転生物の作者様に知ってもらいたい赤ちゃんの生態
昨今、異世界転生物は、商業アマ問わず溢れていると言っても過言ではないほどにたくさんの作品が書かれています。現代日本人の感性を持った主人公は、精神性が作者と読者に近いため、書き出し易く、感情移入し易いという点で、非常に優れたテンプレだと言えます。
しかし、様々な作品において、気になるのは転生直後のシーン。産まれた直後に母親の顔を見て困惑したり、会話を聞いて日本語ではないと驚いたり。はたして赤ちゃんに目は見えているのか? 耳は聞こえているのか?
多くの作者様や読者にとってはどうでも良いことだろうとは思いますし、異世界だから関係ない、創作にリアリティがあり過ぎる必要は無いと言われればそれまでです。
しかし、「赤ちゃんのリアルな生態を知っている」というだけでも作品の幅が広がるのではないかと考え、このエッセイを書かせていただきました。作品の参考にするか、ただの知識の一つとして受け取るか、どちらでも構いません。
以下に、赤ちゃんの生態について分かり易くまとめます。
①赤ちゃんの視力
産まれた直後の赤ちゃんの視力は0.01〜0.02で、周囲は非常にぼやけて見えます。目から30センチメートル以内のものでなければ殆ど見えていません。
これは、脳の処理能力の問題ではなく、瞳孔を覆っている角膜が薄く、遠視になってしまっているためです。また、この頃は色が認識できず、白と黒の判別しかできません。母親の髪の毛が黒ならばともかく、金髪や銀髪はほぼ白か灰色にしか見えないということです。
生後2〜4ヶ月頃になると、視力は徐々に発達し、0.04〜0.08程度になります。色もある程度識別できるようになり、動くものを目で追うようになります。
生後半年を越えると、視力は0.1程度まで発達し、ようやく人の顔を覚えられるようになります。また、人や物を立体的に見えるようになり、奥行きを把握できるようになります。
1歳になる頃には、視力は0.2程度になります。成人でも、このくらい視力があれば、ぼやけてはいても眼鏡無しで日常生活に支障は出ません。しかし、赤ちゃんの場合、物を両目でみる両眼視機能が発達途中であるため、障害物に気づかずぶつかったりします。
②赤ちゃんの聴力
赤ちゃんの聴力は、視力に比べると発達が速く、産まれた直後から
音を聴く機能は殆ど完成しています。そもそも母親の胎内にいる時から発達を始めているため、胎内でもぼんやり母親の声を聴いています。
しかし、耳の機能自体は完成していますが、耳で得た情報を処理する脳が発達していないため、音を音として認識できず、ただの刺激としか理解していません。当然、この時点では音の方向なども理解できていません。
生後3ヶ月ほどすると、音を理解できるようになり、音の聞こえた方向を確認したりするようになります。
生後5ヶ月くらいで、音と物事を関連付けて認識できるようになり、何がこの音を出したのかを覚えるようになります。足音を聞いて人が来たと理解するようになり、聴いたことのない音に敏感に反応します。
生後7ヶ月ほどで、声が人の口から発せられることに気づき、話している人間の口を観察するようになります。そして生後10ヶ月ほどで、ようやく人の真似をして言葉らしきものを発するようになります。
1歳になると簡単な単語を理解し、言葉を話すようになります。また、遊びに集中していると周囲の音に反応しなくなるなど、聴くという機能をシャットダウンし、聞く聞かないを使い分けられるようになります。
③赤ちゃんの首すわり
赤ちゃんは首の筋肉が弱く、自分の意思で首を動かすことが出来ません。生後3ヶ月ほどで首の筋肉が発達し、自分の向きたい方向に顔を向けるようになります。
④赤ちゃんの記憶力
実は、3歳未満の子どもは記憶力があまり無く、1〜2週間ほどしか憶えていられません。しかし、言葉を覚えるのは3歳以下であるため、全く記憶できないというわけでは無いようです。
記憶が短時間しか保持できない理由には、2つの説があります。
・『記憶の失敗』。記憶をうまく固着できない。
・『検索の失敗』。記憶の貯蔵が悪く、うまく思い出せない。
しかし、詳しいことは未だ分かっていません。
⑤赤ちゃんの睡眠時間
出生直後の赤ちゃんは、1日の3分の2の時間を眠って過ごします。しかし、これは16時間寝続けるということではありません。赤ちゃんの胃は小さく、満タンにしても3時間ほどで空っぽになり、空腹で目が覚めます。そのため、3時間ごとに起きて母乳を求めて泣きます。
このサイクルは当然夜中も続きますので、母乳を与える母親の負担は非常に大きいです。成人女性の適切な睡眠時間は6〜8時間ですが、ぐっすり眠らなければ疲れは取れず、3時間の睡眠を2回では身体が持ちません。昼間も赤ちゃんが寝ている時間を狙って、何度かお昼寝が必要です。
⑥赤ちゃんの歩行
赤ちゃんは1歳前後から歩くようになります。しかし、個人差は大きく、8ヶ月で歩く子もいれば、1歳2ヶ月でも立つのがやっとという子もいます。
以上で、赤ちゃんの基本的な生態についてのエッセイを終えます。これまでに書いたことは、どれも個人差が大きく、子どもによって時期はある程度変わりますので、これらの情報を鵜呑みにはできませんが、何かの参考になれば幸いです。