222 改良シュンパネ
宇宙に来た。
が、なにがあるわけでもない。眼下に青い星が見えるだけだ。
……ズルして来た宇宙はなんの感動もないな……。
「スペースカイナーズの基地はないんだな」
レーダーを広範囲に広げるが、反応を示す人工物ものはなし。平和(?)である。
「気軽に来れるところじゃないしね」
「まあ、手間も金もかかるしな」
国家予算でやるようなこと。カイナーズがどんなに凄くても人工衛星が精々だろうよ。
「なんとかなる?」
「手間と金、人手があれば可能だと思う」
「具体的には?」
「地上で宇宙ステーション──って言ってわかるか?」
「うん。カイナーズホームで売ってたの見たことあるわ」
誰に向けて売ってんだよ! 意味わからんなっ!
「それをもらえたら改造して宇宙に上げられる。あとは朝日型宇宙機で機材を運べばこちらで滞在できる宇宙ステーションにするよ」
ハルナ任せになるが、こちらの都合のよいものを造れるはずだ。
「ミラクモに連絡できる?」
「ああ。できるよ」
後部座席にあるモニターで朝日型宇宙機にいるミラクモ少将に繋いだ。
「ミラクモ。タカオサと話して」
雑だな、この妖精。もっと中継ぎしろよ。
「どうかなさいましたか?」
「いや、宇宙ステーションがカイナーズホームにあると聞いたんだが、それは本当か?」
「はい。あります」
本当にあるんだ。当たり前のように。
「それを改造して宇宙に上げるので話を通してくれるか」
「わ、わかりました。すぐに──」
「星を一周してみるか」
「フェヴィブってワープできるの?」
「バルキリアアクティーができるなら、その機能をフェヴィブに取り込むことはできるな。と言うか、シュンパネで月にはいけるのか?」
「シュンパネの瞬間移動距離は一万キロだったから無理ね」
あ、あれに限界距離とかあったんだ。今世紀最大のびっくりだよ。
「その口振りだと、宇宙にも出たみたいだな?」
あまり楽しいことにはなってない感じはする。
「ベーがやって、そのあとから禁止したわ」
うん、まあ、そうだろうな。どこともわからないところに現れても位置がわからなければ迷子でしかない。つーか、よくやろうとしたよな? 少し考えたらわかるだろうに。
「……いや、シュンパネを改造すれば可能か?」
ゲームのアイテムをそのまま使ってるから問題なのであって、万能さんに改造してもらえばいいんじゃなかろうか?
万能さん。シュンパネを改造してください。
フェヴィブから位置信号ポッドを打ち出し、衛星軌道上を回らせる。
「フミ、ヴィアー、ミラクモ、降りるぞ」
三機に連絡を入れて実験飛行場へと降下。大気圏突入も問題なく、実験飛行場へと着陸した。
フェヴィブから出ると、たくさんのドワーフっぽいヤツらがわらわらとよって来てなにか計器をフェヴィブに取り付け始めた。
「タカオサ様。バルキリアアクティーを用意しました」
案内されてついていくと、初期のバルキリアアクティーがあった。
「申し訳ありません。新型はなくて旧式しか用意できませんでした」
「まあ、徐々に改良していけばいいさ。技術の蓄積はあったほうがいいからな」
遥か未来、技術のミッシングリングと騒がれそうだが、その頃におれはいないのだから気にするな、だ。
初期のバルキリアアクティーを取り込み、変形機構を排除してフェヴィブに取り込んだ。
とは言え、アニメな技術。取り込むのに時間がかかる。
「少し時間がかかるから改良したシュンパネを試してみるか」
さすがに羽根の形はいろいろ不味いのでデザインを変えることにした。著作権は怖いからな。
「宇宙までいってくるよ」
「あ、わたしもいく」
「おもしろいことはないぞ?」
宇宙にいったなら宇宙遊泳しことぐらいあるだろうよ。
「いいの。どんなもの知りたいし」
おれの肩に乗る妖精。好奇心旺盛なこった。
「んじゃ、いくぞ」
鳥型にしたシュンパネを掲げ、位置信号ポッドへと瞬間移動をした。
数瞬の間で位置信号ポッドの横へと現れた。
「成功だ。これで宇宙ステーションができたら宇宙機を使わなくても来れるぞ」
まあ、宇宙服を着ないとダメと言う欠点はあるが、一瞬のうちに来れるのだから許容できる範囲だろうよ。
「戻るぞ」
で、地上へと瞬間移動した。
「あなたも非常識よね」
「そちらの非常識には負けるよ」
同等に見られるなど心外でしかないよ。
「宇宙ステーションができたら改良型シュンパネを渡すよ。材料はもらうがな」
「いつでもカイナーズホームに来て、欲しいだけ持ってってちょうだい。話は通しておくからさ」
そう言われたら求められるだけ作らんとならんな。ハァ~。
「少し休憩しようか。一服したい」
さすがに疲れた。特に精神がな……。




