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 確かに銅鑼どうら町は壊滅していた。


 銅鑼どうら町の規模は三賀さんが町よりやや小さいが、険しい山が壁となり魔物の襲撃が少ないため、牧畜や織物が盛んになっている。


 おれも傭兵時代に何度か訪れてるが、人より羊が多いとしか印象にないな。


 羊毛や織物を各地に運ぶために港もあるが、三賀さんが町ほど発展はしてなく、四隻も停泊したらいっぱいって感じだろう。


 その港も酷い有様で、そこに港があったことすらわからないくらいに壊滅していた。


「……惨いもんだ……」


 村が滅びるなんて日常茶飯事だし、町が魔物に襲われることも多少はある。兵士時代や傭兵時代によく見たものだ。本来なら「またか」と漏らすていどだろう。


 だが、ここまで破壊されては「惨い」としか言いようがない。まさしく怪獣が暴れ回ったかのようである。


銅鑼どうら町は終わりだな」


 まあ、町のヤツと国が再建する意思を示せば二十年後くらいには復活するだろうが、なんの支援もなしには復活なんて無理な話だろうよ。


「カナハ。町の様子はどうだ?」


 先行させたカナハに通信を繋ぐ。


「酷いに尽きる。死体があちらこちらに残ってて腐敗が始まってるよ」


 役場も破壊されてるし、下手したら町長も死んでるかもな。


「一応、生存者がいないか見て回ってくれ。いたら港へ運べ。そろそろ山梔子くちなしが到着するから。おれは避難所にいってみる」


 人買いが三賀さんが町まで来るのだから、どこかに避難所を作っているはずだ。壊滅と言っても全滅とはならないからな。


「わかった」


 通信を切り、避難所を探す。


「あれか?」


 山側の牧草地にあばら小屋がたくさん建てられていた。


 いきなりいっては驚かせるので、三賀さんが町側に向かい、見えないところに着地。光月こうづきを車輌に変える。


「……そうだな、今後のために恩を売っておくか……」


 望月もちづきの名を売っておいて損はないし、銅鑼どうら町と繋ぎを結んでおくとしよう。


「ミルテ。ちょっといいか」


 屋敷にいるミルテに通信を繋ぐ。


「はい。大丈夫ですよ旦那様」


 突然にもかかわらず優しく受けてくれる妻に感謝です。


「悪いが女中を五人ほど銅鑼どうら町に寄越して欲しい。炊き出しを頼みたんだ」


「わかりました。すぐに用意します」


 シュンパネは一度いった場所でないと瞬間移動はできないが、万能さんから生まれたものを身に纏えばそれはおれも同然。しかも、万能さんにより改良されたので、おれの前にやって来れることも可能になったのだ。


「って、ミルテが来たのかよ!」


「あたしも旦那様の妻ですから」


 と言われたらなにも言えない。ただ、ミルテの意思を尊重するまでだ。


「わかった。頼むぞ」


「はい!」


 頼もしい妻たちに助けられるおれは世界一幸せな夫だぜ。


「着いたら説明する。光月こうづきに乗ってくれ」


 ミルテと女中四人を乗せて発車する。

 

 避難所まではすぐなので二分もしないで到着……と言っていいのか、道には憔悴し切った銅鑼どうら町の町民たちが座り込んでいた。


「……戦争を思い出すな……」


 国境付近は難民やらなんやらがいて、酷い有様だったっけ。二度と見たくないと思ったのに、また見る羽目になろうとはな……。


「酷いですね」


「そうだな。だが、珍しくない光景でもある」


 それがこの国の現実。避けることはできないのだ。


「はい。こうならないよう努力します」


 魔物に襲われなくても酷い生活をしていれば理解できる。死と生が背中合わせなのだから。


「ミルテたちには安全のためセフティースーツを纏わせる。並の魔物では傷はつけられないし、棒で殴られても痛くはない。力も出そうと思えば大の男でも捻じ伏せられる。なに一つ恐れる必要はない。それと、権力者の横暴になに一つ応えてやる必要もない。お前たちは望月もちづき家の者だ。お前たちの命は当主のおれが守る」


 優先されるべき命は妻と女中たち。それなくして当主の資格なしだ。


「はい、旦那様」


「「「「はい」」」」


 よろしい。では、望月もちづきの名を示そうではないか。

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