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54 吸魔弾

 考えてもいい案が出ないので、試しに採取ドローンを飛ばしてみた。


 まず正面から。魔力634を秘めたデクに近づける。と、バシ! と叩き落とされた。


 そう防御力がないとは言え、回避性能は優れている。でなきゃ、肉食の鳥に襲われる。そう言うのは群れでやってくるからな。


 なら、ステルス飛行だ、と透明にして飛ばしたが、なにか蜘蛛の巣のようなものに絡まり、動きを止めてしまった。たぶん、魔力を吸われたのだろう。


 ならば上からだ! とやったら狙撃されて墜落してしまった。


「鉄壁かよ。つーか、どうやって生きてるのよ、あいつら?」


「匂いで誘き寄せて魔力を吸い、死体は蟲に食わせる」


 なんともえげつない食物連鎖ですこと。そりゃ誰も帰ってこないわけだわ……。


「なにをグズグズしておる。お前なら問題あるまい」


 あるよ! 精神的に問題だよ! おれは猪武者でもなければ戦闘狂でもない。化け物を見たら普通に怖いと思うタダの人だわ!


「楽をしようとしてるお前が言うな」


 万能さんに任せれば難なく解決するだろうが、それでは翡翠(ひすい)と同レベル。自ら脳筋と言っているようなもの。頭脳派のおれには屈辱だよ。


 そうだ。今生のおれは頭を使って生き抜いてきた。タダ、力業で切り開くのは芸がないし、今後を考えれば対策案を出しておくのがいいだろう。


 まず、近接攻撃がダメなら遠距離攻撃。安全な場所から獲物を狩る、だな。


 となれば銃となるのは自然の流れ。だが、相手は木だ。一部吹き飛ばしたところで死にはしないだろう。


 大口径で粉砕する? それはそれでいいかも知れんが、デクに気がつかれて警戒される。まあ、どう警戒されるかは謎だが、自ら難しくする必要はない。


 枯らすは? それで魔力が消えたらマヌケなだけ。却下だ。


 目指すところは魔力奪取。デクの排除。安全に確実に、おれ丸儲けだ。


「……魔力奪取、ね……」


 そうだ。様は魔力を奪えばデクを無力化できるはずだ。


 人と植物(?)が同じかは知らんが、一気に魔力がなくなると貧血に似たような状態になり、さらに無理してなくすと命にかかわる。それで死んだ魔術士や傭兵を見たことがある。


「わからないのなら試すまでだ」


 まず、魔力を吸う弾を作る。


 デクが対処できない速度で、デクに突き刺さる感じで、一気に吸い取る。容量は万が一を考えて2000まで入るようにする。


 大きさはシャープペンの半分くらい。適当だ。


 次は、それを射ち出す銃だ。銃は詳しくないので、前世の記憶からそれらしいボルトアクションライフルを万能さんに選んでもらい、弾ーー吸魔弾(と命名します)を装填できるように作ってもらう。


 万能スーツを着てるので重さは感じないが、おれの体に合わせて作られているので持ち具合はいい。


 吸魔弾をボルトアクションライフルに装填。手前のまだ若いだろうデクに銃口を向ける。


 万能スーツさんの補助により、細かい計算やら合わせやらはいらない。標的に銃口を向けるだけ。


 引き金を引く。


 プスと軽い音ともに吸魔弾が発射された。空気圧縮方式なので魔力消費は微々たるものだ。


 標的まで一キロ弱。吸魔弾の速度は約七百。なにも知らなければ弾が潰れるんじゃね? とか思いそうだが、魔力20も込めた弾は見事にデクに命中。半分だけ突き刺さった。


 一瞬にして1900を吸い取った。なんで!?


「……おい、翡翠(ひすい)。予想以上に吸い取ったんだが……」


 万が一に備えてなければ失敗してたぞ。


「あいつらは根に魔力を溜め込むからな」


 それを先に言えや! クソ駄犬がっ!!


 もう一度、魔力反応を見るが、デクに秘める魔力は700前後を示している。なぜだ?


 地中にセンサーを向けると、魔石が実のようについていた。


 よくはわからないが、地中の魔石は魔力反応で捉えられないが、吸い取るときは一緒に吸われるわけか。万能さん、そこら辺を修正して、総合的にわかるようにしてくださいな。


 一瞬にして修正され、デクの全体魔力量がわかった。


「……三千前後かよ。お前、よく突破したな……」


 狛犬って、おれが想像するよりえげつない?


「不意討ちでデクを薙ぎ払い、一気に駆けて、二つか三つ食うのがやっとだがな」


 ……お前の食欲の強さに、一種、尊敬の念すら覚えるよ……。

 

「ま、まあ、嬉しい誤算。美味しくいただきます、だ」


 吸魔弾を射ち込んだデクの魔力はゼロ。見た目、萎びれた感があった。


 木としては成り立っているようだが、魔物とは死んでいるようだ。適当な判断だけど。


 また、なんかあると困るので5000まで吸い取れるように設定。百発作り、二十発ずつマガジンに収める。


 銃は連射できるようライフル銃の形にして、マガジンをセットする。


 形は変わったが、おれの体に合わせてあるので問題はない。


 確実に倒すために一体? 一匹? 一本か? まあ、なんでもいい。魔力容量を確認しながら吸魔弾を射ち込んでいく。


 それでもすぐに二十発を使い切り、マガジンを交換して射ち込む。


 角度の関係ですべてに射ち込むことはできないが、手前のデク、六十八……本を倒し、二十万もの魔力をゲットした。


「まあ、回収せんといかんがな」


 一つ一つ集めるのも面倒なので回収ドローンを三機作ってお任せする。


翡翠(ひすい)。警戒しながらいくぞ。辺りに注意してくれ」


 なにが起こるかわからない。万能を持つとは言え、それを使うのはちっぽけな人間。見落とし油断は当たり前。獣センサーでカバーしてください、だ。


「任せるがよい」


 その自信が不安を誘うが、今は翡翠(ひすい)を信じるしかない。銃を構えながら山を降りた。

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