ。あれかい。若いのが噂してた空飛ぶ船ってのは。随分と豪勢な伝を手に入れたもんだ」


 結構な勢いでおれの噂は拡散しているようだな。


「まーな。大陸の貴族からとある礼でもらったものさ」


「はぁ~。そうだったな。お前さんは傭兵のクセに妙な伝をいくつも持っておるからなのぉ……」


 裏社会のドンほどではないよ。


「港に華絵屋(はなえや)の倉庫がある。家紋があるからすぐわかるはずだ。管理しているカナオと言う男に話を通しておく。明日から納めろ」


 明日からか。まあ、魔力はあるし、ハハルに運ばせればいいか。積み降ろしに行き来で一時間だろうし。


「金は一月毎だ」


「ああ。それで構わんよ。契約書はどうする?」


「うちは口約束だ。守るも裏切るも好きにおし」


 ほんと、裏社会は怖いところだ。


「それで、本題はなんだい?」


 サラリと口にする玉緒(たまお)さんに、思わず表情を固めてしまった。


「クック。まだまだ小僧だね」


「……うるせー、妖怪婆め……」


 そんなこと言ったら首と胴が別れ離れになりそうだが、どうしても言わずにはいられなかった。 

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