214 カイナーズホーム
「宇宙へいける乗り物って作れる?」
まさか妖精からそんなセリフが出るとは思わなかったよ。
「それならそちらにあるだろう?」
バルキリアアクティーは宇宙で戦う兵器のはずだ。
「あるけど、ちょっと前に大きな戦いがあってね、ほとんど壊されちゃったのよ。今、急ピッチで作ってるんだけど、物が物だけに量産はできないの」
あれを量産できたら世界の軍事バランスが天元突破するよ。
「それに、あれって初期のやつなんでしょう?」
あのアニメシリーズは観てなかった。おれはスーパーロボット派。特にゲッターは好きだったな。もうストーリーとかはおぼろげだけどな。
ハルナへと繋いで尋ねた。
「そうね。最新のもあったけど、ほとんどは初期のやつだったわ」
あった、ってことは、プリッシュが最近あったってのはハルナが落ちて来た戦いか。
「そう、だったかも?」
曖昧に答えておく。ハルナのことは隠しておきたいからな。
「あれより凄いものを作って欲しいの。可能かしら?」
すぐには答えを出さず、考える振りをする。
ハルナ、どう思う?
「可能と言えば可能だと思うよ。ただ、それなりの時間はかかると思うかな? スカイラプターだって一機作るのに三日はかかってるもの」
万能さんにも限界はあるってことか。
「ただ、材料があれば短縮できるかもしれないわね」
言われてみればそうか。材料があれば魔力が抑えられてよかったとしか頭がいってなかったよ。
「あちらは、空母やら戦闘機を出せる転生者がいるから、材料を出させるといいかもよ」
なるほど。
「……作れはするが、もし、大量に欲しいと言うなら材料があれば助かるな。こちらは家内工業なんでな」
「家内工業ってなに?」
そこは知らないんだ。普通に和製英語使ってるから知ってるかと思ったよ。
「プリッシュ様。家族で作っていると言う意味です」
レガロさんのほうは知っているか。カイナってヤツの影響か?
「へ~。家族で作れるんだ。凄いのね」
「凄いのはそちらだろう。もう工業地帯級だ」
「まだまだいろんな言葉があるのね」
ファンタジーな世界で使うような言葉は限られてるしな。使える場所があるほうが驚きだよ。
「話を戻すと、材料をもらえれば作る期間は短くなるよ」
「材料とは具体的になにを必要としますか?」
え? なにを必要とするんだ?
「空母や戦闘機などでいいと思うよ。いろんな金属やプラスチックなんかを使ってるしね。あとは、万能さんがいいようにしてくれるわ」
万能さん、マジ優秀だな。
「貴金属、まあ、艦船や戦闘機をもらえればこちらで処理するよ」
レガロさんたちが視線を飛ばし合った。
「なら、タカオサをカイナーズホームに招待したら? お金だととんでもない量になりそうだし、カイナーズホームのブラック会員にすればいいんじゃない?」
噂のカイナーズホームか。
「……わかりました。カイナ様にはそう報告します」
この妖精はどれだけの決定権を持っているんだ? カイナーズを仕切るカイナやベーと言う者と同等じゃないか。
……いや、感じからしてベーと言う者より上だな……。
「タカオサ。このあと予定がないならカイナーズホームにいってみましょう」
「何人か連れていっても構わないか?」
「いいわよ。なら、わたしは先にいって話を通しておくわね──」
と、姿を消してしまった。
「……忙しい妖精だよ……」
「申し訳ありません。プリッシュ様は、思い立ったら即行動な方なので」
「構わないよ。それより、バルキリアアクティーを一機、譲ってもらえるかい? あれの性能を知らないとあれ以上の性能のものを作れないからな」
「確か、カイナーズホームに何機かあったと思いますので、大丈夫だと思います」
「それはよかった」
トップシークレットってわけじゃないんだな。
「連れていく者を呼ぶので時間をもらいたい」
「はい。わかりました」
「カヌカ。その間、レガロさんたちにスカイラプターでも見せてやってくれ。なんなら搭乗させても構わない。バルキリアアクティーとの性能の違いを確認してもらえ」
山梔子の艦長だが、訓練はさせている。一応、山梔子にも一機搭載してるからな。
「了解です」
「レガロさん。よろしいか?」
「ご厚意、ありがとうございます」
「気になさらず。アイリ。左軍として連れていく者を三人選んでくれ。おれはハハルを連れて来るんでよ」
カイナーズホームにいくとしたらハハルは欠かせない。実質、うちのナンバー2だからな。
「了解した」
甲板に上がり、シュンパネを使って三賀町へと転移した。