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228 次なる厄介事

 このままビールを飲んで歳を重ねていくのもありかもな。


「──タカオサ。少しいいか?」


 なんて望みはアイリの連絡であっさりと打ち破られた。


「どうした?」


「またリビータンの船が現れた」


 リビータン? あ、カッパみたいな半魚人か! そう言えば、捕まえたままだったっけな。カイナーズホームの衝撃が強くて完全に忘れていたよ。


「また銅羅町どうらまちを襲いにか?」


「航路からしてその可能性は高いな。排除するか?」


「そうだな。せっかくだからシーカイナーズに任せてみるか。銅羅町にラフィーヌは停泊してたっけか?」


「いや、まだ月島に停泊している。銅羅町には駆逐艦が何隻かいるはずだ」


 相変わらず世界観をぶっ壊しにくるカイナーズだよ。


「レガロさんに連絡して対処してもらってくれ。おれも銅羅町にいってみるよ」


「了解。伝えておく──」


 アイリとの通信が切れ、深いため息を吐いた。


「どうした? 深いため息などして。幸せが逃げるぞ」


 完全に人の姿に慣れた翡翠ひすい。言うことも人になりやがって。獣の誇りはどこに捨ててきた?


「仕事だ」


 なんの利益になるかはわからんがな。


「人とは大変だな。土産は魚でよいぞ」


 まったく、人の姿をした駄犬め。愛想くらい見せろってんだ。


「ミルテ。出かける」


 畑仕事をしている妻に連絡を入れた。


「急用ですか?」


「ああ。半魚人が攻めてきた。しばらく銅羅町に滞在するかもしれん」


 また何日か時間を取られる案件だろうよ。


「わかりました。お気をつけていってらっしゃいませ」


「すまんな。家にいれなくて」


「ふふ。暇を持てあましている旦那様を見るより、働いている旦那様を見ているほうがわたしは好きですよ」


 最近はミルテも言うようになったものだ。


「おれも畑仕事をしているミルテが好きだよ」


 前世のおれなら言えないことも妻を三人も娶った今生なら愛を囁くことすら平気である。まあ、この通信はミルテにしか繋がってないけど。


 庭が見える部屋から出て玄関に向かうと、仔っこどもが駆けて来た。


「お前らの相手はしてられないよ。どこかで遊んでろ」


 絡みついて来る仔っこどもを引き剥がして玄関へと向かい、見送りに出て来た女中たちに任せて屋敷を出た。


「父さん、どこかに出かけるの?」


 今度はカナハたちが現れた。なにか、テニスのラケットを持って。


「ああ。また半魚人が出たらしい。ちょっと銅羅町にいってくるよ」


「じゃあ、わたしたちもいく」


「テニスするんじゃないのか?」


 やってきた感じはない。これからやりにいこうとしている感じである。


「うん。そうだったけど、父さんがいくならあとでも構わない」


 ルヴィーを見ると、しょうがないとばかりに肩を竦めてみせた。意外におねーさん?


「そうか。おれは光月こうづきでいくが、お前らはどうする?」


「フェヴィブでいく」


「宇宙経由でいく気か?」


 あれは宇宙機。百キロもない銅羅町までいくものじゃないだろう。


「いけない?」


「いや、いけなくはないが、TPO──って言ってもわからないか。時と場所と場合を考えて乗り物を選べ。フェヴィブじゃ過剰だ」


 大は小を兼ねるかもしれんが、フェヴィブは高出力高性能。宇宙で乗るようなものを大気圏内で使うもんじゃない。


「じゃあ、スカイラプターでいく」


「そうしろ。ルヴィーはどうする?」


「ん~。わたしのはラフィーヌに置いてきたからおじさんのに乗っていくよ」


 ルヴィーがおれを呼ぶときはおじさんだ。


 そう呼ばれてもなにも響かない。二十歳から見たら三十六歳なんておじさんだからな。しょうがないよ……。


「あいよ。カナハ。海側からはいくな。山側からいけよ。半魚人にバレるから」


 シーカイナーズの力を見るためのもの。バレて逃げられたら困るからな。


 湖に向かい、光月へと乗り込み発進すると、カナハも飛行場からスカイラプターを飛び立たせたのが視界に入った。


 光月の横へと来て、同じ速度で銅羅町へと向かった。


 時速にしたら四百キロなのであっと言う間に到着。以前、避難地としたところの飛行場へと着陸させた。


「ここも均して飛行場とするか」


 スカイラプターなら山梔子くちなし紅桜べにさくらに着艦できるが、フェヴィブは着艦できない。まあ、やろうと思えば着艦させられるが、一機だけ着艦できてもしかたがない。少なくても十機は離着陸できる場所を造っておいて損はないだろう。


 ……屋敷の近くだとうるさいからな……。


 ここにはイズキ(六輪走行車両ね)を停めてあるので、カナハ運転で港へと向かった。


 アイリから連絡は行っているようで、所々に立っているシーカイナーズの兵士が誘導棒を振って優先して通してくれた。


「凄く訓練されてるな」


 元の世界の軍隊より優秀なんじゃないか?


「昔は誰でも入れたみたいだけど、今は人気すぎて試験しないとはいれないから自然と優秀な人が集まるのよ」


 もうカイナーズがこの世界を牛耳ったほうが平和になるんじゃないか?


 港に来ると、ゲートが開いて中へと入れてくれた。


「顔パスか」


 少しは確かめたほうがいいのでは? 警備のためにもよ。


「まあ、おじさんはカイナーズに対抗できる戦力を持った人だからね。仲良くしたいんだよ」


 それはこちらのセリフだ。カイナーズとなんて戦いたくないわ。

未だに読んでくださりありがとうございます。

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